少し前に箱物のCDボックスについて書いた際、そのデメリットとして一定数の死蔵ディスク(1度も聴かないCD)の存在を挙げた。そして、ネットオークションではその箱物を敢えてバラして単品で売っているケースもあり、私自身はそういう売り方をする勇気はないけれど、そうやって売られているCDを寧ろ有難く買わせて頂いているというような事を併せて書いた記憶がある。

たとえば、今年に這入って発売されたバックハウスの箱物は38枚組で12,000円前後だが、その録音の大半は個人的に余り興味のないピアノ・ソナタを中心としたベートーヴェンの音源である。新規リマスタリングの宣伝文句に心を動かされはしたものの、丸ごと買えば8割方が死蔵ディスクになることは目に見えている。

そこで、定番とされるモーツァルトのピアノ協奏曲第27番とブラームスの同第2番(どちらもカール・ベームとの共演盤)の2枚だけをまずはバラ売りで買ってみた(1枚690円)。

同様にアンドレ・プレヴィンの箱物も55枚組16,000円前後だが、そのうち私が聴きたかったのはベートーヴェンの「田園」と、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」とプロコフィエフの1番「古典」をカップリングした2枚のみ(こちらは以前タワーレコードから出たCDを手放してしまい後悔していた)。これも1枚690円で手に入った。

このようにバラ売りの利点はピンポイントで自分の聴きたい音源だけを選べることだが、同時に自分が持っている箱物のCDの中身を、好みの音源に組み替える際にもたいへん便利である。

たとえば下の画像に示した小澤征爾の11枚組のボックスを私は以前から好んで聴いているが(因みに、この写真の小澤の顔を家人はいたく気に入っており、見るとホッとするらしい)、このうち愛聴盤はサイトウ・キネンとの幻想(ベルリオーズ)、英語版の「系図」を含む武満作品集、ボストン響とのマーラー2番、バッハのトランスクリプション(管弦楽版)集、それに時々聴くウィーンフィルとのアルプス交響曲の5枚だけである。

11枚中5枚が繰り返し聴くCDなら箱物としては御の字だが、残り6枚(ワーグナー、バルトーク、プーランクなど)は殆ど聴かないのでボックスに入れておく意味が無い。

そこで、分売方式のオークションを利用して購入したのが以下の4点である。いずれもボストン響との録音で、マーラーが2枚(1番と4番)とチャイコフスキー(5番)、そしてツィメルマンと共演したラフマニノフ。

こういう具合に自分の気に入りの演奏でボックスを補強するのに、分売は大いに重宝している。

もっとも、「だから何?」と言われればそれまでで「くだらないこだわりです」と言うほかない。

〝こだわり〟というのはしかし、あまりいい言葉ではないというのが最近の私の実感である。