ラインといってもLINEではなく、シューマンの交響曲第3番のほうである。

私はこの曲の第1楽章の出のところが好きで、この冒頭部分だけは時々無性に聴きたくなる。確かN響アワーのオープニングテーマとしても一時期使われていたはずで、あのスカッとした出だしを聴くと目の前の霧がサッと晴れてゆくような爽快感がある。

録音は聊か古くなってしまったがワルターも1941年にニューヨークフィルと録音している(晩年コロンビア響と是非再録音してもらいたかった)。最近の演奏でいうと、マイケル・ティルソン・トーマスがアメリカのオーケストラ(サンフランシスコ響)と録れたものが印象に残っている。堂々とした歩みの中にも風が吹き抜けてゆくような軽やかさがあって、シューマンの溢れ出る音符を両掌で受け止めてくれるような大らかさが実に心地よかった。

惜しむらくはライヴ録音のため曲の終わりに指笛(?)入りの盛大な拍手が入っていること。拍手のことを書き出すと長くなってしまうが、ライヴ録音で拍手までおさめるのは本当にやめてもらいたい。

拍手のことは又別の機会に譲るとして、同じ曲でも最近になって聴いた現代の売れっ子指揮者の一人ヤニック・ネゼ=セガンのラインはティルソン・トーマスのそれとはずいぶん肌合いの異なるシャープなものだった。どちらかとえいば、以前聴いてあまり馴染めなかったパーヴォ・ヤルヴィのラインに近い。

そういえばセガンはメンデルスゾーンの交響曲全集でもシューマン同様のアプローチで嘗てない鮮烈なメンデルスゾーン像を打ち立てていたし、チョ・ソンジンとのモーツァルトのピアノ協奏曲(第20番K.466)のオーケストラパートも実に雄弁に鳴らしていた(私はあまり好きではなかった)。

そんなこんなでライン漁りをしているとき、或る高尚なサイトでこの程指揮活動からの引退を表明したベルナルト・ハイティンクがオランダのコンセルトヘボウ管弦楽団と1980年代に録音したディスクがオススメ盤として取り上げられたので聴いてみた。

冒頭部分が鳴り始めた瞬間「あ~これこれ」と言いたくなるような、曲のイメージにぴったりの雰囲気。やはり自分はティルソン・トーマスやハイティンク系のラインが好きなのだと確信した。