九州北部は日曜日の雨から一気に秋を通り越して初冬モード
本日もさっぶい一日でありました
そんな寒風を衝いて最近ウン万円を掛けてメンテ修理を施した
愛車FAIZを駆って観に行きましたよ
「ゴジラ-1.0」
先ず感想を書かせていただこう
めっちゃええもん
見せてもろた
神木隆之介さんアンタは偉い
「シン・ゴジラ」は長谷川博己氏演ずる矢口蘭堂がストーリーの中心にいるものの、彼の役割はあくまでも狂言回しであって、物語としては対ゴジラの群像劇でありました
しかし、「ゴジラ-1.0」は神木隆之介さんの演ずる特攻崩れの敷島浩一を主人公に据え、自分自身に絶望し、生きる価値を見失っていた彼が、もう一度「生きて抗う」迄の物語です
いや~上手い役者の演技って凄い
彼の演技に魅せられてゴジラが出て来ないシーンが長くても全くもって気にならない
本編(ドラマ部分)がきちんと描かれていてこその特撮だと
今回つくづく思い知らされました
音も凄かった
ドルビーシアターで観る事が推奨されているようですね
残念ながら私はTHXシアターでの鑑賞ではありましたが
それでも十分に震え上がりましたよ
音楽の使いどころも良かったなぁ
久し振りに伊福部氏のメロディーで胸が熱くなりました
また、映画作品ですからなんといっても肝心なのは映像です
日本も遂に「特撮」から「VFX」と呼べるレベルに進化したんだなぁと見終わった後感慨深く感じました
本編とVFXがシームレスなんですよ
特に陸での戦いがメインの「シン・ゴジラ」に対し「ゴジラ-1.0」は海上でのシーンが凄く多いにもかかわらず、波や飛沫が自然に見える
少なくとも私には違和感や、気になる所が全くなかった
言われなきゃ戦艦やら戦闘機やらがフルCGなんて映像からは
感じなかったもんね~
おかげで余計な事を考えず「ドラマ」に集中出来ました
(クゥオラァッカドカワくそしょうもない人物CGで
ガメラリバース台無しにした罪は重いぞっ
)
そういえば、シン・ゴジラからこっちゴジラスーツは作られていないんですよね…
だからこそできる体型であり、動きでもあるんだよなぁ
ニンゲンと言う形の制約を受けないって凄い事だよねぇ
チャックも要らないしさ
ゴジラがなんであるのかなんて野暮な考証は全く出て来ません
ゴジラは「 呉爾羅 」としても元々居た、異常に回復力と復元力が発達した恐竜に酷似した生き物が核の洗礼を受けて変異したと言う描写があるのみ
実に潔い
そんな蘊蓄よりも大切で肝心なのは、終戦を命からがら生き延びた人々に再び理不尽に圧し掛かる、ゴジラと言う災厄に「生きて抗う」物語なのですから
この「ゴジラ-1.0」」否定的な評価が極端に少なく
評判が良いのも興行成績が良いのも納得でした
観て損はない内容でしたよ
お勧めです
さて
ここまでは当たり障りのない内容
ここから先は傍若無人のネタバレ大会だよ
まだ見て居ない人は見てから読んで下さいね
もう
いいかな
山崎監督は兵器ヲタクですね
「賠償艦」なんて知ってる人居るんかいな
敗戦後、戦時賠償として連合国側に引き渡された日本帝国海軍が所有していた戦後残存艦艇の事なんですよ
最初にゴジラと一騎打ちを行って轟沈した
重巡洋艦「高雄」はイギリスに
わだつみ作戦でケーブルを引っ張った
駆逐艦「雪風」は中華民国に
駆逐艦「響」はソビエトに
囮艦として放射熱線の直撃を食らって爆散した
「欅(ケヤキ)」はアメリカ「夕風」はイギリスに
それぞれ戦後の賠償の一部として引き渡され
武装解除されたのちに(だから、返還時に再武装された高尾以外の艦艇は、機銃すらもついていない状態の丸腰でゴジラに挑んだのです)史実では標的艦などとして役目を終えた艦艇達なのです(結果としてゴジラを生み出す事になるクロスロード作戦でも一瞬ではありますが賠償艦が威力判定の為に爆心地に置かれていて蒸発する描写があったように思います)
しか~し「ゴジラ-1.0」では、
これ等の艦艇は、軍隊を持たない敗戦国日本国国民を
守らんがためゴジラ撃滅の使命を帯びて日本に
帰って来たのです
中でもわだつみ作戦指揮旗艦となった「雪風」なんてさ、大戦中何度も海戦に参加しているのに、さしたる被害も受けなかった事から奇跡の駆逐艦(劇中では「幸運艦」)と呼ばれ、小説やアニメの主役戦闘機にも命名されてますから、そう考えると幸運に頼らざるを得ないわだつみ作戦の旗艦としてこれ以上考えられないくらい、うってつけの艦艇である事が分かります
おまけに敷島に用意された戦闘機が、零式ではなく
幻の本土防衛決戦兵器局地戦闘機「震電」
今の目で見ても未来的に見える前翼型機
その震電がゴジラ相手に戦闘機動を行うんですよ
ハイスペックなVFXで、青空を飛翔する震電を観れただけでも大感動です
映画を観て帰ってすぐに、興奮冷め遣らぬままAmazonで
即ポチって小説版を電子書籍で読みました
まず冒頭の敷島に対する臆病な卑怯者と言う評価は
少し違うなぁと感じました
敷島はお母さんに「必ず生きて帰ってください」との手紙をもらっていたから、大戸島に進路を取ったんですね
また、神木さんの迫真の演技でゴジラが怖くて20ミリ機銃が
撃てない唯の臆病者のように見えますが、それだけではなく、
ゴジラを目前にして20ミリなんてぶっ放したら唯では済まないだろうと言う畏れが有った事も分かります
「生き恥をさらす」などと言う言葉がまだ実感を持って使われていた時代、戦争後遺症なんて言葉もPTSDなんて症状も知られていなかった時代に特攻崩れと冷たい目で見られる敷島の苦しみ
そんな敷島の心の支えになる、シン仮面ライダーの時とは打って変わって表情豊かな浜辺美波さん演じる典子が涙ながらに発する「死んではだめです!」と言う真摯な叫びは心に刺さりました
(まさか「シンではダメです」じゃないよね)
そんな典子が、国会議事堂を爆散させたゴジラの放射熱線の爆風で事も有ろうに自分を庇って吹き飛び、また自分一人だけが生き残ってしまった絶望と、細やかな希望を摘み取ったゴジラに対する憤怒で霧島が黒い雨を浴びながら慟哭するシーンでは涙が
佐々木蔵之介さん演じる秋津艇長の「誰かが貧乏くじ引かにゃならんのだ」って台詞も好きだなぁ
また主役の大怪獣ゴジラです
「シン・ゴジラ」で超変化球のゴジラを見せた後に何を持ってくるのかなぁと思いましたが、オーソドックスなゴジラでした
最初はマグロを喰いそうな前傾姿勢の呉爾羅、
被爆し巨大化した後は背筋を伸ばしてのっしのっしと歩くゴジラ
シン・ゴジラは放射熱線が収束してビームと化したのに
今作ゴジラはまるでトリガー解除をするかのように背びれが
ガシャンガシャンと突出して青く輝いてゆき、再びその背びれが
一斉に収納されるのを機に口から放射熱線が放出されたのちは
核爆弾の炸裂を思わせる大爆発
衝撃波と黒い雨も原爆を彷彿とさせるものでありました
また今回の最終決戦は火力による対決では無かった
敗戦国として武装解除された日本に超兵器などあろう筈も有りませんからね
ゴジラを水圧で圧殺する、それがダメならお次は急浮上による急減圧で膨張破裂を狙うなんてよくぞ考え付いたものです
吉岡秀隆さん演ずる野田博士が作戦決行前夜に「今度の戦いは死ぬための戦いじゃない。未来を生きるための戦いなんです」と作戦説明の最後に付け加える所グッときました
この後の自宅で霧島と明子が話すシーンで突然明子が大泣きする理由が良く分からなかったのですが、小説によるといつもは「お父ちゃんじゃない」と否定していたのに、この日に限って突然敷島が「お父ちゃんで良いよ」と許した事で「お母ちゃんと同じようにお父ちゃんも遠くに行ってもう帰ってこないかもしれない」と幼いながらにも察して泣き出しちゃってたんですね
翌朝、ゴジラ襲来が想定以上に早く、再上陸を許ししてしまいます
しかし、震電の攻撃により、相模湾沖合の作戦海域に誘導する事に成功し、わだつみ作戦が発動されます
深海に沈める事には成功しますが、急浮上の途中でフロート(浮袋)を食い破られて「わだつみ作戦」は失敗
その後駆け付けた応援艦艇の力を借りてゴジラを水上に無理やり引き上げる事には成功します
ゴジラは急減圧によって体表が崩壊していましたが
必殺放射熱線で反撃態勢に入ってしまいます
「雪風」「響」応援艦艇群がゴジラの放射熱線射線上に囚われた
絶望の無音の時間(素晴らしい音響演出でした
)
それを劈く様に響き渡るエンジンの爆音
敷島の駆る震電来る!
今まさに熱戦を吐かんと大きく開かれたゴジラの口めがけて
突進する演出は心が震えました
震電は見事ゴジラの口腔内で大爆発し頭部を粉砕します
ここで敷島が無事に脱出しているのですが、
出撃時に震電を決戦兵器とすべく30ミリ機関砲を一門降ろしたスペースに大型爆弾を搭載するという改修を行った整備員の橘から
突っ込む直前に引くように指示された赤いレバー
浅はかな私は「ハハァ~ンこいつを引くと緊急脱出装置が強制的に作動するんだな」なんて考えていましたが、それじゃぁ意味が無いんですね
橘整備員が赤いレバーとは別の緊急脱出装置の起動レバーの説明をするシーンを観てようやく、敷島がまた「生き残ってしまった」のではダメで、「生きて抗う」為に、自らの手で、自らの意思で脱出装置を作動させ生き残る事に意味があったんだと気づかされました
また、その装置を敷島の為に震電に組み込んだ事で、橘が遺恨を乗り越える事が出来た事、彼の戦争も終わりを告げた事も分かります
そして、作戦を終え帰港した敷島に典子生存の吉報が届きます
病院に駆けつけると痛々しく包帯でぐるぐる巻きにはなっているものの、確かに生きて居る典子がベッドの上に座っている姿が
(小説版では
「ドアを開けると、ベッドの上には希望がちょこんと座っていた」
なんて素敵な表現なのでしょう
)
「浩さんの戦争は終わりましたか?」
「うん…うん…」
ひしと抱き合う感動的なシーンで大団円
かと思いきや
典子の首筋に何やら蠢く黒い痣が
更にわだつみ作戦海域深くゴジラの残骸が再生を始めると言う、何とも不穏な場面で映画本編は幕を閉じます
今度のゴジラは「うつる(感染する)」んです
シン・ゴジラはあくまでもゴジラと言う個体が分裂拡散するゴジラハザードでしたが今度のゴジラはゴジラパンデミック
執拗に繰り返される「飛び散った肉片」と言う言葉
あの爆風の中を瓦礫と共に吹き飛ばされて生き残る事は
奇跡を通り越して不可能でしょう
にも拘らず生存していたのは、典子がゴジラ細胞に侵食され、その超再生能力で生き延びたのだとしたら…
いずれビオランテのようにゴジラとのハイブリット化を遂げて変貌してしまうのか、それとも折り合いがついて人の形を止めるにしても敷島と子供を作る事が出来るのか、出来たとして生まれてくる子供に影響は出ないのか…
いずれにせよ典子の行く末は決して明るいものでは無さそうです
これは敷島にも言える事で、何度となくゴジラに至近距離で接触していますから、被爆の障害や典子同様にゴジラに感染している恐れは多々あります
「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」並みに
一見ハッピーエンドのようで実は
何にも解決していない物語なんですよね~
それでもね
観終わった後
「刺し違えてでも」では無くて
「生きて抗え」という言葉の意味が
グッと迫ってくる良い内容の映画だったと思います
あ~あゴジラは良いよな~
まぁ~た一本名作が世に送り出されたじゃん
これでゴジラと言うコンテンツがまだまだ金になる
ひいては次回作にもつながる
実に良い流れが出来上がってんじゃん
それに引き換えガメラのなんと不運であることよ
誰かいい監督が映画作ってくれ~
いやぁ~語った語った
もしも、長い長い記事に
ここまでお付き合い下さった方が
いらっしゃったとしたら
あなたの優しさに
心から
感謝致します