1993年1月。

民主党のクリントンが大統領に就任。

それまで、レーガン、ブッシュと共和党の大統領が12年続いたから、このクリントンの就任はアメリカの民主党を支持する若者達にとってはとても興奮すべきことだった。

私の高校時代の中西部に住む友人がワシントンDCに就任式を見に来ることになった。でも、そんなときのホテル代はすごく高いし、とにかく部屋を取るのは大変だった。だから、友人と彼の友達(女性だがガールフレンドではない)は私の狭い寮の部屋に寝袋を持ってくるからどうしても泊めて欲しいと連絡があった。


彼らが来るのが決まったのが、かなりぎりぎりだったので、週末はすでにRくんに会う予定になっていた。私、Rくん、友人と彼の友達の女性の4人で友人の車で何回か出かけた。友人はすぐに人をひやかす人なので、「Rくん、よさそうじゃないか」などと言った。私は「そんなんじゃないのよ。単なる友達。」と何度も強調した。が、友人がそういうことをあまりにも言うのでちょっと意識し始めてしまった。でも、Rくんとは普通に仲良くお友達していくって決めたんだから、と自分に言い聞かせていた。そう、あのキスは過去の事よ、今はあれは忘れてやっていくのだから。そう思いながら、自分で結構無理やりそう思おうと努力している自分に気が付いた。


夕食に4人で行くことになって、レストランの近くについたのだが、駐車の関係で友人と彼の友達が車から離れて2人で外に見に行くから待っていてくれといわれた。Rくんと私だけが後部の席に2人だけになった。

と、その瞬間、ロマンチックなムードがどこからともなく流れてきて、2人は吸い寄せられた。

そして甘いキス。どちらがしたというわけではなく、2人ともそうしたかったから、そしてそれが自然な成り行きだったから、そうなった気がした。甘いキスの後、2人見つめあった。


ガチャ、とドアが開いて、2人が戻ってきた。

私とRくんは笑顔を浮かべた。

私達の人生の新たなチャプターが幕を切った。