語るほどでもない自分の ”プロジェクトX”(4)

 

 

   BGM

 

 

 葬式の前日に、葬儀費用を現金で支払うことになっていた。郵便局で定額貯金を解約した。詐欺が横行する時世なので、葬式はいつだとか、振り込みではだめなのかとか根ほり葉ほり若い職員から聞かれた。少々ムカついたが、金を受け取らなければ葬式代が払えないじっと我慢した。

 

 葬式の当日。やっと今日で葬式が終わる、あと一息だと重い体と頭を励まし、葬式に臨んだ。見送ったのは自分と妻、自分たちの長女と長男、長女の子供2人。両親が気にかけていた独り者の弟を、無事旅立たせることができた。老齢の域にある夫婦にとっては精神的、肉体的にきつい日々だった。

 

 自分は次男であり、長男がいるのだが、若いころから外国に住みついたため、煩わしいことはいつも引き受けざるを得ない立場だった。三男は結婚して子供も3人いたが、親よりずっと前に病死した。

 あるとき妻がつぶやいた。「何でいつも私たちだけがこんな目に遭わなければならないの」。言葉がなかった。

 

 葬式が終われば四十九日の法要と納骨が控えている。

 位牌がなければ四十九日の法要ができない急いで位牌を作らなければならない。のんびりしている暇はない。

 

 葬式の翌日には夫婦で仏壇屋へ出向き、位牌作製の依頼をした。注文書をつくるのに1時間もかかった。両親のと同じ作りのものにしたが、6万500円也。10年前の母親のときより3万円近く値上がりしていた。

 

 家へ戻ってからも、霊園の管理事務所に電話をし、四十九日・納骨法要をしてもらう僧侶の依頼と日程調整、墓誌へ戒名を刻字する依頼など、後始末の作業は尽きることがない。

 

 このあとも権利書や車検証、預貯金の通帳など相続登記に必要なものを探すべく何回かの家に行ったが、ゴミ屋敷の前に歯が立たなかった。時間だけが無駄に過ぎた。

 

 小さな手提げ金庫をつ見つけたが、鍵らしきものなどどこにも見当たらない。鍵開け屋持ち込んだ。正攻法では開けられなかった。破壊してもらった。1個につき6000円も払った。

 きっと権利書や通帳など大事なものが出てくると大いに期待した。ものの見事に裏切られた。愕然として力が抜ける思いだった。

 

 その後時間を見つけてはネットを調べまくった。権利書がなくても相続登記ができるらしいこと、車検証がなくても廃車ができるらしいこと、預貯金の有無を銀行に調査ができるらしいこと(ほんまかいなと思った)などが分かってきた。トンネルの闇の先に出口らしき灯りが見えてきた。

 

 そこまでの調べがついたので、両親の相続手続きを依頼した司法書士事務所に相談に行った。その結果、預貯金の調査もしてもらえるし、権利書がなくても相続登記をできることがわかった。安堵した。

 

(続く)