電車に揺られていると、自然と眠くなっていくのは、昔から変わらないなと思う。
嘘のように全ての初めてに興奮していた子供の頃、電車の外の景色はコロコロとその色を変えるから、接着剤で貼り付けられたのかと思うほどに、窓から離れなかったことを覚えている。
いつしか外を見るのが疲れると、急に眠気が来るのだ。
気づいたら、駅のホームで父親が自分を担いでいる。
だから、昔美しいと思ったその景色、どこでそれを見たのか覚えていない。
でもそんな休日がたまらなく好きだった。
新しい場所はいつでも新しい発見があって、新しい道はいつも新しい高揚感があった。
両親はよく、旅行に連れていってくれた。
両親が外に出掛けることが好きだったことも大きいのだろうが、それにしてもたくさんの場所に行った。
そしてそのワクワクをずっと忘れることなく胸に秘めているのだ。
だから今、こうして電車に乗る瞬間も自然と高揚するのだと思う。
「......まもなく、----、----、です。お出口は左側です。お忘れ物はございませんでしょうか。この先もどうぞ、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
また暖かい日の下、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
他の乗客は揃って、荷物を整理し終わって、出口に向かって並んでいる。
よく寝過ごさなかったと、自分を褒めておくべきだろう。
『改札出たところで待ってるね!』
『忘れ物だけしないでよー。ゆーきは財布とか置いて行っちゃいそうだし』
心配性な彼女が2件ほど連絡を入れてくれていた。
彼女を待たせてしまうとは、男としては1本前の電車でくるべきだったか。
まあ、そういうことは気にしないタイプだと思うし、ちょっとだけ甘くなることで許してもらおう。
『ごめんね、待たせちゃって』
『忘れものしてでも、早く会いに行く』
『それじゃ意味ないじゃん!』
『ゆっくりきて、おねがい』
『俺が早く会いたいから、急ぎます』
『はいはい、分かったよーだ』
『ゆっくり待ってるー』
流石にこの求愛はキモすぎたかもしれない。
でも会いたいんだから、しょうがないし、会ってくれることだけで、幸せになっちゃうんだから、どうしようもない。
よく使う駅のはずなのに、今日はこのホームが異様に長く感じた。