節分もとっくに終わって、桜花咲く季節ですが、「鬼」をテーマにまとめてみました。
必ずしも「鬼」が祀られているわけではなく、「鬼」に関係する関東地方の主な神社仏閣です。
稲荷鬼王神社(東京都新宿区): 『福は内、鬼は内』
鬼鎮神社(埼玉県比企郡嵐山町): 『福は内、鬼は内、悪魔は外』
鬼子母神堂(東京都豊島区): 『福は内』のみ
稲荷鬼王神社(いなりきおう)
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創 建 : 1653年
御祭神 : 宇賀能御魂命、月夜見命、大物主命、天手力男命
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住所: 東京都新宿区歌舞伎町2-17-5
交通: 東新宿駅から徒歩2分
公式ホームページ: なし
節分 『福は内、鬼は内』
何やら凄い神社名ですよね。鬼の王ですよ、鬼の王!Demons' king
まるで全国の鬼神社の総本宮みたいですが、鬼を祀った神社ではないんです。
鬼王とは、紀州熊野より勧請した「鬼王権現」が由来ですが、鬼王権現は熊野にすら現存しておらず、今ではこちらの神社だけになってしまいました。
鬼王権現とは、月夜見命、大物主命、天手力男命の三神。当社のご祭神ですね。
また、「鬼王」と言う特異な名の神社を勧請するにあたって、地元が受け入れたのは、平将門公の幼名が「鬼王丸」であったため、所縁があったのではとも言われているそうです。
それにしても、ご祭神がすごいメンバーですね。夜、謎、蛇、底知れぬ強大なパワーの持ち主。
全国の鬼たちを統制するパワーが十分ありそうです。
新宿の夜は任せておけですね。
神社入口
歌舞伎町の真っただ中。下手をすると、ビルに埋もれてしまいそうな場所にあります。
拝殿
きれいな拝殿です。稲荷の名があり、ウカノミタマ様がお祀りされていますが、キツネの雰囲気は全くない神社ですね。どちらかと言うと、メインは月夜見様、大物主様でしょうか。
御本殿
こちらも背後のビルに負けることなく、きれいです。
【ご由緒】
古来より大久保村の聖地とされていたこの地に、1653年稲荷神社が建立。1752年、紀州熊野より鬼王権現(月夜見命・大物主命・天手力男命)を勧請。1831年稲荷神社と合祀し、稲荷鬼王神社となる。
湿疹・腫物をはじめ諸病一切に、まず豆腐を献納し、豆腐を断ち、そして「撫で守り」で祈りつつ患部をさすると必ず平癒するとの言い伝えがあります。
(神社ご由緒書より)
表面にはあまり出ていませんが、底知れぬパワーを秘めている印象です。
地下深くにあるパワーを取り出せないのではなく、必要な時のみ放出されているようです。
明確な意志をお持ちなのか、力加減をコントロールされているご様子。
よって平常時はするするっと流している感じですが、いったん真剣に祈願すると、想いは通じそうです。
真剣であれば真剣であるほど、深く深く応じて頂けそう。
個人の願いもそうですが、地域としてご鎮守的な役割も大きいです。
いざという時、お力を発揮して頂けそうです。
そして夜間。夜の新宿を深いところから守護するパワーは頼もしいですね。
天水琴
拝殿のすぐ右側の大きな瓶にたまった雨水が地中にしみわたり、水琴窟に注がれ、風流な音色を奏でるようです。写真左下の竹筒に耳を近づけると、音色が響き渡ってきます。
三島神社
扁額は恵比須神社とあります。ご祭神が事代主命、つまり恵比須様。
曇天及び個人的に体調不良だったので写真が今一つですが、クリアな気で満ちています。
写真左手にある手水舎のような水場も天水琴。下に敷いてある玉石にひしゃくで水をかけてしばらくすると、竹筒から何とも心地よい音色が
浅間神社
御本殿の背後、後方の入り口付近にあります。
古来から当地にあった浅間神社を合祀。富士塚の石は全て全国からの銘石を取り寄せて建立されたそうです。
水盤台石
鬼さんがたった一人で水鉢を担いでいます。
「もともとは加賀美某の庭内に置かれていたが、毎夜水浴の音がするとこの水鉢を怪しみ、名刀鬼切丸で鬼を斬りつけた。(肩に傷跡?)しかしその後、家人が病を患うなど不幸が続いたため恐れをなし、斬りつけた鬼切丸と共に当社へ寄進となったと」言う伝説です。
上記のような経緯からか、斬りつけられた鬼さんは少しすねているように見えますね(笑)
由緒書によると、相撲の力士が四股を踏んで邪気を追い払っている姿とありますが、頭に角が生えているし、やっぱりどう見ても鬼ですよね。
個人的には、このチャーミングな鬼よりも、水鉢の模様の方がだんぜん気になります。
蛇がたくさんうねっているように見えるのですが、気のせいでしょうか
大物主命がご祭神なので、そう見えてしまうのかもしれませんね。
もしや毎夜聞こえた水浴の音とは、蛇たちが羽目を外してはしゃぎすぎたのでしょうか?
そうなると鬼は無罪どころか、えん罪ですね 邪(蛇)から守っていただけかも。
・・・いじけちゃいますね
拝殿前の狛犬親子
左側の狛犬の子どもが何とも愛らしい
ひいおじいちゃんがひ孫をあやしているようにしか見えない~
入口の狛犬
ちょっと変わった狛犬。体つきはガッシリしていますが、小顔で童顔?(失礼!)
顔と体が一致しないような印象です。
腕には羽が生えかけているのでしょうか。
でもまあ、このがっしり体なら、歌舞伎町の夜だってしっかり守れそうです。
どこかで見たような~と考えていたら、思い出しました!
築地本願寺にあるグリフィン像(下記).。いや、ちょっと違うかな・・・
それにしても当社をはじめ、花園神社、熊野神社など新宿界隈の神社は、思いっきり都心なのに強いパワーを持ち続けている神社が多いですね。
東京の他地域とはちょっと異なる雰囲気ですね。限られた空間ですが、たくましさを感じます。
時代の変遷をくぐり抜け、現代の環境にも負けず、地域や人々が疲弊しないよう強い活力を見えない電線のように送り続けているよう。
また皆中稲荷神社など、サバイバル的に強い神社も多いようです。
これだけ繁栄した雑踏の中にあっても決して廃れない、力強さはどこから来るんでしょうか。
鬼鎮神社(きぢん)
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創 建 : 1182年
御祭神 : 衝立船戸神、八街比古命、八街比売命
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住所: 埼玉県比企郡嵐山町川島1898番
交通: 東武東上線 武蔵嵐山駅から徒歩15分
公式ホームページ: なし
節分 『福は内、鬼は内、悪魔外』
こちらは「鬼」をお祀りしている珍しい神社です。
鬼をお祀りしているのは、全国でも青森県弘前市、大分県大分市、福岡県添田市の鬼神社と当社の4社のみ。
神社入口
広々として明るい境内。
横に幅広いタイプの境内で、どなたでも受け入れて下さる寛容さを感じます。
戦前は奉納された金棒で境内が埋まっていたとのお話ですが、そこはかとな~く、そんな余韻が感じられる境内です。
社殿
拝殿屋根の鬼さんペア
金棒
これですよ、これ!鬼と言えば、欠かせないのが金棒。
拝殿横の傘立てのようなところにありました。いろんな種類があるんですね。
拝殿屋根を支える柱やご本殿横にも金棒が。結構ごっついです。
宮司さんいわく、戦前は奉納された金棒で境内が埋め尽くされていましたが、戦時中に鉄材としてほとんど没収されてしまったとか。こんなに魂のこもった金棒で作られた武器なら相当強そう。
社殿内
社殿内の上部には古い絵や扁額がぐるりと飾られています。
宮司さんのご厚意で撮影をさせて頂きました。
宮司さんは鬼とは程遠く、とても気さくないい方でいろいろ説明頂きました。
節分祭は、遠方からも参拝客がつめかけ大盛況だったそうです。
皇族の方が書いた文字の上に金箔を載せた扁額だそうです。
鬼の神像でしょうか。祭壇の中央下に配置されています。
【ご由緒】
埼玉県比企郡嵐山町に、畠山重忠公が御造営された菅谷館(菅谷城)があった。当神社は、その鬼門除けの守護神として、鎌倉街道に沿って建立され、節分祭、勝負の神で有名である。
約八百年前、安徳天皇の御代、寿永元年に創建され、御祭神は、衝立船戸神(つきだつふなどの)、八街比古命(やちまたひこのみこと)、八街比売命(やちまたひめのみこと)で、主祭神の衝立船戸神は、伊邪那岐命が黄泉の国を訪れた後、筑紫日向の橘小門の阿波岐原で、禊祓いをして持っていた杖を投げ出した時、杖より生まれた神である。
それが幅広く解釈されて、悪魔払いの神、家内安全商売繁昌の神、受験の神と、人生の指針を示し、強い力を授ける神として崇められている。
(神社境内の説明板より抜粋)
こちらの神社、何が凄いかと言うと、宮司さんいわく、御本殿の中にご神体があるのはわかっているが、ご神体が何なのか知らないと―
えっ、宮司さんですら、ご神体を見たことがない えっ。
きっと開けてはいけない扉なんですね 何が入っているんでしょうか
まさか、鬼の・・・あれこれ想像しちゃいます。
見たい、怖い、見たい、怖い、見たい・・・・・・永遠にループ
でもこんな謎も現代には必要かもしれませんね。
謎は謎として、それもまた宝物
鬼瓦
拝殿を見上げると、迫力の鬼
ところがもう数歩、拝殿から遠のいて屋根を見上げると・・・
2階建てが凄まじい こんなダブルコーンのアイスがあったら怖くて食べれません(笑)
奥の建物の屋根に乗っている鬼瓦も合わせて見えるので、更に迫力なんです。
これでは悪いことはできないでしょう。
厄や邪だけでなく、善良な参拝者もまとめて祓われそうな勢いです(笑)
この写真だけでも十分魔よけのお守りになりそうですね。
神楽殿
質素でかわいい神楽殿です。脇の青い建物は神輿蔵。
八坂神社
入口鳥居のすぐ先にあります。小さいけれど存在感があります。
金棒守り
一番人気のお守りだそうです。そりゃあ強いでしょう。
受験必勝にいいようです。絵馬もあります。
ちなみに御朱印は現在受け付けていませんので、ご注意を。
心地よい風が境内を吹き抜けています
池袋から武蔵嵐山駅(むさしらんざん)までは、東武東上線直通で約1時間、電車賃も片道720円(3/24現在)と大変リーズナブル。
手前の東松山駅近くには、御本殿の彫刻がみごとな古社、箭弓稲荷神社があります。
東松山駅と反対側の吉見方面には、伊波比神社、横見神社(両社とも黒岩にある延喜式内社)、高負比古根神社(田甲にある延喜式内社)、その他吉見百穴、岩室観音、吉見観音など、歴史的価値の高い地域です。ただしバスはほぼ期待できないので、ウォーキングコースとしてですが。
鬼子母神堂(きしもじん)/威光山 法明寺
※鬼子母神の鬼の字は、頭に角のない字
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創 建 : 1578年
本 尊 : 鬼子母神
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住所: 東京都豊島区雑司ヶ谷3-15-20
交通: JR池袋駅東口より徒歩15分、都電荒川線 鬼子母神前駅、副都心線 雑司ヶ谷駅
公式ホームページ: 鬼子母神
節分 『福は内』のみ
威光山法明寺(日蓮宗)の飛地境内に鬼子母神堂があります。
安産・子育てでは有名な聖地ですね。
鬼子母神堂(拝殿)
【ご由緒】
鬼子母神のご尊像は、1561年清土(現在の目白台)より掘り出し、東陽坊という寺院に納めお祀りした。
その後信仰はますます盛んになり、1578年稲荷の森と呼ばれていた当地に、堂宇を建立。
鬼子母神は安産子育の神様として広く信仰の対象になっていますが、もともとはインドの神、ハーリーティーと言う名の夜叉なんですね。なんと500人とも1万人とも言われる数の子どもがいたそうですが、その子どもたちのために人間の子どもを捕らえて食べていたそうです。
それを見かねたお釈迦様が末の子を隠したところ、母であるハーリーティーは半狂乱となり、お釈迦様の教えのもと、改心するようになりました。
かくしてハーリーティーは仏教の守護神となり、安産子育ての守り神となったそうです。
鬼子母神像
お堂右手にポツンと立っていますが、本堂に参拝後、誰しも必ず足が向いてしまうようです。
拝殿正面の屋根に張り付いているのは赤鬼?
写真がボケてよくわかりませんが、重い屋根を支えているようですね。
鬼子母神堂(相の間・御本殿)
拝殿・相の間・本殿を右側面から。
こちらの屋根の下にも赤鬼のような方が頑張っておられます
妙見堂(本殿背面)
本尊は妙見菩薩。
裏側(池袋側)入り口から入ると、最初に赤い鳥居が目にとまります。
不可思議な配置ですね。鬼子母神本殿の背後に、背中合わせになるようにしてお祀りされています。
妙見信仰と言えば北極星や北斗七星を連想しますが、本堂の背後に鎮座ではなく、本堂にピッタリ張り付いて一体化していますよね。
芳武稲荷堂
本尊は倉稲魂命。もともとこの土地は稲荷の森と呼ばれていましたが、その地主神。
鬼子母神堂とは異なるクリアなパワーを感じるのですが、大銀杏の大木と一体化されているご様子。
公孫樹(銀杏)
樹齢600年以上。稲荷の森や鬼子母神堂を見守り続けてきたのでしょうか。
(境内にはその他、法不動堂、大黒堂があります)
鬼子母神堂は仏教でも神道でもない不思議な空間ですが、どちらかと言うと神社に近いでしょうか。
パワーの強い芳武稲荷+大銀杏と背後の妙見堂でガッチリと空間を守っておられるようです。
仏教と神道と外国の神様がそれぞれの役割を担い、この地で人々をしっかりと守護されています。本当のグローバル、多国籍企業かもしれませんね。
神様仏様って、本当に協力し合うんですね。宗教に関係なく、その土地や国や人々を護ってくださったり、叱咤激励してくださったり。
人間だけが宗教と言う名を掲げて、それを理由に互いに争っているだけなのかもしれません
鬼と名はつくものの、上っ面ではない深い慈愛をもって、参拝に来る方を受け止めて下さるようです。
海より深い母性愛のなせる業でしょうか。
※番外編
青ヶ島(あおがしま)
住所: 東京都青ヶ島村
交通: 八丈島から船便が一日1往復あるが、就航率は50%以下。
東京愛らんどシャトル(ヘリコプター)で八丈島と往復便あり
公式ホームページ: 青ヶ島村ホームページ
何故この鬼テーマに載せたかと言うと、青ヶ島は古来、「鬼ヶ島」と呼ばれていたからなんです。
出典: これが東京都?! 絶海の孤島「青ヶ島」が断崖絶壁すぎて脱出不能に見える | DDN JAPAN
私も直接島へ渡ったわけではないのですが、かなり昔(笑)、貨物船で55時間かけて小笠原の父島へ行った際、曳航していた船を引き渡すため青ヶ島のすぐ近くまで寄ったんです。
断崖絶壁で周囲を覆われているその島に、当時は貨物船すら接岸できなかったため、海上での引き渡しとなったんですね。
初めて見る青ヶ島。感動でしたね
断崖絶壁に周囲を覆われているその姿は、まるで気高い要塞です。
桃太郎に退治された鬼たちが流れ着いたという伝説や源為朝が島流しにあった際、鬼ヶ島を見つけたという記載がありますが、それがこの青ヶ島ではないかとの言い伝えです。
数々の伝説があり、火山のエネルギーも生きている孤島。
これはもう島全体がご神体なのかもしれませんね。
自分の中の好奇心がグツグツ煮え立っているのがわかります。
いつか行ってみたい聖地の一つです。