〔【生業訴訟判決の波紋】責任・慰謝料 認定違い「釈然とせず」〕
(2017年10月13日  福島民友)
「判決がこれだけ分かれるとどうにも」。

国と東京電力に原発事故の責任を認めた

2017年10月10日の生業(なりわい)訴訟判決は

会津を除く

中通りと浜通りのほとんどに新たな賠償を認めたが、

同種訴訟でこれまで判決が出ている

前橋、千葉両地裁と認定が異なる点もある。


2017年3月の(群馬)前橋地裁判決は

福島判決と同様に

国と東電双方に事故の責任を認めたが、

2017年9月の千葉地裁(判決)は

「津波対策は優先度が低かった」などとして

国の責任を認めなかった。

判決の慰謝料についてはもっと多様だ。

事故当時住んでいた場所に応じて

慰謝料を決めた福島判決で、

矢吹町の原告に認定された慰謝料は10万円。

一方、

千葉判決は同町から避難の原告には

10万円を超える支払いを命じた。

福島判決が賠償を命じた

県南に住む会社員男性(32)は

「判断基準をどう考えればいいのか分からない。

重要なのは納得感ではないか」と、

判決ごとの認定の違いに対する釈然としない思いを明かす。
慰謝料の多寡ではなく、

各判決が、賠償の基準となってきた

国の中間指針を超える慰謝料の支払いを命じていることを

評価する声も。

福島市の看護師女性(32)は

「事故後、不安を抱えて生きてきた。

裁判には加わっていないが、

そうした心労を酌んでもらえるなら報われる気がする」と話す。

福島判決の大きな特徴は、

事故当時に住んでいた地域ごとに慰謝料額を判断した点。

判決が

慰謝料の追加や新規の支払いを命じた地域

に住むのは原告だけではない。

仮に福島判決を原告外にも適用すれば、

賠償の対象となり得る県民は

約150万人。

「自分も慰謝料がもらえるのか」との声も聞かれるが、

支払いの対象となるのは原告のみ。

しかも判決が確定した場合に限られ、

今後の展開は不透明で、

今後予想される控訴審の行方などに左右される。

過去にアスベスト(石綿)訴訟に携わった

弁護士の位田浩氏(54)=大阪市=は

「一般化できる共通の争点について、

最多の原告数を持つ福島での判決は他の地裁も無視できない」

と指摘する。

浜通りの自治体の損害賠償担当職員は

各地裁の判決を比べながら言う。

「各地裁の判決の数だけ賠償額の差は生まれる。

国と東電は状況に応じて、

新たな統一基準を策定する必要がある。

司法の判断は、そう指摘しているのでは」

 

 

〔福島原発事故で国の責任を認める判決〜県外にも賠償命令〕
(2017年10月12日  OurPlanet-TV)
東京電力福島第一原子力発電所事故の被害者約3800人が

損害賠償を求めていた集団訴訟で、

福島地方裁判所は2017年10月10日

国と東京電力の責任を認め、

原告のうち約2900人に総額約5億円の支払いを命じた。

原発事故をめぐる集団訴訟で国の責任を認める判決は

今年3月の前橋地裁に続き2例目。

国の過失を認める判決に、原告らは歓喜の声をあげた。

判決の中で、

福島地方裁判所の金澤秀樹裁判長は

「国が東京電力に津波の対策を命じていれば原発事故は防げた」と指摘。

2002年に政府の地震調査研究推進本部が発表した

地震の長期評価に関する信頼性を認めた上で、

少なくとも同年12月までに国が東電に対して規制権限を行使していれば、

「原発事故は避けることができた」として、事故を防げなかった国の責任を認めた。

弁護団らが判決内容を伝えると、

裁判所を囲んでいた原告らは歓喜の声をあげ、目を潤ませる人も。

原告団長の中島孝さんは、

原告や支援者が詰掛けた報告集会で

「主張の一丁目一番地を完全に勝ち取った」とかみ締め、

「被害救済の大きな足がかりになった」とさらなる救済の拡大を訴えた。
 

≪賠償対象地域が広がる~福島県外も≫
この裁判では、

国が示してきた損害賠償の指針は過小であるとして、

その妥当性を争ってきた。

判決では、

原告3800人のうち

4分の3にあたる約2900人について、

国の指針を上回る追加の賠償を認めた。

(⇔4分の1にあたる約900人については

認められなかった。

追加で賠償が認められたのは、

福島市、郡山市、二本松市など

国の指針で「自主的避難等対象地域」とされた地域で

大人(妊婦を除く)に16万円。

白河市などの県南地域住民に

大人10万円。

南相馬市の一時避難要請区域

(南相馬市の避難指示区域と

緊急時避難準備区域以外=鹿島区など)で

3万円。

また、これまで賠償対象となっていなかった

茨城県北茨城市や東海村、水戸市、日立市でも

1万円の賠償が認められた。

一方、

福島県の会津地方や

宮城県、

栃木県、

茨城県牛久市やつくば市では、

賠償が認められなかった。
避難指示が出された地域では、

帰還困難区域と双葉町の避難指示解除準備区域で

追加賠償20万円が認められたが、

居住制限区域や双葉町の避難指示解除準備区域を

除く地域は

認められなかった。

また、

千葉地裁では認められた故郷を失ったことに対する

特別な精神的賠償にあたる「ふるさと喪失慰謝料」は、

すでに支払われている賠償範囲内であるとして、

追加の賠償は認められなかった。

 
~参考~
原発事故「生業」福島訴訟判決〕

 

 

 

 

〔国の姿勢...「著しく不合理」と非難 原発事故「生業」訴訟判決〕
(2017年10月11日 福島民友)
東京電力福島第1原発事故を巡る集団訴訟で
福島地裁が示した2017年10月10日の判決は、
初めて国の責任を認めた(群馬)前橋地裁に続き、
規制権限を行使しなかった国の姿勢を
「著しく不合理」と非難した。
同種訴訟では
避難の有無を問わずに賠償を認める初の司法判断で、
これまで継続的な精神的賠償の対象外だった住民にも
慰謝料を認定。
一方で
避難区域は
帰還困難区域以外の賠償の上積みはほとんど認めなかった。
 
「2002年で津波予測できた」
【国の責任】
福島第1原発の敷地高(海抜10メートル)を越す
津波の到来を予見できたか判断する鍵となる
2002(平成14)年7月の
政府見解「長期評価」の信頼性について、
前回の千葉地裁判決では
「種々の異論も示されていた」と揺らいでいた。
しかし、
福島地裁は
詳細に検討した結果、
「専門的研究者の間で正当だと是認された見解で、
信頼性を疑うべき事情は存在しない」
と言い切った。
さらに、
国が同年末までに規制権限を適切に行使し、
東京電力に長期評価から想定される
敷地高15.7メートルの津波に対する
安全性の確保を命じていれば、
東電は対策を取っていたはずだと指摘。
「8年以上後の大震災で津波が到達するまでに
対策工事は完了していただろうと認められ、原発事故は防げた」
と(事実)認定した。
ただ、
原発の安全確保の責任は
「第1次的に原子力事業者(東電)にある」とし、
国の賠償責任の範囲は「東電の2分の1」とした。
 
「空間線量率」重要な要
【賠償】
原告が平穏に暮らす権利を侵害されたか否かを基に
賠償を算定した。
権利の侵害は
「健康被害の危険性が低くても、それだけで成否は決まらない」
とし、「空間線量率が最も重要な要素」と位置付けた。
継続的な精神的賠償を受けていない地域でも、
年間10ミリシーベルト程度の空間線量率が計測されていれば、
放射線への不安や被ばくを避ける行動は被害と認めた。
[⇒つまり、「実害」よりも
「(常識的範疇での)最低限のリスク」の視点を重視している。]
 
一方、
会津は
事故直後も放射線量が一貫して低く、
不安や生活上の支障を感じていても
「賠償すべき損害があるとは認められない」として、
請求を退けた。
 
「現状回復」請求を却下
【原状回復】
原告は、
国と東京電力に放射線量を
事故前の水準(毎時0.04マイクロシーベルト)に戻す
「原状回復」と、
それが実現されるまでの間の月額5万円の慰謝料を
一律請求していた。
原状回復について
福島地裁は
「除染関係ガイドラインに沿った除染工事を含め、
確実に実現可能な方法が特定されていない」として
請求を却下した。
[⇒この点、原告側も、原状回復を実現するためにも
(従前の除染手法よりも)
有益な(実現可能な範疇での)代替手法の具体的提示が
不十分であったと言えるかと。
ただ、それが今日の科学技術の限界でもあるわけで、
原告にとっても、かなり酷な課題でもあるわけですが。]
 
PS
(2017年10月11日 福島民報)
東京電力福島第一原発事故の被災者約3800人が
国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減(原状回復)などを求めた
生業(なりわい)訴訟の判決で、
福島地裁の金沢秀樹裁判長は10日、
国と東電の責任を認定し、原告約2900人に総額約5億円を支払うよう命じた。
津波を予見できたにもかかわらず対策を怠ったと判断し、
国の指針に基づいた東電の慰謝料を上回る賠償を認めた。
全国で30件ほどある同種の訴訟で国の責任を認めなかった
9月の千葉地裁に続き3件目の判決。
国と東電双方の賠償責任を認めたのは
3月の前橋地裁に続き2件目。
前橋地裁、千葉地裁に続き国の指針を超える賠償を命じ、
司法が現行の賠償制度の不備を改めて指摘した形となった。
原告は事故当時、福島県と宮城、茨城、栃木3県の住民。
事故後も居住地にとどまった人が約8割を占める。
国の指針で賠償が認められなかった
県南地方の住民に10万円の賠償を認めたほか、
県北や県中などの自主的避難等対象区域の原告に
16万円の追加賠償を認定。
帰還困難区域と双葉町の避難指示解除準備区域の原告に
それぞれ、国の指針に20万円を上乗せする賠償を認めた。
 
 
 
 
参考
 
 
 
 

 

≪「原発事故"生業(なりわい)"・福島訴訟」
   
 判決後の原告の視点
~判決後の「判決報告集会」
(2017年10月10日)

 

 

〔国の責任を認め賠償命令〜原発集団訴訟〕

(OurPlanet-TV  2017年10月10日)

東京電力福島第一原子力発電所事故の被害者約3800人が

損害賠償を求めていた集団訴訟で

2017年10月10日島地方裁判所は

国と東京電力の責任を認め、

原告のうち約2900人に総額約5億円の支払いを命じた。

一方、

原告が求めていた事故前の環境に戻して欲しいとする

「現状回復」請求については、

認めなかった。

原発事故をめぐる集団訴訟で国の責任を認める判決は

今年3月の前橋地裁に続き2例目。

判決の中で、福島地方裁判所の金澤秀樹裁判長は

「国が東京電力に津波の対策を命じていれば

原発事故は防げた」と指摘。

2002年に政府の地震調査研究推進本部が発表した

地震の長期評価に関する信頼性を認めた上で、

少なくとも同年12月までに

国が東電に対して規制権限を行使していれば、

「原発事故は避けることができた」として、

事故を防げなかった国の責任を認めた。

~賠償対象地域が大幅に広がる~
この裁判では、

国の指針が示してきた賠償額は過小であるとして、

その妥当性を争ってきた。

判決では、約2900人の住民について、

国の指針を上回る損害賠償の増額を認めた。

追加で賠償が認められたのは、

福島市、郡山市、二本松市など

国の指針で「自主的避難等対象地域」とされた地域で

大人(妊婦を除く)に16万円。

白河市などの県南地域住民に

10万円。

南相馬市の

一時避難要請区域

(南相馬市の避難指示区域と緊急時避難準備区域以外

=鹿島区など)で

3万円。
また、

これまで賠償対象となっていなかった地域では、

茨城県北茨城市や東海村、水戸市で

1万円の賠償が認められた。

一方、

福島県の会津地方や

宮城県、

栃木県、

茨城県牛久市やつくば市では、

賠償が認められなかった。

避難指示が出された地域では、

帰還困難区域と

双葉町の避難指示解除準備区域で

追加賠償20万円が認められたが、

居住制限区域や

双葉町の避難指示解除準備区域を除く地域は

認められなかった。

また、

(千葉地裁では認められた)

故郷を失ったことに対する特別な精神的賠償にあたる

「ふるさと喪失慰謝料」は、

すでに支払われている賠償範囲内であるとして、

追加の賠償は認められなかった。