第9話~たらい回し | ガンジス河で潜水

第9話~たらい回し

朝8時ごろ目が覚めた。

・・・暗い!!

なんでこんなに暗いのよ!?

そう。

窓がない。

このホテル窓がない。


わかりやすく言うとラブホである。


もしかしたら知らないうちに俺らラブホに泊まってたのかも知れない。

なるほど!

だからみんななかなか連れてきてくれなかったんだ!

んなわけねーだろ


なんだか朝なのに朝じゃない、インドなのにインドじゃない・・・好きだけど言えない!!

そんな複雑な気持ちで迎えた朝は清々しいものだった。


俺たち二人はさっそく町へ繰り出すことにした。


この間いろんな奴に「危ないから行くな」と言われたバザールへ行くことにした。

その名も「パハールガンジー」メインバザールだ。

なぜ行くなと言われたところに行こうと思ったかって?

だってどうせ嘘だもん!!

全部嘘だろどうせ!!




ふむふむ。


確かに人がわんさか賑わっているではないか。


うさんくさいインド人、ターバンインド人、サリーを着た美人インド人、観光客らしき欧米人、野良犬、物乞い、牛・・・





牛!?




まさか~。


牛が町中に、ましてや一番賑やかな日本で言ったら原宿渋谷みたいなところに牛がいるわけ・・・













$ガンジス川で潜水















あぶねぇって!!


つーか、近いって!!


なんちゅうとこに来ちまったんだと後悔する暇もなく、次から次へとうさんくさいインド人に絡まれる。


「コンニチハ~アニョハセヨ~」


日本人か韓国人かわからねぇなら話しかけんなボケ!!


「ホテル?レストラン?マリファナ?」


いや・・・マリファナ関係ねぇだろ・・・。


とにかくどいつもこいつもインディアン。

でもこの人たちの場合インディアン(嘘つき)


この町を何かに例えるなら「ちゃんこ鍋」だ。

元相撲取りが結局強くなれずに引退後、生活のために必死でもがいた挙句、なんとなく開いたちゃんこ屋の「ちゃんこ鍋」だ。


とにかく何もかもがゴッチャゴチャ・・・

ひとつの世界にたくさんの世界が共存しているように思えた。


まず「歩き方」で調べたインターネットCAFEらしき所に行ってみた。

今流行のネカフェである。

きっとネカフェ難民達がネットに明け暮れているに違いない!

メインの通りを一本横に入る。

軽自動車一台が山瀬まみの顔真似をしたらやっと通れるような細い道だ。


「お!あったぞ安藤!」


うん。


間違いなく「CAFE」ではない!!

なぜならウナギの寝床にパソコンを並べただけの店だからだ。


横一列に10人くらいが座ってパソコンをいじってる姿は世界一を誇る「IT大国インド」とは思えない、俺と木村拓哉くらいかけ離れていた。


店主は「店主」と言うよりも「パソコンいっぱい持ってる近所の兄ちゃん」でしかない。

よくよく考えてみたらネカフェ難民なんているわけがない。

ここに入れる時点でインドでは難民ではなく金持ちだ。

とりあえず自分のホームページを更新したりして過ごした。


店の横にはおっさんが「チャイ」を売っていた。













$ガンジス川で潜水


















「チャイ」とは甘ったるいミルクティーのことで、インド人はこの「チャイ」を朝昼晩としょっちゅう飲んでいる。

いろんなところでチャイを売っているが店によって味も作り方も全然違うらしい。

一杯5Rsだと言う。

俺達は10RS払い二人で洒落たティータイムを取ることにした。


うまい!!

これはうまい!!


二人で喜んだ。


ドンっ!!


いてッ!!
(誰だよ全く・・・)

後ろから右腕に重たい感触と痛みと怒りと部屋とワイシャツと私がこみ上げてきた。

ったくもう!!

俺は振り返った。















$ガンジス川で潜水





























お前かよ!!

どうりで痛いわけだよ!!



いや・・・そんなことより安藤さん。

さっきからずーっと俺の前で悲しそうな目で何かを訴えてる子供がいるんですけど・・・



少女はやはり泣きそうな顔をしてる(絶対演技!)

俺もやはり泣きそうな顔をしてる(素で)

でも、この子すんげぇ可愛い・・・


付き合いたい!


たぶん5歳くらいだろうから付き合うとかまだ早いかもしれないけど、手とか繋いでパキスタンとの紛争地帯を駆け抜けたい!!

と、野蛮な妄想を膨らましながら持っていたキャラメルを上げたら、さっきまでの顔はなんだったんだっつーの!くらいの笑顔で走り去って行った。


・・・。



でたー!!

増えてる!!

安藤!!

さっきより増えてる!!

つーか走り去って行ったのかと思ったら友達呼びに行っただけかよ!!


もう一人のチビにもキャラメルをあげ、インド旅行費用5万円の私はキャラメルで許してもらいましたとさ。


それにしてもインドの子供可愛い・・・




付き合いたい。