真の国際性とは? | 女王様のブログ

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ある女性教師の日常のこと,悩みや課題を率直に書いた,ぶっちゃけ話。

昨日,ある教室に掲示されていた「温かいスープ」というタイトルの文章を見つけ,心に残った文章だったので,備忘録として書き留めておこうと思う。


「温かいスープ」はフランス文学者の今道 友信さんが書いたものだ。

この文章は中学3年生の教科書にも載っているもので,世の中の中高生の多くが目にしているものらしい。


内容を簡単に言えば,


戦後,日本が相当な嫌われ者で,オリンピックにも参加出場を認められなく,国際的な機関への参加はもちろん拒まれていたような時代の出来事である。


著者がフランスのパリの大学で講師として勤めていた時,大学の教授が紹介してくれた下宿先には,日本人だというだけで断られる。

しかたなく,大学の紹介で別の貧相なホテルに住むことになる。そのホテルの近くにある小さなレストランでの話だ。


毎週土曜日になると,その小さなレストランで筆者はいつもご飯を食べていた。

月末になると給料が底をつくため,「今日は食欲がない。」などと言って,オムレツだけしか注文しなかった。

2か月ほどすると店のおかみさんや若いウェイトレスと顔見知りになり,月末のある日に,同じようにオムレツを注文すると,1人分の料金しか払わないのに,2人分のパンを出してくれたり,別の日は,オニオングラタンを御客の注文と取り違えたと言って女主人が持ってきてくれた。著者はそのオニオングラタンを一さじ一さじかむように味わったそうだ。

外国の世情の厳しい中で,寒くてひもじい思いをしている時,そのスープがどれだけありがたいものかを語っている。


本文の最後に著者はこのように述べている。


国際性、国際性とやかましく言われているが、その基本は、流れるような外国語の能力やきらびやかな学芸の才気や事業のスケールの大きさなのではない。

それは、相手の立場を思いやる優しさ、お互いが人類の仲間であるという自覚なのである。

その典型になるのが、名もない行きずりの外国人の私に、口ごもり恥じらいながら示してくれたあの人たちの無償の愛である。

求めるところのない隣人愛としての人類愛、これこそが国際性の基調である。

そうであるとすれば、一人一人の平凡な日常の中で、それは試されているのだ。


今この日本にいて,この地域で,そしてこの場で国際性を磨くことはできる。

そのように思ったいい文章だった。