「かすみ」その1
「さて・・そろそろ帰るか」
仕事が一区切りつき、窓の外に映るネオンを見ながら今夜の晩飯を頭にめぐらす。
サクラと出会ったあの日から2週間後の週末。
仕事の慌ただしさも引けて、少し余裕ができていたので同僚やOLさん達から
夜のお誘いを受けるも、やんわりと断り家路へ向う事にした。
ピロリロリ~ン♪ メールが着信して確認するとサクラからだった。
『ちゃんと学校に行ってきたよ。何もなかったから大丈夫です。
今日は妹と2人で仲良くご飯食べてます。』
メールにはサクラと妹が笑顔でご飯を食べている姿が写メールで送られてきた。
『美味しそうですね。俺は今仕事が終わって腹ぺコです』
『じゃあ、ご飯作るから食べにきますか?』
『ありがとう。でも今日は美味しいものでも食べて帰るよ』
『今日もケーキなの?』
『いや・・ちゃんとお酒飲めて美味しいご飯のある店です』
『いってらっしゃ~い』
『ほんじゃまたね』
サクラのメールを見て、オムライスもいいなと本気で思うもどこで食べれば・・
ついつい、行き慣れた居酒屋の暖簾をくぐる。
「そういや、ここでもオムライス食べれたな・・(笑)」
行き慣れたその店には、やっぱり同僚もきて盛り上がっていた。
「あれ~!?木村さん、帰ったんじゃないんですか!」
「あはは、デートの誘いを断られて、一人淋しく飲みにきた」
「木村さん、デートする相手なんていたんですか?」
「あのね・・いますよ・・」
「本当ですか?!(笑)」
「まぁ、あんまりそこら辺は突っ込まないでよ」
みんなが爆笑しているその輪の中に加わって、食べ物を追加した。
お願いしたのはもちろん「オムライス」であったけど、いきなり何を頼むのかと
みんな不思議そうに思ったようだ。
「木村さ~ん、次行きましょう!」
後輩に腕を捕まれ、半ば無理矢理に繁華街のネオンの中へと歩み出す。
同席していた女の子達は、上手にフェードアウトしていたが
酔いどれの後輩や同僚は次の店へすでに心が向っているようで気にもしてない。
「キャバがいいですか?フィリピンですか?・・風俗もいいけどバラけちゃうし。
たまにはヨーロピアンもいいかな(満面の笑み)」
いつもの事だが、本当に楽しそうに酔っぱらっている。
仕事はできるが、夜遊びも手を抜かない後輩に半ば無理矢理連れ回されるが
イヤミがないので、つい付き合ってしまう。
今夜もフルコースか・・財布の中が心配になってきたよ。
案の定、キャバに始まり、フィリピンに風俗にと渡り歩く後輩。
私は風俗はパスして、行き付けのバーに顔を出した。
ママ一人、女の子一人の小さな店だが、気兼ねせずに飲める店でお気に入りだ。
行くと店で仲良くなった飲み仲間が笑顔で手招きしてくれる。
いつもの指定席に腰を下ろして、いつも頼むお酒が頼まなくても出されてくる。
終電に合わせて店を出て、駅へと向う。近道にと思い少し暗い裏露地を進むと
目の前で男女がなにやら揉み合っていた。
「(なんだ・・こんな所で痴話喧嘩かよ)」
引き返すのもなんだか気が引けるし、かと言ってなんか近付きたくもなかったけど
終電を逃すとタクシーで帰らなけりゃならないのは痛いので、通り過ぎようと思い
そのまま無視しようとしたが・・・
どうも、無視できそうになさそうだ・・
「(なんかここのところ、こんな場面によく出会っちまうな・・)」
頭を掻きむしりながら、揉み合う2人に近付いた。