「さくら」その6
そろそろ日が暮れてきたので、「近くまで送っていくよ」と促すと
「いえ、大丈夫。一人で帰れます」と答えるが、そうもいかないからと言って
2人して部屋を出た。
家を聞くと私の部屋とは正反対の学区のはずれだった。
商店街を抜け、繁華街を通り、先程までいた公園のよこを通って家路へ向う。
イジメの件に触れてはいけないかと気にはしていたが、何もなかったように
するのも、今後のこの娘の事を思うと聞かずにはいられない。
どう切り出そうか考え悩みながら歩いているとサクラから先に話し掛けた。
「今日は・・ありがとうございました・・あの・・」
「あっ・・いや、別に気にしないで」
「あの・・私なら・・大丈夫ですから」
「そうは言うけど、親御さんも心配するんじゃないかい?」
「あの・・!今日の事は・・」
「??・・親には知られたくない?」
「(コクンと頷く)」
さきほどまでの笑顔が消えて、イジメにあってた時の不安と悲しみの表情に戻っていた。
その顔を見てしまうと無理強いはかえってサクラを苦しめると思うも、このまま放置するのも・・どうしようか悩む。私が悩んでいるのを感じたのか再度サクラが口を開く。
「本当に大丈夫です・・いつもの事だし・・」
「(いつも・・って)そうもいかんだろ?」
「親に話しても・・変わらないし・・」
「先生とかは?」
「(横に首を振る。表情はさらに暗くなる)」
「う~~ん・・・」
「あの・・本当に大丈夫です。それに助けてもらってうれしかったし」
「・・・・そうか・・」
無言で歩く。どう言えば、どう行動するのがこの娘にとって一番なのか・・
かと言って、今日出会ったばかりの人間には何もできない。
中途半端に首を突っ込むと、かえって報復の火が大きくなるかもしれないし
言いたくても言えない気持ちってなんとなく理解もできるので
サクラが遠慮する気持ちもよくわかるだけに・・何かできないか考えた。
「あの・・」サクラは立ち止まって俺に呼び掛ける。
「はい?」立ち止まりサクラを見ると
「今日は本当にありがとうございました。もうウチがすぐそこなので・・
あの・・借りた服は明日にでも返しに行きますから。」
「そっか、わかった・・あっそうだ!」
「(?!)」
「明日、俺も休みだし・・どう?甘いの食べに行くか?」
「えっ??」
「どう?(笑)」
「(少し悩むも笑顔が浮かぶ)・・」
「うまいぞ!絶対に!!(笑顔)」
「いいんですか?」
「よし、決定!じゃあ迎えにこようか?」
「あの、私から木村さん宅の近くまで行きます」
「じゃあ、あのコンビニまできてくれる」
「じゃあ、そこに」
笑顔が戻ったサクラは小走りに自宅へ向って走っていくのを見守る。
「さくらちゃん!」私は彼女の後ろ姿に向って呼び掛けた。
「はい?」サクラは立ち止まり振り向く。
「なんかあったてまた助けてやるから、なんでも俺には話せよ!!」
「・・」
「・・(いっちゃいけなかったかな・・)」
少し黙って立ちすくんだ後、今日一番の笑顔を見せてこう返してくれた。
「じゃあ、また助けてくださいね。いっぱい話も聞きたいし!」
「おう、じゃあ明日な」
「じゃあ・・また明日。さよなら」
軽い足取りで小走りにかけていくサクラを見守りつつ、何かドキドキと
している自分の胸の中のなにかを感じずにはいられなかった。