明日は、台風が直撃するであろうという月曜日の朝。
西の空は、あさやけのように上ってくる日の光を照らし返しています。
台風11号が近づきます。
新聞配達の営業所では
緊急体制がしかれます。
昨日の朝刊には、
明日は、台風のため遅配も予想されます
との、予告記事はなし。
しかし、テレビやラジオはしきりに
午前3時九州地方西海岸を日本海に向け
北上との情報が流れてきます。
昨日の夜、新聞社から購読者にメールが入ってきます。
明日は、台風接近のため新聞の遅配が予想されます。
遅配の際は、ネットのビューア記事をご覧ください。
午前7時には配信開始です。
なるほど、紙媒体では告知はしない
しかし、遅配の対応ができる
ネットビューア記事登録者には
その際の対方策を伝える。
ちょぴり、配達員としては
紙の朝刊を楽しみにしている
お客様に申し訳ない気がします。
「明日は、少し早めに出発だよ」
先輩配達員さんから
昨日声をかけられます。
台風は、通常の配り始めの時刻から
だんだん近づく予想です。
本社もなるべく早く事業所に届け
早めの配達と終了で
この急場を乗り切ろうというのです。
配達を始めて3年目に入ります。
ただ、台風の山場が配達時刻と重なるのは
今回が初めてです。
早朝いつもより早めに事業所につくと
セット部隊がすでに仕分けを済ませています。
「今日はこの区画はベテラン勢がやるから」
と、持ち場の中で山間部の急な斜面が続く難所を
配達区域からはずしていただきました。
ありがたい。
残りの3区画に集中して配ることになります。
午前2時半、バイクのエンジンを入れ出発です。
最初の街中の区画は穏やかに進みます。
ただ、天候は穏やかですが
想定外のことがおきます。
台風対策なのでしょう。
いくつかのおうちはポストを家の中に片づけられています。
そのまま置いていくわけには行けません。
見回して
ドアの取っ手に挟み込めるところには挟み込み
格子状の隙間のあるドアにはそこに挟み込みます。
そんなこんなで何とか街中の集落の配送を終えます。
次の区画の新聞を中継所で補給しはじめると
風と雨が強くなります。
コース変更です。
山間部を風がひどくなる前に済ませることにします。
枝木が折れて落ちて道をふさがれたら万事休すです。
何とか順調に
風が強くなる前に
この区画が終えられそうでした。
しかし、その時、
目の前に大きな猪と、ウリボウが
道をゆっくり横切ります。
猪たちとの暗黙の約束で
バイクはその場で止まり
猪が藪の中に消えるのを待ちます。
互いの適度な距離感が必要な瞬間です。
難関のエリアを終え
最後の平地の集落にはいります。
風が強くなります。
山間部の下の方の集落は枝木が落ちてくることはありますが、
山が壁になって風をある程度防いでくれるメリットもあります。
ところが、平地になると風を遮るものがありません。
風をこらえながら何とか配り切ります。
営業所に戻ると
すでに配達を終えたスタッフが
ほっとして談笑しています。
やはりみんな、ポストの位置に苦労したようです。
危険個所を引き受けたベテラン勢もやがて帰ってこられます。
事業所あげて事故なく配り終えた
私にとっては記憶に残る配達日となりました。
※別の事業所で倒木によってケガした配達員がでたと
テレビで報道されました。
台風はまた来ます。安心はできません。
家に帰り実家の様子を確かめるため電話をかけます。
「もう雨戸はあけた」
唐突に母が電話口でしゃべり始めます。
「もう・・・？」
「そうそう、はやかったかね。
テレビじゃ、もうしばらく安全に注意するよう言いよるもんね。」
「特に、被害はなかった？」
「大丈夫、
ところで、木曜日は、家族送迎だけんね」
「はいはい。わかっとります。
まだ、風はつよいけん、外には出んようにね」
予想より西のコースを台風が通過したため
私たちの住む地域は、被害もなく済みました。
そのためか、両親の関心毎は、
木曜日の透析の通院支援にむいています。
先週膀胱癌の術後観察で内視鏡を使用したため
その炎症からか37℃をわずかに超える微熱があった父。
しかし、透析の病院はルールとして
原因が確定できない発熱の場合は、
家族が送迎にあたるようになっています。
コロナ対策です。
今回の父のケースもおそらく内視鏡の影響かとは思われますが
大事をとって今週の木曜日までは家族の送迎と
透析前の抗体検査が必要となります。
一応は陰性。しかし用心のために木曜日までは家族送迎。
実家の両親にとっては台風以上に
気をもむコロナ禍の透析です。
