*(ADPとは140か国に事業展開する世界最大の人事系サービス会社です)
突然ですが、事の始まりは、日本で忍者関連の仕事をフルタイムでしている人材(できれば女性)を取材したい、というお話をいただいたことでした。
昨年末に、忍者(くノ一)としての働き方やそこに至る経緯について、米国ADP社の取材を受け、撮影は渋谷で行われました。
撮影をしてくださったのは、国内外での社会文化的事象をモチーフに作品を制作して国際的に高く評価されている、写真家の苅部太郎さんです。
掲載されたのは、「ReThink Quarterly」という、出版物の中の、「世界のユニークな職業」を紹介しているコーナーです。
忙しい方のためにハイライトをお伝えしましょう。
文中では、主に以下に触れられています。
▪ フィクションの忍者とは異なった本当の忍者の使命、またくノ一の役割
▪ 現代も日本で「働いている」忍者達の実態
▪ 空世(越水)が注力する、忍者の智恵を活かしたコミュニケーション術や自己管理の技
▪そして、忍者が忍び込んだのは、お城ではなく人々の心であった事…
そして今回の取材で一番伝えたかったことは、この文章に集約されています。
~中略
”本当の忍者とは、お城に忍び込むのではなく人の心に忍び込むのです。忍術を知ることで、武力で戦うのではなく、知力とコミュニケーションによって対立しない関係を築くことができるのです。よく見る忍者のポーズ(胸の前で手を合わせるポーズ)は、刀に見立てた右手を鞘(さや)に見立てた左手にしまい、むやみに刀を抜かない(むやみに戦わない)ことを表しています。これは、今の世の中にこそ求められる心の姿勢だと思うのです。
私はこの仕事を始めてようやくそれを表現できる場を見つけることができました。"
以下に翻訳(一部意訳)した日本語文を載せますので、ご興味のある方はご覧ください
※長文です!
原文(英文)はこちらです。https://rethinkq.adp.com/unique-jobs-ninja/
また、私が業務提携しているエルダー・田中&アソシエイツ社のお知らせ欄にこの件の要約版が載っているので良ければそちらもご覧ください。
伝統を受け継ぎながら、フルタイムで働く忍者
~日本の歴史の中で特別な役割を果たした女性忍者「くノ一」は、現在も存在している~
忍者は創作の物語や伝説で伝えられた存在です。一般的には黒装束に身を包んだ人物が重力を感じさせないアクロバットを披露して、諜報活動や待ち伏せなどの隠密行動を行う姿が描かれています。
しかし、現代忍者の空世さんにとって、この誇張された描写は、忍者本来の歴史的意義や行動様式からは、外れているように見えます。
空世(本名 越水理恵)さんは、かつての忍者がどのような哲学、精神性、コミュニケーション技術を持ち、どのような方法で貴重な情報を入手したかを人々に伝えることに情熱を注いでいます。
「"ニンジャタートルズ "などのフィクション作品に登場する華やかな忍者像は、後世の創作物です」と越水さんは言います。「現実の忍者は情報収集と伝達が主な任務で、時には傭兵として特殊な任務に就くこともありましたが、常に陰に回り、目立たないように行動していたのです。彼らはコミュニケーションの達人であり、さまざまな職業に変装して争いを避け、時間をかけて、どこでも、どんな相手からも情報を引き出していたのです。」
忍者の歴史は古く、一説では12世紀にまでさかのぼることができます。この厳しい鍛錬を経たスパイは、しばしば傭兵として封建・戦国時代の日本の武将に雇われ、破壊工作や敵陣への潜入、情報収集、場合によっては暗殺者として活動していました。しかし、忍者の主な仕事は諜報活動です。
ほとんどの忍者は男性でしたが、くノ一は時に男性忍者の重要な手助けをすることもありました。
例えば男性忍者は、商人に化けて城に出入りしたり、町人や僧侶に変装して城の前に何ヶ月も滞在し、門番と親交を深めて情報を集めたりします。
一方くノ一は、敵組織に潜入して得た情報を伝えたり、家や城に入る手助けをするなどして、表舞台ではなく男性忍者の活動を補佐する役割を担いました。男性は土地に縛られることが多いのですが、女性は比較的自由に動き回ることができました。
現代の忍者になる
現代でも女性の忍者の数は極めて少ないです。現在忍者として活動している人は、日本全国で300人もいないと思われます。そのうち女性は20人程度でしょうか。
広島出身の越水理恵さんは、現在は東京や横浜で仕事をしています。ご主人がテクノロジー企業のマーケティング・マネージャーということもあり、トロント、北京、サンパウロなどに住んだことがあるそうです。
長い間日本以外の国で暮らしていたため、母国である日本の文化や歴史についてもっと知りたいと思うようになったのです。
帰国後、インバウンドの接客インストラクターをしながら、小学校の英語教師の資格を取得しました。そして独自に日本文化の勉強を続ける中で忍者に出会い、その存在の奥深さに魅了されました。また、自然界への深い理解、人間心理、呼吸法や精神力を鍛える身体能力の習得など、忍者が実践していた精神的、哲学的な信念についても学び始めました。
5年ほど前から横浜にある忍者学校「四季の森忍術道場」に通い始めました。そこで経験豊富な忍者の師匠のもと、レディースクラスで修行を積んでいます。
道場では、合気柔術などの武術、整体や操体法などを学びました。そのひとつが「地面にぶつからない歩き方」で、これは日本の伝統的な武道である古武道から導き出されたものだと言います。また、道場での学びをもとに、誰もが自宅やどこでもできるトレーニング用に忍者の基本動作をまとめた「忍者体操」をYouTubeで公開しています。
越水さんは5年前、エルダー・田中&アソシエイツ株式会社と業務提携をしました。同社は、忍者パフォーマンスをはじめ、ライブエンターテイメントイベントや集客施設のコンサルティングやサポートを行っています。週5日フルタイムで働き、週末はイベントのために出勤することもあります。調査、資料作成などの事務作業や、子供向けに忍者に関する教室を開くなど、幅広い業務を行っています。
コロナの大流行が始まり、世界中の多くの人々と同じように、彼女も在宅勤務の状況に追い込まれました。しかし、やるべきことはたくさんありました。忍者でも事務処理は必要なのです。
新たな労働条件
伝承の中の忍者は非常に強く、透明になったり、水や空気などの自然要素を操ることができるなど、超能力を持っているように描かれてきました。また、猫のように体をくねらせ、まるで飛び石のようにビルを飛び越えるアクロバティックな動きも有名です。このイメージは、全身黒ずくめの服装や覆面とともに、今も広く浸透していいます。しかし、多くの物事がそうであるように、真実はそんなに派手ではありません。
スパイである忍者は、人目につかないように風景に溶け込まなければなりません。黒一色の衣装で歩き回れば、逆に目立つことになります。実際僧侶や商人などに変装していないときの普段の忍者は、たいてい紺色などの農民服を着ていたそうです。
私は城に忍び込む忍者ではありません。人の心に忍び込むのが忍者なのです
現在の忍者には、さまざまな働き方があります。単発のショーやテーマパークの従業員から、越水さんのようにフルタイムで企業で働く人まで、その仕事内容は多岐にわたります。また、武術の演武だけでなく、道場の運営や教育、観光、歴史研究など、現代の忍者の仕事には様々な側面があります。
歴史上の忍者が、生活のために複数の武将や将軍から依頼を受けることがあったのと同じように、現代の忍者も複数の仕事を掛け持ちしている人が多いといいます。
フリーランスの場合、イベントなどで働くと年間100万円(日本円で約7,300ドル)程度の収入が期待できます。固定の職に就いている場合は、200万円から300万円(約14,600ドルから22,000ドル)の年俸を得ることができると予想されます。
"私はこの仕事を続けていきたいと思っています。今の目標は、今取り組んでいる忍者のコンテンツをマネタイズすることです。常に勉強の連続です。本当の忍者とは、お城に忍び込むのではなく人の心に忍び込むのです。忍術を知ることで、武力で戦うのではなく、知力とコミュニケーションによって対立しない関係を築くことができるのです。よく見る忍者のポーズ(胸の前で手を合わせるポーズ)は、刀に見立てた右手を鞘に見立てた左手にしまい、無暗に刀を抜かない(むやみに戦わない)ことを表しています。これは、今の世の中にこそ求められる心の姿勢だと思うのです。
私はこの仕事を始めてようやくそれを表現できる場を見つけることができました。"
記事はここまでです。時系列が変わっていたり所々に不自然な表現があったりしますがご愛敬でお許しください。
こんなに立派な記事を書いていただけたことに何より本当に感謝ですこれを機会にこれからも、忍者の知恵で戦を減らすための活動に益々精進したい、との思いを新たにしました
最後までご覧いただきありがとうございました