愛しいひと/明野 照葉
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一気読みでした。明野さん、好きなんですよね。ニコニコ惹き付けるのが、うまい。退屈させないっていうか、何が違うのかなって思うと、うーん、私の思い込みかもしれません。でも、文章がうまいのでしょうね、途中でやめたくないですもの。


夫がある日突然、失踪した。夫の瞭平は、学歴もよく、勤めも一流企業の部長で、仕事もバリバリ。妻の睦子は、専業主婦で一人息子は大学生。家庭内も、特に問題がなかったのに、なぜ?最初は帰って来ない瞭平に怒っていた睦子も、8ヶ月もたって、瞭平の会社から退職という手続きをとりにきてくれと言われ、どうしたらいいのかと、毎日、どよんとした生活を送っていた。会社の人に聞いてみても、瞭平は真面目で、浮気など伺わせるものもなかった。食事もインスタントばかりになり、息子は、瞭平や睦子の心配をするでなく、自分の事ばかり訴えるような、わがまま放題になっていた。何でこんなことになったのだろう。思い返せば、睦子は、息子のことばかりにかまけて、瞭平のことをほったらかしだった。だから、最近は、瞭平がどんな顔をしていたかさえ、思い出せない。でも、それは、普通の家庭の様子だったのではないのだろうか。そうこうしているうちに、息子が一人暮らしをすると出ていってしまった。睦子は、自分も働こうと、このままではいけないと思い、考え始める。


どこの家庭に起こってもおかしくないことだなあって思いました。夫がかせいでくるお金は、当たり前に使える物で、そこに感謝だのという思いはなく、当然というものになってしまっている。夫がどんな気持ちでいるかとか、そんなことを考えるよりも、子供子供で、頭の中がいっぱいになってしまっている。だから、突然なことが起こった時、何で?どうして?しかなくて、おろおろするだけになってしまう。


家族だなあって思いましたよ。3人が3人とも、自分勝手ですから、なるべくしてなったという感じで、でも、これって、普通だなあって、実際、蒸発しないだけで、本当に、皆、こうじゃないかなあって思いました。


そして、睦子は、愛しいひと、瞭平と息子とやり直したいと頑張っていくところが、とても良かったです。