優しいおとな/桐野 夏生
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桐野さんは、好きな作家さんです。何というか、毒があるけど、この毒が、意外と心地いいみたいな、自分の中にあるグロなものが共感を呼び起こすような、そんな感じがしているんです。


でも、この本は、そんなグロな桐野さんが陰をひそめたようなそんな感じがします。扱っているテーマは、ホームレスですが、何か、グロがないような。。。私の好きな桐野さんではないような気がしました。


福祉施設崩壊による、近未来っといった設定になっているようです。子供を産んだ親子のホームレスが集団で暮らしていたり、派閥を作ったりして、皆で暮らしています。


8歳まで児童保護センターにいたイオン。脱走して、少年ホームレスになり、渋谷に住み着いた。15歳。児センにいたとき、そこにいた子ども達のことを”きょうだい”だと教えられた。もちろん、血のつながりなどない。その中のイオンより2つ上の双子の兄弟、鉄と銅だけがイオンの心のよりどころだった。鉄と銅に、「おとなには、3種類いる。優しいおとなと優しくないおとなとどっちつかず」と教えてもらった。今、イオンは、渋谷の街を誰も信じることなく、一人でさまよう。鉄と銅もいない。会いたいのは、信じられるのは、鉄と銅だけだ。”優しいおとな”かもしれない、モガミ(ストリートチルドレンを助ける会の人)はうっとうしいだけ。今生きていられるのは、モガミに助けてもらったからということもあるにはあるが、それがどうした。鉄と銅に会いたくて、イオンは、地下にもぐって、闇人の生活をするようになる。



イオンは、孤独がわからない子供で、でも、それが、人と接することにより、優しさに触れることにより、孤独とは何たるかを知るようになる。



何というか、愛情をもらったことのない子供の生きていく様は、悲しいものがありました。