静かな夜でした。
窓から外をそれも夜空を見ながら、三ちゃんがにこにこして、手をふっていました。
私は、子どもにしか見えない何某を見てるのかとちょっと不安になりながらも、知らぬ顔をしておりました。
暫くして、三ちゃんが言いました。
「ママ、人間は、骨がいっぱいあるよね。」
「えっ」
「じーちゃんの骨、いっぱいあったじゃない。みんなで、箸でつかんだでしょう。」
義父のお葬式の時のこと、棺の中から、骨を拾い集めたときのことを言ってるようです。
「何で箸で掴んだのかな。」
すかさず、二ちゃんが言いました。
「だって、焼いたんだよ。熱いからに決まってるじゃない。」
「ふーん、そうなんだ。それから、じーちゃんは、天国に行ったんだよね。それで、お月様になって、三ちゃんのことをいつも見てるんだよね。」
主人は、黙っていました。
一ちゃんは、いろんなことがわかり始めているでしょうけれど、黙っていました。
二ちゃんは、うんうんと頷いていました。
「お月様が、また三ちゃんのことを見てたから、三ちゃんもお月様のことを見てるよって、手をふったんだよ。」
三ちゃんは、小さいのに、一年半も前のことをよく覚えているなあって思いました。
大人にとって、骨を拾うことは、リアルな悲しい作業なのに、子どもにとって骨を拾うことは、お月様になるための重要な儀式だという風に捉えているようでした。
一ちゃんと二ちゃんは、二人並んで、月を見上げていました。
家族みんなの頭の中に、生前のとても優しいじーちゃんの顔が思い浮かんでいただろう、そんな夜でした。