ふと最近、よく思い出すんです。



大学生の時のある飲み会に向かう道を5、6人の女子で歩いていた時のこと。電信柱に子犬が繋いであったんです。私以外の女子は、皆、


「わあ、かわいい。」ラブラブ!


っと言いながら、触ったり抱っこしたりしていました。っとその時、遠巻きに見ているだけの私に、その当時なぜか私のことをライバル視していた女子が言いました。


「いなさ、犬嫌いなの?」えっ


「えっあ、うん。あんまり。」シラー


「ふっ。やっぱりね。動物好きな人は、心が優しいっていうけど、いなさはね、冷たいよね。」得意げ



その時は、すごくむかついたんです。でも、言い返さずに、その場をしのぎました。



私が小学生の低学年の頃くらいまで、野犬が多かったんです。野犬って、集団で行動するんです。何か、狼みたいですけど。それで、ある学校の帰り道、ちょっと、花を摘んで帰ろうと、たんぼ道に入って、しゃがんでいますと、何やら視線を感じ、顔を上げてみたら、5,6m先に、大きな野犬が、5,6匹座ってこっちを見ていたんです。


驚いた私は、わーっと叫びながら、走り出しました。野犬が追いかけてきました。ワンワンガウガウ吠えながら追いかけてきます。子どもなので、すぐ追いつかれて、お尻をかみつかれました。でも、痛いとは思ったのですが、かみつきがずれたのでしょう。捕まりませんでした。私の声を駆けつけて、近所の農家の方が鍬を振り上げて、野犬を追い払ってくれたと思います。さだかではありません。なぜなら、私は、泣きながら、走り続けたからです。


そう、考えてみれば、お礼を言っていない。どこの誰に助けてもらったのかも定かでないんですよね。



かみつかれたのは、それ一回ですが、その後も何度も、野犬に追いかけ回された覚えがあります。私は、犬が怖いんです。どんなちいさな子犬でさえ、見るだけで、動悸が激しくなる。もちろん、今では、誰か他に人がいたり、飼い犬だったりすれば、それほどの恐怖は感じないほどにはなっていますが、触るなんてことは、まずしません。



でも、うちの父は、犬が好きで、本当にちょうどというか、野犬に追いかけ回される時期から、家で犬を飼いだしたんです。父は、本当にかわいがって、犬も父の言う事をよくききました。私は、自分の家の犬を触りませんでした。近くにも行かない。それどころか、遠くから、


「ばーか、あっちいけ。」


って、にらみ付けてたほどです。そんな私に犬が懐く訳もなく、それもまた私には面白くなくてっと、なっていったわけです。


でも、そんなある日の夜中だろうと思います。犬は、大きなイチジクの木に鎖を繋いでいたのですが、朝、鎖でイチジクの木がめちゃめちゃ痛んでいる所の下で、犬が、血を流して死んでいました。夜中に何匹もの野犬に襲われたようでした。


父は、大変悲しんで、


「鎖さえ、外してやっていれば・・・。」


っと、声を詰まらせました。私は、犬が死んだことより、父が悲しがってる事にたまらなくなって、泣きました。


そして、それから、


「もう犬は飼わない。かわいそうすぎる。」


っと父は言い、それから今に至るまで、犬は飼っていません。



私は、自分の家に犬を飼っていても、犬を好きになれなかった。ネコは、もともとうちの家族の天敵なので、好きではありませんが、動物一般的に考えても、好きな動物っていないような気がするんです。


まあね、イグアナが好きとかワニが好きとかって言ったら、「なんでー」ってことになりそうですが。



だから、最近、犬を見たり、ネコの泣き声を聞いたりすると大学時代の同級生の言葉を思い出すんです。



「動物好きな人は、心が優しいけど、いなさは、冷たい。」