華から噴水のように赤い鮮血が飛び出す
「悪く思うなよ女子」
少女は悪びれもなく華を一瞥した
その時、なにかが胸の中で蠢いた
――コロシテヤル……
「うっ!」
なんだこれ……
「邪魔が入ったが……、悪く思うなよ少年、私は待ち人がいるのでな……」
「――コロシテヤル……」
ふと、口から出た言葉
そしてなぜか居心地がいい、華が殺されたと言うのに……
何かが心を満たす……
『やっと目覚めてくれたか』
誰だ?
頭に直接、誰かが喋りかけてくる
『まったく……、まさか愛する者の死が我を呼び覚ますとは……、つくづく人間とは興味深い生き物だ』
男とも女とも区別つかない声は、ぼくに問いかける
『汝、復讐を誓うか?』
復讐? フクシュウ?
できるものならやってやる!
『契約成立だな……』
「うっ……!」
何かが込み上げてくる……
車酔いをしたときと同じ感覚だ
「少ね……、お前……、その姿……!」
なんだ? 目の前の赤い少女は驚愕の表情を浮かべている
「そうか……、こんなにも早く見つかるとはな……、私もついてる……」
そう言う少女はまた、手を前に向けて
「……Я дух света по Богу, чтобы поймать монстров в соответствии с нашей святой цепи!」
今度は対象的に光の渦が現れた
その渦から、鎖のような物が飛び出す
「コロシテヤル……」
鎖はぼくの体に巻きつき締め上げる
抵抗しようにも強固な鎖は外れない……、
筈だったが、右腕を振り上げただけで鎖は蜘蛛の糸のように簡単に契れた
「バカな! 神に仕える精霊の鎖だぞ……、
日本にがいかに神国だろうとこんなのは聞いたことがない!」
少女も驚いているが、一番驚いているのはぼくの方だ……
ためしに少女目がけて、体当たりを食らわせようと地面をけった
「っ!」
地面は抉れ、いっきに少女の体が近くなる
一瞬、少女の方がいっきに近づいてきたのかと思ったが、どうやら違うみたいだった
近づいたのはぼくの方だった
「きゃっ」
少女は防御の姿勢をとるが無駄だった
華奢な体は簡単に飛ばされる
「や、やるじゃない……、だけど今度はこうはいかっ……」
「そこら辺でやめておきなさいユリア……」
ユリアと呼ばれた少女は、声のした方を向いて驚きに表情を浮かべた
「ガサイ! なぜ止める、あいつは目標の」
「あなたに課せられた使命は違うはずですよユリア」
塀の上に座るガサイと呼ばれたフードを深くかぶった(声からして)女性は、静かな声で言う、
それに対してユリアは納得がいってないみたいだった
「くそ……、覚えていろよ、少年!」
「ユリア!」
「はいはい」
ユリアと呼ばれた少女とガサイと呼ばれた女性(?)は、自分の倍はあるだろう壁をなんなく飛び越えていつの間にか見えなくなっていた
二人のやり取りを見ていたら、いつのまにか戦意損失してしまったようだった
今はとにかく家に帰って何か食べたい、華が家の前で待ってるか……、も……
「――そうだ! 華は?!」
華が倒れてるほうを向く……、向いてのはいいがそこには何もなかった
あるのは、すっかり暗くなった道を照らす街灯の灯りだけ……
「そんな……、どこに……?」
夢でも見たのか……? きっとそうだ、そうに違いない
白昼夢でも見ていたんだ
……なら、もう家に帰ろう
――そのとき、ぼくはまだ気づいていなかった
自分の中にいる魔物もこれから起こる悲劇も……