〇きっかけ

 前回調べた香木のみを焚いても香りを楽しむことができる。一方で線香などは、他の香の原料を組み合わせて香りが作られる。今回はお線香作りに使用される香の原料について香源のお店の方から学ばせていただいた。

 

 香源のお線香作り体験では、9種類の香りのイメージから、自分の好きなものを選んで作ることができる。

〇六種の薫物

・梅花 甘いイメージ

・荷葉 さわやかなイメージ

・菊花 スパイシーなイメージ

・落葉 落ち着いたイメージ

・侍従 もののあはれをイメージした香りとのこと。落葉に近い。

・黒方 お祝いごとをイメージしたはなやかな香り。

 

〇三英傑の香り

・信長 ストロングなイメージとのこと。スパイシーさ強め。

・秀吉 豪華なイメージ。より格の高い人口が配合されている。

・家康 落ち着いたイメージ。原料の種類が最も多い。

 

 言葉だけで聞くと、’侍従’のもののあはれとはどんな香りなのか?と気になるが、まったくイメージがつかない。そこで、実際に香りを聞きながら、原料についてもお店の方から教えていただくことになった。

 

〇香の原料

 

◇樹木系

 白檀や沈香のように、木から採取される原料。重みのある香りが多いとされる。香りにおける重みってなんぞ?ってところだが、私としては「よーく嗅がないと分からないけど、すぐには消えないでずっと残る」ような感じだと思っている。

 

・乳香(フランキンセンス)

 カンラン科の木から分泌される樹脂。キリスト教の教会で古くから焚かれていた。

 無印のフランキンセンスの精油ではかなりすっきりとした香りなのに、樹脂は全然違う甘い香りがすることに驚いた。

 お香ではあまりたくさん入れるということはなく、少量を配合して香りのアクセントにする。

・龍脳

 フタバガキ科の樹脂の結晶。キリッとしたスパイシーな香りが印象的だが、これもまた塩辛さのある香りだ。

 乳香同様配合する量はほんの少し。香りを遠くまで運び香らせる役割も担う。

 

◇スパイス系

 漢方薬やスパイスの原料としても活躍する原料。草木の葉や根が使用されることが多い。「すぐ香り立つが、消えるのも早い」と感じるような軽めの香りが多い。スパイシーさや苦みのある香りをアクセントにする。

 

・甘松(かんしょう)

 オミナオエシ科の草木の根。上記の9種類のお線香の全てに含まれていたと思う。苦みのある漢方薬のような香り。香りに奥行きをもたせるとのこと。

 

・丁子(クローブ)

 チャイのスパイスでよく使用されるクローブ。香りはやっぱりチャイで嗅いだことのあるはっきりとしたスパイシーな香り。配合するといいアクセントになると思う。

 

◇その他

・貝香

 アフリカ東海岸で採取される巻貝の殻。五味でいれば塩辛さを感じるが、以外なことに甘みも強い。お店では言えなかったが、サザエのつぼ焼きで熱せられた貝殻のような香りがする。自分でも以外なことに私はこの香りが好みに感じた。

 保香剤としてお香作りでは多用されるとのこと。

 

※市販のお線香の場合、植物や動物から採取される原料以外にも、合成の香料も広く用いられている。合成香料の方が、品質が安定しており、安価であるため、むしろそちらの方が多用される。

 

〇ふりかえり

 実際に香りを聞いてみると、貝香の塩辛いような甘いような香りが気に入ってしまった。いい香りを楽しむというより、「もっと嗅いでみたい」と欲求が刺激される香りのように感じた。なので、貝香がたくさん含まれる「梅花」の香りをチョイス。

 樹木系のずっしりとした香り、スパイス系の刺激のある香りなどなど、様々な香りをじっくり楽しむことで、これまでの一面的だったお香の世界が、奥行きをもって深まっていくことを体感した。

 長くなってしまったので、実際のお香づくりの記事は後日としたい。

香源さんでは、実際の原料を聞いて体感することができる。上段左端のものが貝香。見た目はそのまま巻貝の蓋の部分である。