GHOST 第16話 | 色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

たとえ明日が見えて来なくても歩いて行きます。どこまでも。

木漏れ日降り注ぐ部屋の一角で昼の穏やかな時間を

吉田と承は一緒に過ごして居た。

俺も別世界から承を見守っている形ではあるが・・・

有子は買い物に行って家にはいない。

それは突然に起きた。

「ぼくのおとうちゃ、やさしいひと。」

たったこの一言。この一言を承が言ったがために

事態は急変する。

承は日差しによるあまりの気持ちよさに

気が緩んでしまい独り言として無意識に呟いてしまったのだ。

吉田はそのちょっとした瞬間に承が発した言葉を聞き逃さなかった。

「はあ?今なんて言った?

もう一回言ってみろよ。」

吉田は承に自分とこの俺とを比較されることを一番嫌った。

「なんだ、このくそガキ。

ほんとかわいくないぜ。

こうして俺が隣にいるときでもお前は死んだ親父のことをいつも思ってんだな。

なら俺がまるで優しくないみたいじゃねえか。

そうか。お前の腹の中は

いつでもどんなときも親父の面影があるんだ。

いつもお前はそう思ってこの俺を汚らわしい存在だと思ってんだ。

なるほど。

そうだったのか。よくわかったぜ。

どうりで俺に懐かねえ訳だ。

だからお前は

いつまで経っても俺の前で可愛くねえガキでいられるんだ。

GHOST「お前がいつもそんな高圧的な態度で接するから

こうなるんだ。

もう少し優しくなれ。

人間の心は機械じゃないんだぞ。

スイッチひとつで言うなりになるなんて思ってたら

大間違いだ。」

「ぼくのおとうちゃ。やさしいひと・・・」

めげずに承は心のうちを明かす。

これが2歳で小さい体の承が出来る吉田に対する最大の反抗だった。

「はあ?おとうちゃ?なんだそりゃ。しっかり話せ。」

胸糞悪い言い方を承がしようものなら、

その言葉じりを捉えて、吉田はとても疎んじた。

GHOST「まだ承は2歳なんだよ。

お前も小さい時は、うまく話せなかっただろうが。

誰でも最初の頃は上手に話せない。

ゆるしてやってくれ。」

その時である。

よほど亡くなった父親のことを言われることが頭にきたのだろう。

吉田の吸っていたタバコが承の体へと近づいていく。

「ジュッ。」

焦げたにおいがまわりを漂う。

「ギャァーーー!!!」

突然に爆発する承のもだえ苦しむ声。

あまりの熱さに耐えきれず暴れ狂う。

一瞬、俺には、なにが起きたのかわからなかった。

GHOST「何するんだ。まだ2歳の子供だぞ。

やめろ。

タバコの火を

小さい子供に押し付けるなんて・・・

まともな人間のすることじゃない。」

俺がなんと言っても吉田の耳には届かない。

吉田は顔色一つ変えず

むしろ悪ふざけでもしている子供のように

薄ら笑いさえ浮かべている。

「ざまあみろ。」

吉田の心の声が俺の耳に届く。

現世で生きている者にとって

その人間の1局面しか見えてこず

裏の部分

つまり本性というものは

なかなか見破れなかったりする。

影で存在するその人間の素顔

裏に潜んでいる悪の部分が

霊界にいると心の声となり聞こえてきて

現世では見られていない時に存在する残忍な素顔が

正体を現す。

吉田に関して言えば心の声を聞くことにより

更なる極悪非道ぶりが強調され悪業が積み重なり上塗りを繰り返すことになる。

GHOST[なぜなんだ。

なぜこんな奴が何の報いも受けず

この世にノウノウとのさばっているんだ。

神も仏もあるものじゃない。」

俺が今いる霊界というものはこういったところなのか?

何の手出しもできず・・・

悪の素顔というものを嫌というほど

見せつけられ・・・

段々とこうしたことが積み重なり

次第に・・・

守りたい人がどんな酷いことをされようが

霊界に生きている以上

見慣れてくるようになり・・・

耐え忍ぶしかなく・・・

気付いてみれば・・・

諦めの境地に突入していくってことなのか?

ここ最近の俺は自分の無力な存在価値を嘆いてしかいない。

これが現実。

 

 

これで承に対する吉田の虐待は済んだかに見えた。

まさかあんな悲惨なことが起きようとは・・・

 

つづく

 

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