GHOST 第10話 | 色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

色即是空。虚構による化身でしかないのなら、せめて今を楽しくEnjoy your life

たとえ明日が見えて来なくても歩いて行きます。どこまでも。

有子の酒浸りの生活はかなり進んでいた。

 

今では承を家に置き去りにして家を空けるまでに・・・

 

困ったものである。

 

1週間に1回だったものが

 

2回に増え3回に増え

 

今では1日おきに家を空けるまでになっていた。

 

承の世話においては夕方近くになると

 

食事を短時間で作り

 

出来上がると一緒に食べて

 

そのあと風呂に入れさせ

 

寝かしつけたあと外出するという形をとっていた。

 

夜中に帰ってくると酒の臭いをプンプンさせながら

 

帰宅するといった生活がここ最近では続いている。

 

ある時、ベロンベロンに酔っぱらった挙句

 

「こっちよ。さあ入って。」と言って男を夜中に連れてきた。

 

「これが息子の承よ。」と有子が上手くろれつがまわらない状態で紹介すると

 

「吉田といいます。どうぞよろしく。」と男があいさつをしていた。

 

俺はその男の頭からつま先に至るまで舐めまわすように見て吟味する。

 

まるでお見合い相手を品定めしている親になった気分だ。

 

「お腹空いたでしょ。何か作るわ。」

 

と言いながら有子はキッチンへと行ってしまう。

 

部屋には吉田と承の2人だけになる。

 

まあ細かく言えば、異空間では俺もこの中に居るには居るのだが。

 

「君、何歳?」

 

「・・・」

 

慣れない状況に承は黙っている。

 

「おじさんの声が聞こえないのかな?」

 

優しく言いながら承の顔をジッと見る。

 

「まあ最初だからね。恥ずかしがっているんだね。」

 

と言うと仕方ないといった態度で椅子に座りなおす。

 

何やら小さくボソッと言った言葉が霊界にいる俺の耳にしっかり届く。

 

「ちぇ!!シカトかよ。可愛くないガキだぜ。」

 

吉田の心の中の第1声がこれだった。

 

思わずビックリして今の言葉を

 

本当に吉田が心の声として言ったのか信じられなかった。

 

吉田は眼光するどく承を睨むと

 

有子に気付かれないようにするために

 

そのあと何も無かったように大人しく振る舞うのだった。

 

ここ最近の酒浸りの有子をみていて、

 

早く次の幸せを見つけて欲しいと俺は思ってはいた。

 

吉田というこの男には俺から良い点数は

 

とてもあげることはできない。

 

落第点だから帰れと言いたいのだが

 

俺の別世界からの声など届く訳ないとわかっているので

 

有子の気持ちに承も俺も合わせる他なかった。

 

それからとんとん拍子に事が決まり

 

まもなくしてこの吉田という男がここに引っ越してくることになり

 

一緒での生活が始まるようになるのである。

 

このあと段々と思わぬ方向に進むようになっていくことを

 

俺と有子と承はまだ知る由もなかった。

 

つづく

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