マイペ彼女のゆうちゃん
同棲解消して早くも数日が経つ

人間とは恐ろしいもので
この悲しみに慣れてきた自分がいる

悲嘆に暮れ、ため息をつく回数が
少しずつ減ってきて
冷静になりつつある

通勤のときにも
今では周囲を見渡すだけの
余裕を感じる



彼女から言い渡されたリミットは
10日

彼女はその期限内に
結論を出すと言った

今日はその3日目にあたる



ゆうちゃんは超絶マイペだから
こんなふうに期限を決めて
いろいろ真剣に考えることが苦手だ
絶対に



それでも
彼女は頭の良い人だから
自分を追い込んでいるのだと思う


結論を出すリミットが
どんどん近づいてくるから
最近の彼女のラインには
彼女らしからぬ焦りと切迫感と諦めを感じる


いつものゆうちゃんの朗らかさと
いつものゆうちゃんにはない真剣さと


二転三転するラインは
9回ツーアウト満塁の
ピッチャーとバッターのように
一球一球をお互いに見逃すことができない


試合終了が近づく気配も感じながら
それでも逆転を諦めてもいない
ゆうちゃんをラクにしてあげたいけど
簡単には終わらせることができない



人生を捧げて尽くすから
どうか自分との人生を
選んでほしい




その欲求が自分を本当の自分より
物わかりの良い大人に変えてしまう


嘘くささを自分で感じて
彼女にそれを感じさせまいと
耳障りの良い言葉で取り繕って


彼女は天真爛漫だからこそ
真実を見抜く慧眼を持っていて

うわべだけの言葉になびくことはなく
短くとぼけたラインを返すだけ

そして宙に浮いた
ついさっき発した自分の言葉を
彼女の記憶から取り消したい衝動にかられる

あと1週間ですべての決着がつく

彼女の家にすぐに戻れるようにと
リビングに置いたままにした
スーツケースが

今夜もまた
じっとこちらを冷たく見つめている