本当に「ザ・備忘録」みたいなネタです。
かなり古い判例や文献なので、受験生レベルでは常識なのかもしれませんが、恥ずかしながら私は全然知らなかったし、相続人の確定に影響をする論点なので書き留めておきたいと思います。
Facebookのページで関連のリンクを貼りましたが、流れるのが早いので、こちらにも投稿したいと思います。

事例は、下記のような相続関係の場合に“戊”が“丁”を代襲して“甲”の相続人になるかという問題です。

相続関係説明図

 

“丁”が婚姻により“丙”の氏(苗字)を名乗っただけでなく、“甲”と“乙”の養子にもなり、本当の意味での「婿養子」になった感じですね。
ただし、養子縁組前に出生した養子の子は養親との間には親族関係は生じませんので、“戊”は“丁”を介しては“甲”の孫ではありません。
しかし、“甲”の実子である“丙”の子ではあるので、“丙”を介して孫になります。

 

で、代襲相続に関する民法第887条第2項ですが、次のとおり(少し簡略表記します。)。

「被相続人の子が、相続開始以前に死亡、又は相続欠格事由に該当し、若しくは廃除されたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」

 

ポイントは、但書の「被相続人の直系卑属」をどう取るかですよね。
この条文で言うところの「被相続人の子」あるいは「その者」を介した直系卑属でないと代襲できないと読めば“戊”は代襲できないとなりますし。
逆に、系統は問わないけれども、親族関係として被相続人の直系卑属でないと代襲できないと読めば“戊”は“甲”の孫であることは間違いないので代襲できるとなります。

 

大阪高裁平成元年8月10日判決は、「民法887条第2項但書の規定の理由は血統継続の思想と、親族共同体的な観点から云々かんぬん」と難しい理由を書いていましたが、結論としては後者を取っているようです。
これを踏まえて、テイハンの登記研究529号のカウンター相談(単行本版「カウンター相談1」)で、この事例の場合には「積極に解します。」つまり“戊”は“丁”を代襲して相続人となると結論づけています。

 

なお、判例は最高裁判決ではないし、登記研究もカウンター相談なので、法務局の取り扱いでおかしなことを言われる可能性はわずかながらあるのかなという気はします。
これらの文献を提示すれば大丈夫だとは思いますが・・・

 

小鉄とぼの

 

 

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