家の裏手にある駐車スペース
このスペースには、原付き、奥さん・息子の自転車が停めてある.
母屋から駐車場への見通しが悪いので、防犯も兼ねて夜間照明をつけた.
夜間の照明には、太陽光パネルで発電、リン酸鉄リチウムバッテリーに充電した電力を利用しているので、電気代はかからないし、停電にもならない.
周囲が暗くなると自動的に点灯する回路に接続し、庭の照明と一緒に稼働させている.
ただ、駐車場が裏手の家の正面に位置しているので、
夜間、あまり明るい照明をつけ放しにするのは気が引ける.
そこで、普段は薄暗い明るさに設定.
しかし、
自転車カバーをかけたり、番号錠の開閉時には、手元・足元が明るい方が良い.
そこで、
・人が居ない夜間 → 薄暗い照明(常夜灯)
・人が居る夜間 → 明るく照明
をしようと考えた.
これを実現するのは、
「人感センサー」(遠赤外線変動を検知する素子)を利用すれば良い.
手元に、パナソニック製の人感センサー素子を幾つか買ってあったので、
早速、ブレッドボード上で感度や回路のテストをしてみた.
規格表によるとセンサーからの出力は、数百μAしかとれない.
数百μAの出力電流だと、外部装置を直接制御できない.
そこで、この出力電流をトランジスタで増幅し、その電力でリレーを制御できるか試してみた.
仮回路でその制御ができることは簡単に確認できた.
この回路で動作シミレーションをしていて、ふと、思った.
「人が居る間中、ずっとセンサーが感知している保証はない」
つまり、
「センサーが、一旦、人を感知した」後、人を感知しなくなったり、見失ったりしたら、そこで照明が消えて(暗くなって)しまう.
それでは使いにくい.
結局、
1.人を検知したら照明が明るくなる
2.一旦、明るくなったら、30秒〜1分ほど明るい状態を保持
3.人の検知が(数分間ほど)無ければ、常夜灯としての(薄暗い)照明に戻す
の動作をさせれば解決しそうだ.
これを実現するには、ONの状態を伸ばすための "遅延(保持)回路" を追加すれば良い.
つまり、
センサー感知 → ランプ点灯 →(その状態を保持:遅延)→ (一定時間が経ったら)ランプ消灯
の動作をさせれば良いのだ。
一般的には、この「しばらく保持」の部分を担うのは、
一定時間幅の出力を出す発振回路(ワンショットマルチバイブレータ)
を使うのが、昔からの方法.
55年ほど前(小学生だった頃)、トランジスタ2SC372などを2個使った、ワンショットマルチバイブレー回路というのを作っていた.
45年ほど前になると、デジタルICが普及し、この機能を持つICチップが販売された(74HC123).
同じ頃、同じ様な機能を持った専用のタイマーIC(555シリーズ)が開発・販売された(現在でも売られている).
これらを使えば、遅延タイマー回路が容易に実現できる.
それぞれ、一個 60〜150円ほどで買える.
しかし、下宿住まいの今、手元にこれらのTrやICがなかった.
どうしようかと思案した.
(田舎から大阪の部品屋さんまでは結構時間がかかり、半日仕事になってしまう)
その結果、1チップマイコン(PIC)にプログラムをして、その機能を実現させることにした.
PIC(Peripheral Interface Controllerの略: 英国のMicrophip社が開発販売)は、所謂、マイコンチップと呼ばれている素子で、この中に、簡単なPCが詰め込まれているようなイメージの素子.
パソコンのCPUに相当する演算部は、4ビット程度のものから、6、8、12、16ビットと最近は、演算素子のチャンネル数も増えている.
また、このチップの中に、少量のメモリー、A/Dコンバータ、タイマー、基本クロック発振回路を持っているものもあり、それが、一個120〜250円ほどで売られている.
上は、PIC ICにプログラムを書き込むためのデバイスと基板.
PicKit2をUSBケーブルでノートPCに繋ぎ、C言語でプログラムを書いて、PICに転送すれば、遅延パルス発生器が実現できる.
今回は、タイマー機能を実現したいだけなので、安い4ビットPIC 12F678(8ピンのデジタルICタイプ)というのを使った.
回路を色々と検討した結果、シンプルなリレーを介しての制御回路にした.
今回のプログラムは、超簡単で、
入力ピンに(センサーからの)電圧が入る
→ 出力をHighにする
→ タイマーを起動
→ プログラムされた時間が経ったら出力をLowにする
という単純な動作をさせるだけなので、
PICの一つのピンを入力に使い、別のピンを出力にした.
先ずは、ブレッドボード上で、回路の動作テストを行った.
動作は良好だった.負荷のリレーもきちんと動作した.
ここで、
せっかくPICマイコンを使うので、ついでに遅延時間の設定を変更できるような機能を追加してみた.
・PICの空いているピンに、プッシュボタンを追加
・プッシュボタンからの入力 → (押される毎に)タイマーの遅延時間を2倍、3倍、4倍と増やす → 倍率が6倍を超えたら、(元の)倍率1に戻す
さらに、
・遅延時間が変った時は、新たに設定された倍数だけモニターLEDを点滅させる
(実際には、押しボタン内にLEDを仕込み、押しボタン自身が点滅するように作った)
これで、
・人を検知すると、設定した時間だけONを保持
・プッシュボタンを押すと、遅延設定時間を1倍、2倍、3倍、、、5倍、1倍、2倍、、、と変更できる.
・変更があった際は、その倍数分だけ、LEDが点滅する
の動作をする装置が出来上がった.
当初、遅延時間は20秒に設定してあったので、
プッシュボタンを一回押すと、LEDが 2回点滅し、タイマー時間が2倍(約40秒)になった事がわかる.
さらに、もう一回押すと、LEDが3回点滅し、タイマー時間が3倍(約60秒)になったことがわかる.
そして、これを繰り返すと、LEDが4回点滅、5回点滅、6回点滅 した後は、1回点滅 に戻る.
このボタンで、遅延時間が20秒〜2分までを選ぶことができるようになった.
手元にあった万能プリント盤の上に回路を制作.
基板の左半分は使わないので、製作後に金鋸で切断.
また、設置する際の利便性を考え、基盤外部とのやりとりはピンコネクターを使って接続する様にした.
完成したものを先だって取り付けていた常夜灯の電源部分に挿入し、常夜灯の人感センサー制御部分が完成した.
テストをして、当初の予定通りであることを確かめた後、回路部分を防水ケースに収め、電線・配線の防水処理をして作業完了.
これで、奥さんが暗くなってから帰って来ても、自動的に車庫は明るく照明されるから安心して過ごすことが出来るようになった.
また、不審者が勝手に車庫に入ってきた際も、センサーが照明を明るくするので、誰かに見られているという危機感を感じるから、防犯の効果も期待できる.





