空へのあこがれ

 

フライトトレーニング 

 

Flight Plan(飛行計画)

 

航空管制されている空域(クラスA、B、C、D、E空域)を飛ぶ場合、あらかじめフライトプランを提出しておくと、色々と自分の身の安全にも役立つ.

ここで言う所のフライトプランとは、

  当局に提出する「飛行実施計画」を指している

 


自家用パイロットは、もう一つ別のフライトプランも作成する.それは、

  飛行実施計画に沿った飛行そのものの計画で、

 

エンジン始動・タクシー・離陸・上昇・巡航・途中経由地・下降・着陸アプローチ・着陸・タクシー・駐機

の各ステップで其々要する

・時間

・その間に消費する燃料の見積もり

・風の影響の評価とそれに対する補正

を計算し、その飛行計画が適正かどうかを判断する材料にする.

 

また、

これに基づいて、必要な(搭載する)燃料の量や、

何かアクシデントがあった場合の、飛行時間の余裕度や搭載している燃料で行きつけることができる範囲でのダイバート(代変え)空港のリスト・検討と、その空港のスペック(滑走路の長さ、方向、幅、標高等々)の調査・計算なども調べておく.

旅客機の搭載燃料は、飛行に必要と計算された量と法律で決められた余分量を積み込むが、小型機では、(大抵の場合)燃料は満タン(トップドオフと言う)にしている.


 

この表の中に、飛行に関する情報を埋めてゆくことで、飛行予定時間や必要な燃料、飛行方位などが、判ってくる.

初めての場所への飛行などの時は、このような計算を綿密に行い、実際の飛行計画を立てる.

(気象条件は、できるだけ離陸時に近い値を使うため、空白にしておき、出発1〜2時間前の最新の情報で補正を行う)


例えば、燃料に関しては、

・離陸時、エンジン出力を100%近くで数分間運用するので、燃料の消費が大きい(地上付近で、出力100%).

・上昇時、エンジン出力の80〜95%位を使うので、燃料の消費が大きい(消費率は、飛行高度によって違ってくる)

・予定していた高度までの上昇にかかる時間などは、POHに記載されている表から、上昇率などを使って計算できる.

・巡航時の燃料消費は、高度によって違ってくるので、予定巡航高度を決め、その高さでの巡航時の燃費(POHに表が載っている)を算出

・横風、向かい風などでは、対気速度と地表に対する速度が違ってくるので、同じ距離を飛ぶのに、かかる時間を、計算し補正する

などをして、燃料が十分に足りるを計算して確かめておく.


ベストグライド(最大滑空:エンジンが停止した後、グライダーの様に滑空によってたどり着けることができる)の範囲内にある空港などをチェック・リストアップする作業も必要

(最近の最新デジタルアビオニクスでは、GPSでの現在位置から、近い空港をすぐにリストアップしてくれて、その情報は、MFDなどでチェックできる様になってきている)




フライトプラン(Flight  Plan:飛行実施計画

 

フライトプラン(飛行実施予定・飛行計画)とは、飛行機が、いつ、どの経路で飛ぶかについての情報を、航空管制当局に通知するもの.

フライトプランの登録(ファイルすると言うは、FAX、電話(口頭)、PCやタブレット(アイパッド)のアプリケーション(最近は多い)、PCを使ってネット経由で行える.

また、

離陸した後、FSS(Flight service station)を無線で呼び出し、無線でファイルすることも可能だし、内容の変更(予定到着時刻の変更など)も出来る

 

 

ここで大切な事は、Flight Planの登録・届出(ファイル)は「許可」ではなく「(当局への)通知」である事.


航空当局に対して、

誰々が、何時、どの経路で、JAooxx という飛行機を運行しますよという通知が「フライトプラン」

 

・日本の国土(および沿岸の海上)は、すべてがレーダーによる航空交通管制空域(クラスE空域以上)であり、自衛隊の防空識別圏(ADIZ)内でもあるため、フライトプランを提出しないで航空機を運行すると「未登録の飛行機」となり、場合によってはスクランブル(迎撃)の対象となってしまう.

・米国では、レーダーが国土全域をカバーしきれない(クラスG)空域がたくさんあるので、フライトプランは、特に登録しないで、VFRで飛ぶことが多い.

(IFRで飛ぶ為には、フライトプランの提出と、その承認が必要なので、IFRで飛んでいる航空機は、すべてがフライトプランが登録された飛行機となる)

(最近は、モードCトランスポンダーが義務付けられたので、フライトプランを出さなくても、レーダー波が当たると、航空機の登録番号などが、自動的にレーダー画面に出るようになっていて、どの航空機かがわかるようになっている)

 

 

フライトプランの内容

・飛行機の情報(登録番号、飛行機の種類、(メーカー)型式、飛行機の色、飛行機に積んでいる無線機の種類、GPSを積んでいるか?、飛行機のカテゴリー、救命胴衣を積んでいるか?など)

・搭載予定の燃料の量(何時間飛べる燃料を積んでいるか?)

・パイロット情報(氏名、住所、連絡先)

・飛行経路(出発地、経由地、目的地)

・飛行時間(出発予定時刻、到着予定時刻)

・同乗者の人数

などが記載されている.



 

この中に、「航空機の(メーカー)型式航空機の色」と言う項目があり、この項目が、フライトプランを何の為に登録するかの意図が見えてくる.


航空機の色や形が重要となるのは、

・不審機へのスクランブルの際の、航空機の確認に便利

・墜落などの捜索の時の手がかり

・航空機不明などの際の、情報収集の際の、航空機の特徴を表しやすい

などのメリットがあるからだろう.


GPSを積んでいるかについては、昨今、日本では、電波標識(VOR)が(予算削減で)減っているので、GPS上でしか分からない中継点(座標)等があり、GPSを積んでいると、それらを利用したナビゲーションができる.無線機の項目には、トランスポンダーがモードCに対応しているかを記載する箇所もある.

モードCトランスポンダーが搭載されていると、レーダー上に登録番号や飛行高度が表示されるので、管制側が機体の状況を把握しやすい.最近のABS-Dだと(GPSで得た緯度経度・飛行速度・飛行方向などの情報を含むので)さらにもっと良くわかる.米国では、モードCやABS-Dは、もはや義務的に搭載していなければならない空域がほとんどとなった.

 

フライトプランを提出し、これが、航空当局のコンピューターに登録されると、航空管制側で、登録番号(日本だとJAxxxx、米国だとNxxxxx)、出発地、目的地、飛行機の種類、予定経路、予定通過時刻などがすぐに判るようになる.

 

 

クロスカントリー飛行では、自身の安全確保のため、VFRで飛行する時も、レーダーで見守ってもらったり、管制当局からの情報をもらえるメリットがあるので、レーダーフォローイング(レーダーによる追跡)というサービスをリクエストする.

レーダーフォローイングとは、移動中の飛行機を、地上の交通交通管制レーダーで見張っていてもらい、他の飛行機とぶつからないように、レーダー上での交通整理をしてくれるサービス.同時に、パイロットに対して、航空交通状況のアドバイスもしてくれる(そちらに向かっている飛行機があるとか、500ft上空を横切る他機があるとか、、、、)


幾つもの管制空域を渡り歩く時、それぞれの管制に次々とハンドオフ(引き継がれて)されて行くのだが、フライトプランを提出してあると、こちらの情報がきちんと伝わっているので、一々、管制とコンタクトした時に、「何処どこにゆくフライト中」とかの情報を伝える必要がない.



フライトプラン利用で注意する点:

・フライトプランは、出発予定時刻を30分過ぎても、ファイル・オープンのリクエスト(離陸の宣言)がない場合自動的に抹消される

・フライトプランで宣言した到着予定時刻を30分過ぎても「到着フライトプラン・クローズ)の連絡」が無いと、捜索予備段階となる.

・フライトプランで宣言した到着予定時刻を1時間過ぎても「到着」の連絡をしないと、到着予定地、経由地などへの確認がされ、到着が確認されなければ、遭難と見なされ、捜索開始の体制が取られる.

・捜索は、レーダー等での追跡・航跡の確認、飛行予定ルート沿いの他の航空機などへの問い合わせ・情報の収集、無線での呼びかけ、などから始まり、飛行予定経路上の警察などからの(墜落、不時着等の)情報等も集められる.

手がかりが得られない時は、空からの捜索なども開始される.

 

フライトプランを登録するというのは、自機に万が一があった時の救助の手配が自動的に行われるという担保でもある.

 

これら事情があるため、フライトプランは、

・(日本では)フライトプランは、必ず、フライト前に通知する(全空域がクラスE以上だから).

・フライトプラン提出後、実際の出発時刻が、フライトプランに記載した出発予定時刻より30分以上遅れそうな時には、電話や無線などで、新たな出発予定時刻を伝える

(プラン全体の時刻が、その分、後ろにずらしたものとして運用される)

 

フライトプランのオープン(有効化)

・日本では、フライトプランオープンのリクエストはした覚えがなく、管制とコンタクトしたら、自動的にオープンされるようだ.

・米国では、フライトプランは、恣意的に「(ATCに対して) "324LT, request open our (or My) flight plan, 324LT"  などと、フライトプランを開始する宣言を行わなければならない.

この宣言は、ATCとコンタクト中であれば、ATCに対して行い、ATCにコンタクトしないで、自由に飛んでいる時は、近くのVORを経由(中継)して、FSS(Flight service station)を呼び出して、FSSを通じて、ファイルをオープン(有効に)してもらう.

 

フライトプランのクローズ(終了)

・目的地に到着した時、(その空港を管轄している)航空局に対して、「到着した(フライトプランクローズ)」旨の連絡をする.

(これをしないと、遭難の扱いとなり、捜索が始まってしまう

・フライトプランのクローズは、混雑していない(例えば、羽田や成田などの忙しいタワーではない、田舎の空港の)タワーやATCなどだと、着陸寸前や着陸後に、無線でフライトプランクローズの連絡をすれば、フライトプランクローズ手続きをやってくれる.

 (例: ATCやタワーに対して、着陸数分前になり「XX空港インサイト、後は着陸だけです.ありがとうございました.フライトプランクローズお願いします」など)

  着陸した後だと、タワーかグランドに「xx空港に着陸しました.フライトプランクローズお願いします、JA4079」というように連絡をする.

 

(例:(実際の無線交信では)新島空港の場合、着陸後、滑走路から誘導路に出たところで、

無線で、  "Nii-jima remote、JA4079 Clear Ranway 09, request close our flight plan, JA4079" と連絡すれば良い

   (新島リモート、JA4079 です.滑走路から出て、滑走路を空けました.フライトプランの終了をお願いします) 


その他、

  航空局の空港事務所に直接電話してクローズしてもらう

(阿見飛行場でのフライト時は、成田空港航空局か百里基地タワーのどちらかに直接電話を掛けて、フライトプランクローズの連絡をしていた).

 

フライトプランは、飛行計画そのものだけではなく、それをきっかけに、飛行援助組織との関係を作るためのきっかけとなっている.

飛行機は、一旦地上を離れてしまうと、孤立無援なので、無線を通じて、地上の支援を受けられる状況にしておいた方が、何かトラブルがあった時の保険として安心できる.