もしもあの月が太陽で
僕ら沈む海の底
吸う空気は水の味
泳ぐことのできない海底で

もしもあの月が太陽で
暗闇 光の届かない海底
僕らいつか泳いで
たどり着けると信じているなら

空なんて遥か遠い場所
飛ぶ鳥はきっと輝く魚
知らないほどに僕ら
冷たい海の底に居る


本当はもっと泳げたんだ
本当はもっと上れたんだ
なのに沈むことが容易いと
気付いてしまったあの日から

本当はもっと届いたんだ
太陽が僕ら 照らしたんだ
涙あふれても水に消えて
気づかれない日々


-

もしもあの太陽が地上の
意味のない争いの火種なら
海底にいる僕らは
勘違いをしているだけ

もしもあの太陽が地上の
尊い命の叫び声
僕らただ遠い場所で
他人事のように傍観してるだけ

空なんてほんとは
息苦しいかもしれない
あの太陽に近づけば
どこかに行けるかもしれない


本当はもっと泳げたんだ
本当は気付けたんだ
今海底に居る僕ら
誰かの消える涙も知らず

本当は届いたんだ
泳いで渡れる空なんだ
だけど僕らは今もまだ
ただ届かぬ地上を眺めているだけ









帰り道、月があって、
海の底に居たら太陽ってこのくらいなのかなぁ、と思ったのがきっかけ。
もしここが海底で、あそこが地上だったらなぁ、
そんなことをぼんやりと考えてました。


by伊南

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