ニュースを見て
これが悪い夢であってほしいと
何回も願いました
11日。
伊南はクラスメイト半分と教室にいた
もう半分のクラスメイトは新しくできた実習室の見学に行ってて
先生はいなくて
いつも通りわいわいやってた。
そんなとき地震がきたんだ
最初はどうってことないと思ったの
だけど揺れは徐々に激しくなって
揺れが収まる気配もなくて
避難訓練なんかじゃない
「階段に気をつけて避難して!」
先生の慌てた声が放送で流れた
テレビが大きく揺れていて
「テレビに近づくな!」
ってsinくんが叫んでた
中庭にでて、
調理科のクラス棟のガラスが光を乱反射させてるのを見た
「校庭に!早く!」
柚衣もひとみもユリカも彩乃もいない
リエちゃんと手をつないで急いで校庭に出た
校庭に1時間は避難してた
みんな携帯を見て
あらゆる情報が飛び交った
でも正確な情報はほとんどなくて
最初は震度5弱だとおもってたんだ
震源地は宮城県
それくらいしかわからなかった
津波も50cmの津波観測
そんなレベルだった
頭上でヘリコプターが飛んでた
電話は繋がらない
mixiだけが情報源だった
麻衣から一瞬だけ電話がかかってきた
すぐ切れた
余震は続くし
電車が止まった
信号が止まった
塀に囲まれた校庭からは本当なのかもわからなかった
荷物を持って再び校庭に避難した
今日バイトあるのかなあ
とか
呑気なこと考えてた
帰るとき、信号が止まってるのを見た
警察とかボランティアの人が手信号で
道を整備してた
マックに寄ろうと思って
スーパーを覗いたら真っ暗でびっくりした
地震のため休業します
貼り紙がされていた
マックの人達は見当たらなくて
どうすればいいの?今日バイトは?
って思ってた
お父さんの仕事場に行ったら
お父さんに早く家に帰れって言われた
食料も買ったからって
なにがそんなに大変なのかよくわからなかった
伊南の住んでる地区は大きな川を渡った向こう側なんだけど
川を渡ったら
別世界のようだった
壁が剥がれて
ガラスは割れて
屋根が崩れて
塀が倒れて歩道は進めなかった
市街地とは違いすぎる光景に
ただ唖然とした
辺りは既に暗くなってた
家に帰ると妹が1人でいた
割れた皿が家の前で山になってた
凄まじい音を立てて玄関を開けたら
なにもかもがぐちゃぐちゃ
CDは散乱してて
畳の部屋に布団が適当に並んでた
電気がないからなにもできないと言った
水は濁ってた
携帯の充電は既に消費されてて
伊南は情報を集めるのをやめて電源を切った
世の中が一体どうなってるのか
さっぱりわからなかった
家族4人で集まって寝た
余震が続いた
固い床に制服のセーターのまま横になった
どうなるの?
そう思った
月が明るかった
翌日新聞がきて
初めて地震の規模がわかった
なにこれ
同じ日本で起こってる光景とは思えなかった
10時に電気がきた
水道も綺麗な状態で
お風呂に入ることができた
テレビをつけると...
今生きてることがどれほど幸せなことなんだろう
電気があるところで
布団にはいって寝られること
携帯を充電して
テレビを見て
温かいごはんを食べること
どれほど幸せなことなんだろう
1日で片付けることができた場所です
たいしたことない
それと同時に
わたしたちはどれほど無力なんだろうと思った
ただ1つでも多くの命が助かってほしいと
願うことしかできないのです
救援物資をあげたり
救助をしたり
一切できない
ただテレビのニュースを見て
ただ自分のことを守るだけで精一杯になってるのです
無力だ。
テレビにかじりついて
次に放射能を浴びるのは自分じゃないかと怯えてるだけ。
警察の方
レスキュー隊の方
消防にあたってる方
原発で危険と隣り合わせで働いてる方
家族の安否がわからない方
街が波にのまれてしまったかた
被災地の全ての方
願うことしかできなくてごめんなさい
だけど、誰もが強く思ってる
助かってほしい
生きてほしい
そして光を見失わないでほしい
伊南も願ってます
願うことが力になると信じています
大切な人を守りたい
大切なヒトを守りたい
by伊南
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