にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学・思想情報へ

(43 43′22)

●ヒトラーの所為少年団

――爽々しく、且つ空虚な機械人間像――

 試みに、日曜・祭日の銀座街頭を漫歩して見給へ。何といふ多数の青年学生であらう。映画館に、喫茶店に何といふ数多い学生が、蒼白い相貌を曝し末梢的享楽に無為の消困をしてゐる事であらう。

 

 この言葉は、近藤春雄という人の書いた『ナチスの青年運動』の中にある。「……そうした生活の習性が、無気力無反省の小市民を成長させ、社会人として生活するに至っても、尚惰性として残存し、遂末梢的な雜知識から半可通な文化意識を氾濫させ、天晴れ近代的と自負する、その醜状放任すべきであらうか」とも慨嘆している。

 

 ナチスが既に政権を握ってから、この時は数年経過しているが、日本は未だ第二次世界大戦に突入していない頃の本である。著者は既に十五歳以上の青少年が、ヒトラー・ユーゲントに入団する事を義務付けられている頃に、ドイツに滞在した。

 

 ドイツの少年少女たちが、「ほんの気楽な逍遙でも必ず一列縦隊に隊伍を整へ、必ず唱歌を合唱しながら軽快に歩調を合わせて歩いてゐる」のを見て、「爽快な印象を与へられた」ことの反動として、日本の無気力に生活を送っている現況を、嘆いているのである。

 

(43 43′23)