患者Tさんは
C型肝炎、肝硬変から
肝臓がんへと移行していった
定期的に外来通院されていた
診察が終わると
私の職場に寄って
『ゆう~元気か!ゆうがイキイキ働いてるの見ると俺も元気になるよ!』と
2、3分会話して
『じゃあな。また来るよ!』と帰って行った
誕生日にはプレゼント持って…
小さな箱にはピアスが入っていた
Tさんには
奥さんもいる
娘さんやお孫さんもいる
『妻とはもう長い間、体を合わせていない。寝る部屋も別なんだ。ゆうを抱きたいけど、俺は病気だしな…』
そう話すこともあった
せつなくなった…
病気だから…
確かに
移るかもしれない病気
でなかったら私は抱かれていたかもしれない
でもTさんは
毎回診察のたびに、私の職場に寄って行った
毎回 2、3分の立ち話だけで笑顔で帰るTさん
そして
ある日、Tさんは病院のパジャマ姿で現れた
『抗がん剤治療するんだ』と言った
外科病棟へ入院していた
入院中だから
いつでも会いに来れる
度々、Tさんは散歩がてら会いに来た
だんだん痩せて
元気なくなっていくのが目に見えてわかった
そして
会いに来なくなった…
電子カルテで
入院している部屋がわかる
状態はわからないが
ある日、個室に移動していた
そして、数日後
名前がなくなっていた…
とうとう
その日がきた
いつも笑顔で励ましてくれたTさんは
この世からいなくなってしまった…
最後に声をかけたかった
そんな別れだった