
花組、あきら(瀬戸かずや)主演、「アイラブアインシュタイン」。
今回は先生に触発されて、いつもより「演出家目線」でお送りします。
「分かりにくいっちゅーねん

あ
後、いつもの様に激しくネタバレです。ご注意ください。
演出家で脚本家の谷貴矢先生デビュー作です。
ご挨拶に「根っからの文系脳の私」と書いてらっしゃいますけど。
「違うと思うなぁ~」と、いい意味で感じた作品でした。
幕開き、こう……高低差のあるセットで、機械の象徴である歯車が沢山レイアウトされて、そのセットの縁に電飾を付けて、歪なハートを象ってるのが、面白いなぁと感じました。
モノローグ的なオープニングで、主要キャストが一人ひとりサス(照明)で浮かび上がってセリフを言っていくのも、なんだろう……とても懐かしいと、感じました。
ちょっとすると、「あ、キャラメルBOXの芝居みたいや」と、思い至りました(笑)
なんだろう……全然話は違うけど、「銀河旋律」「広くて素敵な宇宙じゃないか」とか、「クロノス」思い出した。
あ、気になる方は、探してみてください。オススメです(笑)
ちょっと脇に逸れますが、宝塚とキャラメルの大きな違いは、(個人的印象ですが)コヤのサイズや動員数以前に、プロ野球の様な「長期戦故の安定感」と、高校野球の様な「短期決戦の密度の濃さ」と考えています。
宝塚は、ムラと東京合わせて二ヶ月間、実に100公演以上、同じクオリティーのものを上演するので、もちろん、アドリブやトラブルや成長はありますが、「何度リピしても安心」というハイレベルな安定感を感じます。
その上、きらびやかで豪華です。現実を忘れてしまう所も凄いですよね。
キャラメルは、コヤも小さい(宝塚と比較すれば)ですし、お客さんもリピする方が少ないのか、ぐっと芝居を集中して観ている印象があります。演者も、「次の公演大丈夫?」という程汗かいて涙流して、走り回っている印象があります。そして、キャラクターたちが、身近です。近所にいそうな人たちです。その人たちが、似たような悩みで走り回って悩みまくってるのが、切ないんです。
……何が言いたかったかといいますと、「この作品は、宝塚のいい所と、キャラメル的要素が上手いこと融合してるぞ」って事です。
ま、平たくいえば「大変、私好みでした」って事です(爆)
で。話を戻します(笑)
セット。
歪なハートは、四分割出来てシモテ奥を残して稼働式でした。
シモテ前、カミテ奥は吊りもので、場面ごとに照明位置まで上がったり下がったりしてました(その隙間縫って配置された照明も、秀逸でした!)カミテ前のセットは、場面ごとに半回転させて舞台の印象を変えたり、アクトスペース増やしたり、大道具仕込んだりと、なかなか面白い使い方をしていました。
シモテ奥のセットも、ハートになる吊りものとは別のを下ろして部屋の壁(と出入口)にしたりと、もの自体は点数少ないんですが、とても凝った使い方をしているなと、感じました。
そして、ホリ(ホリゾント)の辺に灯体(照明)転がしてて、その前に柵のようなセットがあって、その柵にも歯車が配されていました。
やー、面白いし、センスいい!
私、このセット、凄い好きです!
後に、この歪なハートも伏線なのかと思うところがポロポロ出てくるんですよね。
装置は國包洋子先生。てっきり外部の先生だと思ってたのですが(何気に失礼)、座付きでこんな素敵なセット作れるなんて、素晴らしいです。
最近では、(外部の)松井るみ先生が好きなので、とても期待出来ます。
お衣装。
設定が「近未来ではなく、アンドロイド技術が発達した、パラレルワールドの世界(20世紀半ば)」という事を考慮して、「ちょっと昔っぽいけど、新しい」って感じが出ていて、素敵でした。
あきら演じるアルバートの上着は、パッと見「デザイン性の高い白衣」なんですけど、素材がレザーっぽくて、どちらかというとフロックコートっぽい扱いなのかしら?と感じました。(ちょっと時代逆行しすぎ?)
めちゃくちゃ凝っていて、加藤真美先生の本気を感じました。
ダブルヒロインの、ミレーヴァ・べーちゃん(桜咲彩花)と、エルザ・しろきみちゃん(城妃美伶)は、対照的に寒色系のレースたっぷりドレスと、暖色系の膝丈ふんわりワンピ。
二人とも、レース使いがキレイなお衣装で、お裾が同じ様にスカラップ(半円を連ねた様な波形の縁)になってる。
エルザは、コルセットとオーバースカートがセットになった様なものを着ているんですが、中に歯車の刺繍が覗いてる!
なんて面白い!
そして、ミレーヴァとエルザのリボンが、全く同じなんですよ(色違い)。ブローチは違うけど、とっても似ているのを使って。
系統違うけど、シンクロする所もあるという……。
……なるほど……なんて、暗示的……。最後まで観たら、「はぁ~!」って、なっちゃいます。
マイティ(水美舞斗)演じるトーマスは、オッドアイの美青年!碧眼側に傷まであって本当に格好いい。色々フラグ立ちまくりですな。
しかし、宝塚も顔に傷ある役普通になってきましたね。
彼のジャケットが、「シャングリラ」でゆーひちゃん(大空祐飛)が着てたやつみたいなデザインで……。一人ちょっとアウトローで格好いいです(笑)
時空が違っても人間の考える事は変わらんか……って切なくなる「国家人間主義労働者党」ってナチス的な団体の党首は、「うっ!」て仰け反る程に格好いい軍服の、アレンくん(亜蓮冬馬)。
党員達はフロックコートに、腕章。
……やっぱり20世紀半ばより、お衣装はちょっと前な感じですね。
女性党員の軍服も、ステキです(笑)
アンドロイドが、一見(人間と)区別付けづらいという設定ですが、髪色が白っぽかったり歯車のデザインが入ったお衣装だったりと、ちょっとわかる感じにしてるのも面白いです。でも、みんながみんなそうじゃない(召使たちには例外あり)ってのもまた面白い。
加藤先生、素晴らしいです。
曲は、太田(健)先生!とても素敵な曲を作られるので、大好きな先生です。
そして、今回「おおぅ!」となったのが、振付のKAORIalive先生。
宝塚とは雪組の「るろうに剣心」がはじめましてでしたっけ?
とにかく独特の世界観を持ってらっしゃる先生で、「ダンスの花組」と組んだら、こーなりますかって、ワクワクしました。
体幹とか、筋力とか、ビビります(笑)
貴矢先生の、自身の作品に対するこだわりと意気込みを、このスタッフの先生方見ただけでわかるというもの……。
とても素晴らしかったです。
で。
この世界観の中で繰り広げられる
(正しく)SFな話が……なんとも……。
「AI」が「愛(Ai)」の感情と「I(自我)」を持つ事が出来るかって話。
……だけではないです!
サイエンスなのに、ハートフル。
無機質なのに、あったかい。
悲しいのに、幸せ。
やたら、科学者だなってセリフがあったり……てか、専門用語まではいかないけど、なかなか宝塚で耳にした事なさげな単語が、新鮮でした(笑)
こういうのって、上手く使わないと「理屈っぽく、押し付けがましく」なるから、さじ加減が難しいですね(失敗例→ダー〇シ先生、〇純先生(笑))
アンドロイドの設定も、個体差(機種差?)がある様で、言動が人間に近かったりそうでなかったりする。
プログラムされた以上の感覚はないから、「花が萎れている(きれいではない)」的なものは分からなくて、「生けて決まった時間までは置いておく」って行動したり、コーヒーのお砂糖を「ストップ」という指示が出るまで、延々と入れ続けたり(笑)
人間に逆らわない様にプログラムされてるので、理不尽な事されても嫌といえなかったり。
押し付けがましい説明セリフなく、「あぁ、そうだろうな」とわかったのも良かった。
主役のアルバートは、大科学者なのに表舞台には出ず、隠居生活を送っていて、友人のトーマスだけが知っている場所に、召使アンドロイドたちと暮らしている。
ってとこからはじまる。
よくある「頭いいけど偏屈オヤジが、無邪気な少女(アンドロイド)と暮らす事になって、生活をかけ回されつつも、彼女の存在を大切なものに感じるようになる」とかって話かな?という、私の浅い予想を、これでもかって位に突き放して(笑)、びっくりする様な展開を見せる。
アルバートは記憶喪失で(だけじゃなくて)、
ミレーヴァはアルバートの妻で幽霊で、
エルザはアンドロイドらしくないアンドロイドでミレーヴァになんとなく似てて、
ヨーゼフ(レオ)は元科学者で物騒な政党の黒幕で、
トーマスはアルバートの親友で義弟でめっちゃキーパーソンで。
あぁ。ネタバレ注意とか書きつつ、一幕終わりから二幕頭は、(CSとかで)見てびっくりして欲しいっ!
あまりの事に、鳥肌立ちましたもの!で、(一幕の)幕が降りた途端、「なにこれ、めっちゃ面白いんやけどー!」と叫んでしまった位なので!
あ、二幕は、結構ハンカチ握りしめたままでした。
辛くはない、温かい涙が溢れる感じです。
アルバートとミレーヴァ。
アルバートとエルザ。
アルバートとトーマス。
アルバートと召使たち。
アルバートとヴォルフ。
アルバートとヨーゼフ。
ミレーヴァとエルザ。
ミレーヴァとトーマス。
ミレーヴァとヴォルフ。
エルザとヨハン。
エルザとアンドロイドたち。
ヨーゼフとヴォルフ。
それぞれの関係、それぞれの思い、それぞれの愛。
縦糸と横糸がこんなに色々あるのに、細かく織られてて、滑らかでキレイな作品って凄いと思う。
「処女作だから」って書いてしまったらそれまでだけど、本当によく考え尽くされた作品だと感じました。
そうだ。
こういう作品書くには避けて通れない、「鉄腕アトム」。
ヨーゼフ・じゅんこさん(英真なおき)の中に一番感じました(あ、ちょっと違うけど)。
理系の「研究大好き」な人が、その「研究」対象として「愛」というものを見たら、こんな結果が出ましたよー。的な、試しにラブストーリー書いたらこんなになったよ。的な、
ついでに人間愛とか親子愛とか、姉弟愛とかも入れちゃいましたーって、そんな詰め込んだ割には、理路整然としたさっぱりスッキリした(褒めてますからっ!)印象を受けた作品でした。
本当に面白い!
最近デビューされた先生方は、皆さん個性的な作品作りで、……まぁ、クラシックな物を好まれる方にはアレかも知れませんが……、これからの100年(観られるのは半分も無いけど)楽しみだなと、ワクワクさせてくれる方が多いと感じます。
これからの宝塚は、捨てるものと残すものの選択を間違えずに、護りに入らず果敢に攻めて行ってほしいと思います。
ま、一観客、一ファンとしては、「お金出して観てよかった!」と思える作品を沢山出して欲しいと思います。
新しい人材を、無駄にすること無くしっかり育てて、次代に繋いで行けるように。
生徒だけでなく……ね。
早くも次回作が楽しみになった、脚本家が出てきて、嬉しかったです。
はっ!
またキャストの感想書けてない

が……頑張ります……。

このフォト、めっちゃ好きです!