ご機嫌いかがですか?


さて、本日は下記の通り

 

▪️知識編


⚫︎民訴法8

弁護士である訴訟代理人の訴訟代理権は制限することができません(553項)。

しかし、訴訟の帰趨に直接関わるような一定の事項については、特別の委任が必要とされており、訴えの取下げは特別授権事項です(5522号)。

特別の委任を受けていない代理人が請求の一部取下げをしたとしても、その取下げは無効であり、依然として当該裁判所に係属していると解されます(最判S30.7.5)。

なお、5521号に特別授権事項として「反訴の提起」が挙げられていることから、包括的授権事項である「反訴」(551項)とは、相手方の提起した反訴に対する応訴のことを指すと解されます。


⚫︎刑訴法2

2372項は「告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。」と定めています。


⚫︎民法4

失踪の宣告後、取消し前に善意でした行為の効力は、取消しによって影響を受けないとされています(321項後段)。この場合の善意は、当事者双方が善意である必要があると解されています(大判S13.2.7)。

設問の場合、Bが悪意であるため321項後段の適用はなく、Aは、Cに対し、当該不動産の返還を請求することができます。


⚫︎刑訴法36

殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役であり、891号に該当するため、権利保釈は認められません。(なお、条文は「犯したものであるとき」と規定されていますが、これは現にそのような罪の訴因によって起訴されていることを意味します。)

しかし、裁量保釈(90条)については、諸事情を考慮し、適当と認めるときに保釈を許すことができます。すなわち、権利保釈除外事由があっても、裁量保釈を認める余地があるということになります。


⚫︎憲法33

いわゆる都教組事件(最大判S44.4.2)においては、設問のように述べられ、被告人の行為は刑罰をもってのぞむ違法性のある行為ではないとして、無罪とされました。

しかしその後、いわゆる岩教組学テ事件(最大判S51.5.21)において、争議行為を違法性の大小で分ける都教組事件の解釈は変更されています。したがって、設問は誤っているといえます。

 判例 最大判昭和4442日 都教組事件

「地方公務員の具体的な行為が禁止の対象たる争議行為に該当するかどうかは、争議行為を禁止することによつて保護しようとする法益と、労働基本権を尊重し保障することによつて実現しようとする法益との比較較量により、両者の要請を適切に調整する見地から判断することが必要である。そして、その結果は、地方公務員の行為が地公法三七条一項に禁止する争議行為に該当し、しかも、その違法性の強い場合も勿論あるであろうが、争議行為の態様からいつて、違法性の比較的弱い場合もあり、また、実質的には、右条項にいう争議行為に該当しないと判断すべき場合もある」

 判例 最大判昭和51521日 岩教組学テ事件

「争議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して、前者のみが同条同号にいう争議行為にあたるものとし、更にまた、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為についても、いわゆる争議行為に通常随伴する行為は単なる争議参加行為と同じく可罰性を有しないものとして右規定の適用外に置かれるべきであると解しなければならない理由はなく、このような解釈を是認することはできないのである。いわゆる都教組事件についての当裁判所の判決・・・は、上記判示と抵触する限度において、変更すべきものである。」


⚫︎行政法2

※ 判例は、「公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げない」としています(最判S51.12.24)。

そして同判例は、記述エ同様の事案において、「黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の対象となりうる」としているため、公用廃止決定がなくとも、公用制限を伴わない本件土地所有権を時効取得するものといえます

※ 施設の設置許可の取消しを求めることなく、施設の操業を差し止める請求は、行政処分が取り消されるまでは有効として扱われる(公定力がある)ことと矛盾しないかが問題となり得ます。

判例は、原子炉の設置許可の無効確認訴訟の中で、それとは別に提起されている人格権に基づく原子炉の運転の差止め請求訴訟が許容されることを前提としている判示をしています(最判H4.9.22)。人格権に基づく差止め請求(民事訴訟)と設置許可の無効確認訴訟・取消訴訟(行政訴訟)とは理論上切り離された請求であると考えられます。

この判例の趣旨からすれば、記述ウにおいて、周辺住民Hは、施設設置許可の取り消し訴訟を提起することなく、人格権に基づき産廃業者Fを被告として操業の差止めを求める民事訴訟を適法に提起することができるといえます

⚫︎民法42

詐害行為取消請求は、受益者だけでなく転得者に対してもすることができますが、転得者に対して請求する場合は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができることを前提として、請求を受ける転得者を含め、それ以前の転得者全てが、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていることが必要です(424条の5)。

したがって、転得者のひとりであるCが善意である場合、それ以降の転得者であるYに対して、詐害行為取消請求をすることはできません。


⚫︎刑法81

乙は丙に、犯人隠避を教唆しているといえます。このような場合になお、犯人の親族である乙に105条が適用されるかが問題となります。なお、この点について直接判断した判例はありません。

105条は、期待可能性が少ないことから、裁量的免除を認めるものです。そのため、他人を利用してまで証拠隠滅等を行うことは、もはや類型的に期待可能性が少ないとはいえず、105条の適用は無いとするのが有力説です。

なお、105条が必要的免除であった時代の判例ですが、親族が他人を教唆して犯人を隠避させた場合には、犯人隠避教唆罪が成立する、すなわち105条の適用は無いとした判例があります(大判S8.10.18)。この見解からすると、上記有力説と同様の結論となります。


⚫︎民訴法2

訴訟代理人の陳述について、57条は「訴訟代理人の事実に関する陳述は、当事者が直ちに取り消し、又は更正したときは、その効力を生じない。」と定めていますが、法定代理人についてそのような規定はありません。


▪️キーワード編

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