ご機嫌いかがですか?

色々と予定通りにはいかないものですね…。


さて、本日は下記の通り

 

▪️知識編

⚫︎民法20


二重譲渡と時効取得の問題です。162条は、取得時効の要件として登記を要求していませんが、一定の場合には、取得時効を主張するためには対抗要件(登記)が必要であると解されています。

時効完成後に現れた承継人との関係では、登記が無ければ時効取得による所有権の取得を対抗できません。時効完成時を基準に、二重譲渡が行われたと考えるとわかりやすいでしょう。

したがって、XYに対し、甲土地の所有権の確認も移転登記も求めることができません。

 判例 最判昭和411122

「時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもつてこれに対抗することができる」


民法33

抵当権消滅請求(379条)をすることは抵当不動産の第三取得者に限られており、保証人は抵当権消滅請求をすることはできません(380条)。

保証人は保証債務を履行することで、抵当権を消滅させることができ、抵当権消滅請求という手続きは不要で、当然に消滅することになります。


⚫︎商法12

いわゆる事後設立に関する規定(467条1項5号、309条2項11号)は、設立前に同様のことを行えば財産引受け(28条2号)として定款の記載が必要であるなどの規制があるところ、財産の引受け時期を成立後にずらすことによって、このような規制を免れることを防止するためのものです。

もっとも、平成2年までは事後設立についても検査役の調査が必要でしたが、迅速な経営が妨げられるなどの理由から、現在は、事後設立に対する検査役の調査は不要です。


⚫︎民訴法32

請求の放棄・認諾は当事者が訴訟物について自由に処分できる事項でなければならないと解されています。

人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法266条、267条の規定が適用されないため(人訴19条2項)、請求の放棄・認諾・和解ができませんが、離婚と離縁に関しては例外的に放棄・認諾・和解ができるとされています(人訴37条、44条)。


⚫︎民訴法46

支払督促は、給付訴訟によることなく簡易迅速に債務名義(396条)を取得する手続であり、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申し立てることとされています(383条1項)。

訴えに関する規定が準用されますが(384条)、債務者を審尋しないで発することから(386条1項)、債権者の提出した証拠によって、「請求に理由が無いことが明らかなとき」(385条1項)に該当しなければ、支払督促が発付されることとなります。債務者への手続保障として、督促異議申立てをすることができます(390条、393条)。


⚫︎行政法2

※ 判例は、「行政処分は、たとえ違法であつても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有する」としています(最判S30.12.26)。また、「その違法が重大且つ明白である場合の外は、これを法律上当然無効となすべきではない」(最大判S31.7.18)と判示していることから、行政処分の違法が重大かつ明白である場合、法律上当然無効であり、取消しを待たずにその効力を有しないと解されています。

※判例は、争訟手続による終局的解決がなされていない買収計画および売渡計画について、「買収計画、売渡計画のごとき行政処分が違法または不当であれば、それが、たとえ、当然無効と認められず、また、すでに法定の不服申立期間の徒過により争訟手続によつてその効力を争い得なくなつたものであつても、処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、自らその違法または不当を認めて、…これを取り消すことができる」としています(最判S43.11.7)。


⚫︎民訴法40

同時審判の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければなりません(412項)。

すなわち、訴訟提起の時に複数の被告を相手方にして同時審判の申出をすることもできますし、複数の被告に対し別訴を提起し、その後手続が併合された後に申出をすることもできます。

なお、同時審判の申出を撤回しても被告に不利益は無いため、控訴審の口頭弁論の終結の時まではいつでも撤回することができます(規191項)。


⚫︎刑法2

記述1の平成2年決定のとおり、違法な薬物類であるとの認識があれば、故意があったと認められることになります。

記述5のように、「麻薬である」と考えていたとしても、これは覚せい剤を含む違法な薬物類であるとの認識があることになるため、客観面における覚せい剤であることについての故意が認められることになります。そうすると、覚せい剤の輸入罪と麻薬の輸入罪の法定刑が同じときには、客観的に結果を引き起こした覚せい剤輸入罪が成立することになります。

下記昭和54年最決は、本小問とは逆に、覚せい剤だと思って麻薬を輸入した事件で、客観的に結果を引き起こした麻薬輸入罪が成立するとしています。

したがって、記述5は正しいといえます。

 判例 最決昭和54327

Xは、営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類である粉末を、覚せい剤と誤認して本邦内に持ち込んだとされた事件。

「両罪は、・・・その余の犯罪構成要件要素は同一であり、その法定刑も全く同一であるところ、・・・この場合、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合つているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではない」

として、麻薬輸入罪の成立を認め、同罪の刑で処断するとしました。


⚫︎民法32

Xのための1番抵当権が設定されたとき、甲土地はY所有、乙建物は他者所有だったことから、法定地上権が成立する要件を満たしていません。しかし、その後乙建物もY所有となり、Zのための2番抵当権が設定されたときには、同一の所有者に属することから法定地上権が成立する要件を満たしていることになります。このような場合に、法定地上権が成立するかが問題となります。

判例は、法定地上権は成立しないとしています(最判H2.1.22)。その理由としては、土地の1番抵当権を受けたXは、法定地上権の制約を受けない土地の担保価値を把握していたはずであるため、仮に法定地上権が成立するとすると不測の損害を被ることを挙げています。

また判例は触れていませんが、Zについては、自身の抵当権設定時に要件を満たしていた以上、法定地上権が成立する可能性があったといえ、法定地上権が成立しなかったとすれば利益を得ることになります。判例は、土地の2番抵当権者に不測の利益を得させてしまうことより、1番抵当権者に不測の損害を与えてしまうのを避けることを優先させたと考えることもできるでしょう。

なお、建物に抵当権が付された場合(大判S14.7.26)とは結論が異なりますので注意しましょう。また、本問の状況に加え、X1番抵当権が設定契約の解除により消滅した後、Z2番抵当権が実行された場合には、法定地上権が成立します(最判H19.7.6)。この場合には本問のXのような不測の損害を被る者がいないため、原則に立ち返るものといえます。

 判例 最判平成2122

「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。」

「けだし、民法三八八条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。」


⚫︎民法6

※ 判例は、法定相続分を無視し、単独所有権移転登記をした場合、他の相続分の持分に関する部分は無権利の登記であるとしています。そのため、そのような単独所有権移転登記をした後、当該不動産を取得した者は、無権利の部分については所有権を取得し得ないものといえます。

記述オにおいて、Aから甲土地を買ったBと、Aの相続人であるCから甲土地を買ったEとは、Cが有効に処分し得るCの持分2分の1については、対抗関係に立ちます。そのため、この部分については、互いに登記をしなければ所有権を対抗できないこととなります(177条)。そして登記を経ているEは、確定的に所有権を取得したものといえます。

他方で、甲土地のDの持分2分の1についてCは無権利であるため、Eはその部分について所有権を取得していません。そのため、この部分については、Bと対抗関係に立ちません。

以上のとおり、EはDの持分2分の1の限度ではBに対抗することはできないため、BはEに対し、2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができます。したがって、記述オは正しいといえます。

 判例 最判昭和38222

「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうる」「けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」


※強迫を理由とする取消し(961項)により、甲土地の所有権はAへと復帰しています。しかし、その後に現れた第三者であるCに対し、Aがその復帰した所有権を主張するためには、対抗要件の具備が必要と解されています。Bを起点として、Aへの物権変動とCへの物権変動という二重譲渡類似の状況と考えることができます。

したがって、BからCへ所有権移転登記がされているため、Aは復帰した所有権をCに対抗することができず、その結果、CはAに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができます。


▪️疑問編

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