ご機嫌いかがですか?


さて、本日は下記の通り

 

▪️知識編


⚫︎刑法76

支払用カード電磁的記録不正作出罪の客体は、「クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するもの」と、「預貯金の引出用のカード」です(163条の21項)。

構成要件上、「カード」である必要があり、クレジットカード以外では、典型的にはプリペイドカードやカード型の電子マネーが含まれますが、携帯電話機に組み込まれた電子マネーは含まれません。そのため、甲には支払用カード電磁的記録不正作出罪は成立しません。

なお、類似の事案において、判例は、電子計算機使用詐欺罪が成立するとしています(最決H18.2.14)。


⚫︎刑法74

公文書原本に細工したうえで、コピー機で複写した文書(写真コピー)を、原本の写しであるとして使用した場合、その文書はあくまでコピーであることから「公務員の作成すべき文書」(1551項)といえるかが問題となり得ます。

判例は、「たとえ原本の写であつても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれる」としたうえで、「手書きの写のように、それ自体としては原本作成者の意識内容を直接に表示するものではなく、原本を正写した旨の写作成者の意識内容を保有するに過ぎず、原本と写との間に写作成者の意識が介在混入するおそれがあると認められるような写文書は、それ自体信用性に欠けるところがあつて、権限ある写作成者の認証があると認められない限り、原本である公文書と同様の証明文書としての社会的機能を有せず、公文書偽造罪の客体たる文書とはいいえない」としています(最判S51.4.30)。

この判例の趣旨からすると、写しを作成した甲は私人であって認証の権限があるともいえないため、社会的機能・信用性を欠くことから、公文書偽造罪の客体たる文書とはいえません。


⚫︎憲法8

判例は、「憲法三五条一項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、前に述べた諸点を総合して判断すれば、旧所得税法七〇条一〇号、六三条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、これを憲法三五条の法意に反するものとすることはでき」ないとしています(最大判S47.11.22川崎民商事件)。

351項は現行犯逮捕の場合を除いて、捜索等をするには令状が必要とする規定ですが、上記S47最大判は、法律に定められた行政調査について具体的に検討したうえで、令状がなくとも一定の調査を強制できることを許容しています。そうすると、記述イのように、刑事責任追及目的以外の手続においても、憲法351項による保障が等しく及ぶとまでは述べていないといえます。


⚫︎刑訴法33

公訴提起により、時効は進行を停止しますが(2541項)、判例は、「公訴時効の停止を検察官の公訴提起にかからしめている趣旨は、これによつて、特定の罪となるべき事実に関する検察官の訴追意思が裁判所に明示されるのを重視した点にあると解されるから、起訴状の公訴事実の記載に不備があつて、実体審理を継続するのに十分な程度に訴因が特定していない場合であつても、それが特定の事実について検察官が訴追意思を表明したものと認められるときは、右事実と公訴事実を同一にする範囲において、公訴時効の進行を停止する効力を有する」としています(最決S56.7.14)。

訴因変更は公訴提起とは異なる手続であり、また、公訴事実の同一性が無ければ訴因変更は認められないので、審理対象とはなりません。しかし判例は、検察官が、起訴状の甲罪と併合罪(すなわち公訴事実の同一性が認められない)の関係にある乙罪に、誤って追起訴ではなく訴因変更手続をとった場合、「(訴因変更の)請求に係る特定の事実に対する訴追意思を表明したものとみられるから、その時点で刑訴法254条1項に準じて公訴時効の進行が停止する」としています(最決H18.11.20)。

この判例の趣旨からすれば、公訴事実の同一性が無いとして訴因変更請求が却下されたとしても、公訴時効の停止の余地があるといえます。


▪️疑問編

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