Dark side of the moon

いつか君は誰かの優しさに
包まれるだろう
まぶしい光のなかで
真っ白に輝くだろう
いま頬を濡らす涙は
いつの間にか枯れて
その瞳には誰かが映るだろう
僕は今は何もできないけれど
こんな風にきっと
喜びしかない日に
ささやかな歌をうたいたい
空に舞う花びら ため息と拍手のなかで
君ははにかみながら
新しい道を歩み始める
何一つ迷いもない幸せのはじまりに
僕はそっと歌をうたいたい
誰か君を傷つけたとしても
君は君のままでいい
悲しい夜はいつまでも
続くはずはないから
ただ君を照らす光は
短い夜が明けるのを
ほほえみながらそっと待っている
頬に伝う涙 歓声と静寂のなかで
君は誰かをしっかりみつめ
この瞬間を永遠にすることを
確かに誓うだろう
僕はその時、静かに歌う
君が一番、素敵な日のことを
かげろうのたちのぼる
うだるような坂道を
首筋に流れる汗を拭きながら
君の家に麦茶を飲みにいくのです
通り過ぎる日傘の奥の
少しだけほころぶ唇と白いうなじに
気を取られて
ちょっと胸の中で
君に謝ったりします
蝉時雨が降り注ぐ木立を抜けて
入道雲の麓のぽつんとした
君の家を見つけて
僕はまた汗をふくのです
僕はちょっと憂鬱だから
君の事も不機嫌にしてしまうね
青い空に吸い込まれて
齧ったレモンに顔をしかめた
守れない約束を積み上げた
舌を出して笑う君の背中をなびく長い髪
手を伸ばせば ほらすり抜けていく
転がるようにじゃれていく仔犬のように
いつまでも草の匂いを吸いこんで
つかれたら遠くを眺めていたい
君はずいぶん気まぐれで
僕のことも天邪鬼にしてしまうから
落ちていく太陽に
黒い影が遠くまで延びていく
見果てない夢の大風呂敷を
鼻をつまんで笑う僕を追い越して行く
見上げれば ほら星が隠れていた
綺麗な女が転ぶ姿を見ても
あまり面白みがなくて
少しがっかりした
貧しい人の家が燃えて
焼け出された人が茫然としていた
誰かがシャッターを切る音が
響いた
笑うには面白いことが少なくて
泣くにはそれほど悲しいこともない
日向で猫は大きく欠伸を一つ
改札を抜けれない男が
何度もカードをかざす
苦笑いする様子は
なぜかいらいらさせる
嘘をついた女を持ちあげ
ほころびはじめた嘘を
みなでよってたかって裸にしていく
心の底では最悪の結末を予想して
何かが起こってくれればと
淡く薄暗い気持ちを隠している
けれど誰も口をつぐんでいる
笑うには面白いこともなくて
泣けるほど悲しいこともおこらない
日向では猫が大きなあくびを一つ
うらやましいことなんて何一つ
最初から何もないようで
あちらこちらから石の礫が飛んできて
俺の身体は血塗れ
立っているのがやっとのとこさ
ちっぽけな俺の罪に
腕を振り上げている奴らが見える
さぞかし楽しかろうよ
あちらこちらから聞こえるんだよ
俺の身体は穴だらけ
槍に刺されてこのざまなんだよ
ちっぽけな俺の罪に
腹を抱えて笑っている奴らよ
さぞかし楽しかろうよ
知ってるか?
俺の身体が八つ裂きにされて、
野犬の餌に放り投げられて
奴らの糞になる頃には
もう次の生贄が決まってるんだ
それもおまえらのなかからな
次はおまえだ 次はおまえだ
そこのおまえだよ

