市町村や都道府県という地方自治体(地方公共団体)の国際化には、2つの側面がある。ひとつは交流や協力を通じた国際社会への参加であり、もうひとつは弱肉強食の国際社会にさらされるということだ。
参加の面では群馬県草津町の音楽アカデミー、富山県利賀村の世界演劇祭のように、私たちは非常に多くの成功例を知っている。
しかし、現実の経済は厳しい。世界的な貿易競争や価格競争で厳しい国際社会にさらされる地域社会は、極めて強い独自性と、人々のまとまり、統合性をもっていなければならないと思う。
独自性、統合性のある地域づくりを進める政策の形成にあたって、地方議会はどんな役割を果たすのか。日本の議会は、討論による政策決定がほとんど行われない。しかし実際には、執行部との質疑の中で行われている。
議会は質問、質疑の過程で、自治体の政策形成に参加しているのだ。
地方議会は条例を作らないとの批判もある。確かに議員立法による条例は少ない。しかしそれには2つの理由がある。
ひとつは我が国の制度である。アメリカの大統領は執行機関であり、立法はすべて議会が行う。議院内閣制の日本の場合では、国の場合でも法案はほとんど政府提案で、地方でも条例案は執行部提案が多いのだ。議会がさぼっていることにはならない。
第2の理由としては、住民の自由を制限したり、権利義務にかかわる権力的な条例は、すきま産業ということがある。
アメリカは州ごとに法律が異なるテンポで整備されてきた。たとえば1980年代には、ネバダ州では離婚が自由だったが、ほかのほとんどの州では離婚の自由度が低かった。
しかし日本の国民は法的規制の全国にわたる均一性を尊ぶ。日本では(条例作りは)すきま産業なのであって、議員立法の条例が少ないからといって、議員の政策形成に関する影響力が弱いということにはならない。
問題は質問、討論が政策形成にどれだけ影響を与えているかだと思う。
国際化にさらされる今、地方公共団体は、首長、有能な公務員、積極的な住民参加とともに、提案し批判する議会があって、すばらしい政策形成ができるのだと考える。
安慶名毅