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あたし聞こえないんだよ




学校の先輩が言った。




聞き返して


また先輩は


あたしいま、耳聞こえないんだよ


と笑って言った。




どうゆうことだろう。


じゃあ今なぜ会話ができているんだろう。


この人、もしかして心で聞いてるのか。


一瞬そう思った。




もしそうだとしても不思議じゃなかった。


なんかそうゆう人だから。




でも聞こえないのは左耳だけで


それは精神的な問題らしかった。




そのことを知ってから


先輩が必ずわたしの左側に行くのに気付いた。


そして右の耳で先輩はわたしの話を聞いてくれる。




先輩はピアノを弾く。


学校でも


壊れたオルガンでいつも何か弾いてる。




先輩は


自分で自分に傷を付けて


必死に言葉を重ねて


そして息をしている。




自分を痛めつけて


でもそこから


こんなのもあるよって


取り出して見せてくれる世界は


鮮やかで豊かだと思う。




わたしは彼女の言葉が好きだし


その弱さも


正直好ましく思ってる。




先輩と別れてから


iPodを取り出して先輩の好きな曲を聴く。




耳を塞いで音楽を聴いたらどうなるだろう




先輩はそんなことを言う。