年末から年始にかけて読んだ。「君たちはどう生きるか」という本が紹介されていた。買って読んだ(岩波文庫2015年1月15日第71刷)。初版は新潮社から1937年8月、二中戦争勃発ひと月後に出された。作家の編集の山本雄三氏から声をかけてもらった吉野源三郎氏(岩波新書の創刊者)が書いたものである。軍国主義が進展を憂慮して、『少年少女を悪い影響から守りたい』との意図でつくられた。内容は物語である。1936年の晩秋から翌年の春まで。ところは東京、高等師範付属中学(と思われる学校)の一年生、本田潤一君が、デパートの屋上から冷たい霧雨に煙る銀座通りを見下ろしているシーンが冒頭である。鶴見俊輔氏はこの本をjハーバード大学哲学科の一年生だった17歳の1939年にボストンの日本人歯科医の家で読み、『日本でこういう哲学の本が書かれていることにおどろいた』『そのころの私は西洋哲学者の名著を毎日たてつづけに読むなかで』『(それらの)名著に少しもおしまけず、それらをまねするものとしてでなく、この本がたっていると感じた。日本人の書いた哲学の名著として、私はこの本に出会った』と回想している。


 このなかにナポレオン(一世)のくだりがある。皇帝になるときまでは民衆は支援していたが、その後のイギリスとの通商を禁じたことにより、ヨーロッパ大陸に住む何千万の人々を困らせることになった。さらにロシア遠征では60万以上もあった大軍が帰りには1万にも満たないという、悲惨極まる有様になってしまった。いずれも、しらずしらずに自尊心を満足させるための行動に走ったことがまわりのおおくの人々に大迷惑をかけているといえる。ちなみに、当時のフランスの人口はおよそ2700万人(「近世ヨーロッパの人口動態(1500~1800年)高木正道、静岡大学経済研究、1999年」)であり、60万人は約2%になる。


 自分の身のまわりを考えてみると、パワハラ上司・管理職の影響で部下がうつ病になり、場合によっては1年以上も病欠になった事例がある。たとえば10人の部下なら1人で10%。20人なら5%。もちろん死ぬわけではないが、割合が大きいし、本人や家族にとって大変なことである。


 タイトルの本の中で鶴見さん言う。『上に上がれば上がるほど選択肢が少なくなっていく。そして、そのことがわからなくなってくる。上に上がれば自由が増して、いろいろなことができるという幻想をもちやすいが、そうではないんだ。・・・』(p302)。わたしは、ヒラでいるときとちがって、立場が上がれば影響力と範囲が増すことを自覚せずに、行動することを戒める言葉だと理解する。


 『彼らがその・・・能力を使って、いったい何をなしとげたのか、また彼らのやった・・・こととは、いったい何の役にたっているのかと、大胆に質問して見なければいけない。』(「君たちはどう生きるか。」p184)。百歩、いや千歩ゆずって、せめてまわりの職員の邪魔はしないでくれ!と言いたくなる管理職はいるんです。いや、税金でメシ食わしてもらってる者ならば、あかんでしょう。


 「何をなしとげたのか、何の役にたっているのか」、頭のかたすみにおいて、年末にこの言葉をたなおろしをして、自らの1年をふりかえることは大事だと考える。


                                         拝