版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆ -96ページ目

版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

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料理することに生きがいを感じている。

当然、買い出しから始り食材の選定に1時間以上は要する。


献立を考えて店に行くわけでは無い。

食材との出会いが大切なのである。


良い食材と巡り合った日は至福の一語に尽きる。


                 ネギぬた

版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-ネギぬた

ネギなども青い部分が乾燥していないかをチェックする。

我が家のヌタはネギを使用する事が多い。

ヌタを作る為である。

ネギ単品の時も有れば魚介類と合わせる事もある。


日本酒、焼酎に最高である。


また地方各地で食材や作り方が様々である。

例えば、イカやアオヤギなどの魚介類とニラや白菜をあえたものがある。

基本はダジャレでは無くヌターとしているようだ。


語源もこんなところだろうと思う。




「もみじ食堂」はおじいちゃんと孫娘で営んでいる、ごく普通の食堂で有る。

ただ一つ違うのは・・・


「いらっしゃいませー」明るい声で少女が出迎えた。


「塩ラーメン」私は壁のメニューを見て注文した。

「オレも塩ラーメン」剛次郎、

「あ、オレも」白田、

「追加、塩ラーメン」高田、全員塩ラーメンである。


協調性が有ると言うのか、自己主張が無いと言うのか何とも分からない仲間である。

今日は消防団の訓練の帰りで有る。


店内を見回すと団服の男性客で満員だった。

彼らもまた訓練の帰りなのであろう、朝早くから始まり昼までかかる、当然腹がすく。


店内は空腹の野獣で殺気立っていた。非常にむさ苦しい雰囲気である。

見るところは天井か壁しかない。首が疲れるので、私は壁を見ることにした。


「ヌタラーメン?」・・・?何だあれは?・・・好奇心の強い私は、


「ヌタラーメンて何ですか?」と、調理場まで行き、聞いてみた。


「もみじ食堂の特製ラーメンです」特製に弱い私は、


「注文を替えて、良いですか?」と、もみじ食堂特製ヌタラーメンにした。


注文変更をしたことは素知らぬふりをして席に戻った。込んで居るので中々出来てこない。剛次郎たちはお腹がすき過ぎてぐったりしていたが、やがてやってきた。


「お待たせしましたー、塩ラーメン3ヶですー」


「え?4ヶじゃないの?」と剛次郎。


すかさず「あ、オレ注文変えたんだ、お先にプリーズ」両手をかざし、両肩を上げて外人風に言ってみた。


誰も見ていない、聞いてもいない、皆一斉に箸を割り「いただきまーす」と食べはじめた。


「これ味薄いな」誰かが言った。


「薄いというか、味無いんじゃない」と後の二人。


「すいませーん、このラーメン味が無いんですがー」大きな声で剛次郎が叫んだ。


私は何という奴だ、大声でデリカシーが全くない、もう少し小さい声で言えばいいだろう、非常識な奴と内心思った。


「すいませーん、これ使って下さーい」・・・?塩と胡椒を持ってきた?・・・彼女が調理場に入ると中から「おじいちゃん、また味付け忘れたでしょう」と聞こえてきた。


3人は塩と胡椒で味付けが始まった。私はこの光景がおかしくて、おかしくて、我慢できずに大声で「わっは、は、は」と笑ってしまった。


「うるさいなー、迷惑だろうお店の中で、非常識な奴だな―」・・・剛次郎に言われた・・・剛次郎に・・・


「お前、知っていたんじゃないの、味が無い事を」冷やかな目の3人。

知るわけがない、消防団に入らなければ来ない方角である。それはお前たちも一緒だろうと思っていると、私のラーメンが来た。


「お待たせしました!もみじ食堂特製ヌタラーメンです!」神々しいラーメンの登場。


「特製は言うなよ、皆に悪いだろうー、え、へ、へ」テレながら言う私。


3人は私を無視状態。


「いただきまーす」・・・?「・・・何だこの鼻を突く衝撃は」


「そしてこのヌメヌメしたような麺は」箸でつかめない。器用な私でもつかむことが出来ない。


何これレシピ解説ー!「先ず、酢を鍋に入れ麺を煮込みます。約10分間麺の形が無くなる手前に、味噌を少々、ふのりをたっぷり入れ、再び煮込みます。最後の仕上げに酢を入れて出来あがり」みたいなラーメンではないか。さすがに一口でギブアップ!ジャイアント馬場に16文キックをされたみたいだった。


「あのーこれ、食べられないんですがー」そっと小さな声で少女に言ってみた。


「良いですよ、大丈夫ですよ、気にしなくても」少女も小さな声で答えてくれた。良かった、食べなくて済む、早く帰って家で食べればいいや。始めからそうすれば良かったのだ。自分の頭をコツンとこづき静かに笑う。


「はい、スプーン」少女はそっと私の手に渡しながら「必要でしょう」ってほほ笑んだ。


「・・・違う!・・・違う・・・ちがう・・・」


剛次郎たちは各自オリジナルラーメンを食べ終わり、


「何だお前、食べないのか?」と、私のラーメンをとりあげた。


「あ、」私は内心喜んだ、剛次郎の奴ビックリするだろうぜ。意外な結末が待っていた。


「お、うめーナ」全部食べてしまた。


「ようし、かえるべー」3人は席を立ったが、私はどうしても確認したかった。

ラーメンである。スープの残りを飲んでみた。やはり強烈だった。

「良く食べられたな剛次郎は」私は感心して店をでた。

     ★杉田剛次郎


数ヵ月後、近所の喫茶店「まきば」で剛次郎と出会った。


「よ!」私が近づくと、手で向こうに行けと合図している。何やってんだと思ったところに、


「お待たせー」とポニーテールの可愛い女の子が剛次郎に近づいた。


「お、」私は大声を出した「もみじ食堂のヌタ少女だろう」まぎれもなくあの時の少女だった。食堂ではオシャレもしていなかったが、こうして見ると中々可愛いではないか。剛次郎の奴め。


その後も私は邪魔をして色々聞いた。何とあの後、毎日「特製ヌタラーメン」を食べに行ったそうだ。そのうち中良く話すようになり、今日は初めてのデートだったそうだ。そして運悪く私に会ったと言う。


色々話している内に仕事の時間が来てしまい彼女は帰った。

剛次郎は私に感謝してくれた。

一人では何を話して良いか分からなかったという。

持つべきは親友と手を握ってくれた。

握られるのは嬉しくなかったが

「それほどでもー」と訳の分からない返事をしたのを覚えている。


剛次郎はもみじ食堂で働くことにした。彼は上野駅前の大きなレストランで働いていたので腕は確かであった。親の看病をする為に山の温泉に戻ってきたのだった。しかし、ヌタラーメンの事が気になっていたが、謎は解けた気がした。一途な彼の精一杯のアピールだったのだろう。


剛次郎の勤めていたレストランは近頃廃業した。

しかし「もみじ食堂」は今も健在である。


当然、美子と剛次郎もその子供たちも・・・



絵・文 君島龍輝


     ★宮島美子