版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆ -90ページ目

版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

私は飯野忠春22歳、今年東京の大学を卒業して、大手ホテルグループ、日本ルッカーズホテル株式会社に幹部候補で入社をした、いわゆるエリートである。経済学を学び、乗馬、テニスでリゾート感覚を養い、六本木に夜な夜な通い続けた日々、そして念願のホテル業界デビュー・・・のはずだった。


「それなのに・・・!何故・・・!ここに居るのだ・・・!


「いらっしゃいませー、山の温泉へようこそ!」もう10回は叫んでいる。


「ほらそこの新人、声が小さい。何度言ったら分かるの?」


団子頭のオールドミス(死語)がこちらを睨む。私たちの主任、加賀玉枝だ。


「ここに来るお客様は耳の遠い人も来るんだから、大きな声で出迎えましょう」


耳の近い人もきっといる。その人には迷惑だ。


「飯野君!きみ何か言った!」


心の声が聞こえるのか?お前はスペックか?チョット笑う。


「飯野君、斉藤君残って練習!他の者は解散!休憩」


その後特訓は休憩時間中続いた。加賀主任は隣の部屋で哲子の部屋を見て笑っていた。途中声がうるさいのかドアを閉めに来た。斉藤と私は繰り返しいらっしゃいませーを続けていた。


「あー面白かった。あ、あなた達戻って良いわよ。仕事時間だから」そのまま再びドアを閉めた。


「休憩時間が無くなったど」斉藤は悲しそうに呟いた。

「しょうがないよ、新人なんだからさ、研修中はこんなものさ」気休めにならない言葉を交わす。


「ところで斉藤君、きみ先週、皆で居酒屋に行ったそうだね。楽しかったかい」私の質問に彼は、


「あー、行ったよ、地元消防団の剛次郎さんの誘いで、ホイで佐藤主任に話したら、営業部も行くってことになり送迎用のマイクロバスまで用意してくれたんだが・・・」なんで?声が小さくなる?


「あーあ、オレも行きたかったなー」「楽しかったろうなー」「行きたいなー」拗ねて、甘えて、おねだりしてみた。斉藤は元々営業部であった。しかし接客の研修と言うことで料飲部に来ているわけだ。たぶん訛りを直す為だと思う。


私は幹部候補として全課程をクリア―しなければならない。その為一般の社員と研修を受けている。研修が終わり次第に主任になる予定だ。もうすぐ加賀と肩を並べる。おっと、いけない、そうだった。私は直ぐに本社に配属だった。は、は、は・・・。


「飯野君、キミ何で笑っているの?主任がどうとか、本社がどうとか」斉藤が私を覗きこんだ。


「え、斉藤君、何でわかったの?」こいつもスペックか!


「ところで飯野君、今日仕事あけに佐藤主任と居酒屋ジンギスカンに行くんだケド、キミ行くかい」


わー!ラッキー!連れてってー!等とは口に出して言えない。


「どうしてもって言うなら行っても良いよ」私はニヒルに返事をした。ふと見ると斉藤の姿は消えていた。


「あれー、斉藤くーん、どこー、オレも行くー、連れてってー」


私は今夜、居酒屋ジンギスカンに行くことになる。




版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-ジンギスカン



                 ジンギスカン




居酒屋ジンギスカンはホテルの僚から歩きで5分程度の処にあった。


私は名前があまりに変なので避けていたのだ。


他には「スナック・インド」という中華料理のスナックなど、この街には変な名前の店が多い。


「こんばんはー、5人ですが、席空いてますか?」佐藤主任が店に入った。


「おー、指定席が空いてるよー」指定席?佐藤主任はそれほどここに来るのか・・・


「みんなー、店内に全員集合!」ドリフかお前は!そう思いながら店内に入った。


取り合えずビールを注文した。ジンギスカンは頼まなくても出てくるそうで何人前かを告げるだけでいいそうだ。しかもメニューを見ると、焼き鳥やらおでん、ラーメンまである。確かに居酒屋だ。


「こんばんは、この前は内の若い者がお世話かけました」知り合いか?主任ともなると顔が広いな・・・


「や、どーも」斉藤まで挨拶している。チョット生意気では無いか。席に戻ってきた斉藤に聞いてみた。


「だれ?あの二人」


「あー、この前一緒に行った。剛次郎さんとタツさんだケド」あの二人がそううか。挨拶しようか?いやどうせ東京に戻るのだから関係ないか。それよりビールは苦手だなー。


「お疲れさまー」佐藤主任の乾杯で始まる。斉藤は一気にグラスを飲みほした。私はビールは苦手で一口だけ口に入れた。やはり苦い!しかし今日のメンバーは新人女子が2名来ている。


カクテルなら飲めるのだが男の印象が崩れる、そもそも置いてあるわけがないし・・・???メニューにジンライムスペシャルとある。ジンなら男の印象度アップだろう。スペシャルは気になるけど・・・


「オヤジさん、ジンライムスペシャル、ワン」決まった。


「お客さん、グラスでしか出せないよー」・・・?なんだ?意味がわからない?


冷凍のラム肉が焼けてきた。何故か美味しそうに見える。女子と久しぶりに食事をするせいだろう。しかし、カウンターの剛次郎とタツとかいう田舎者は本当に馬鹿に見える。首にタオルを巻いている。しかも最後の肉を取り合いしている。あーあ、結局床に落としてしまった。おー拾った。オヤジに洗ってくれと頼んでいるじゃないか。ほーら断られた。残ねーん、お馬鹿ちゃん。


「ジンライムお待ち」やっと来たか、でも何がスペシャルなんだ?一口飲むとライムの香りが程良く、ジンも柔らかな口当たりだ。高級ジンなのだろう。


「佐藤主任、オレは酔っぱらって言うわけでは有りませんが、加賀主任・・は」斉藤が酔い始めている。


女子は食べるのに夢中か、二次会はカラオケスナックでオレの歌に酔わせてあげよう。子猫ちゃん。

ところで腹の調子が変だぞー、皆が夢中になっている時にトイレにでも行こう。


私はトイレのドアを開けて驚いた。これが噂のNO水洗か。用を足そうとしてそれからの記憶がない。


―飯野忠春の記述より―




再び居酒屋ジンギスカン


「ところで、オヤジさんジンライムスペシャルて何よ」剛次郎が聞いてみた。


「ホイよ、」大きなジンの瓶にマムシが入っていた。


「あはは・・そんなことだと思ったよ」瓶を受け取り見ていると、山の温泉ホテルのホテルマン斉藤君がやってきた。


「この前は迷惑かっけましたー」酔っている。「なんですかーその手に持っているのは?」これ?


剛次郎はマムシの入った瓶を差しだした。・・・


「うわー」斉藤君はカワエビ事件の数倍驚いた顔をして、店の扉を開けるやいなや飛び出して行ってしまった。主任も後を追いかけ店を出た「オヤジつけといて」と女子を連れて斉藤君を追いかけて行った。


「まいどー」オヤジはなれたものである。


「今度はオレがやっちゃったよ」剛次郎は頭を掻いて笑っている。


「さすが同級生、乾杯!」私は愉快であった。


そして山の温泉は今日も一日が終わるのであった。  龍



絵・文 君島龍輝





???「龍って、何か忘れていないか?」剛次郎


???「そういえば、何か?」私


その時「あんれまー!大変だー」木綿をノコギリで切るような婆の悲鳴。


「どうしたの!」駆け寄る消防団員二人、そして「あ、」


トイレに横たわる男性を発見!首のタオルで口と鼻をふさぎ、トイレに侵入。


ジンギスカンのトイレはアンモニア臭が最高に臭い、タオルはこの為である。


「あ、こいつ山の温泉ホテルの仲間だ」確かにジンライムを飲んだ男性である。


「駄目だなー、お客さん、起きな、は!」オヤジさんが、背中に気合を入れると男性は気を取り戻した。


「ここはどこですか?」寝ぼけている。


「お客さん、不用意にトイレ入っちゃ駄目だよ、ここに注意って書いてあるべ」


「初めての人用にタオルを貸すだべ」


―注意!タオル有ります―


そうです、彼、飯野忠春はジンの強さとアンモニア臭で気絶をしてしまったのです。


初めての人は、気をつけて・・・


ここは・・・居酒屋ジンギスカンなのですから・・・



PS


飯野は無事研修は終わったが、彼には癖が有り、頭の中の言葉を口に出してしまうのだ。


それが原因なのか?山の温泉ホテルに配属となる・・・マル



  ★山の温泉ホテル 新人 飯野忠春