版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆ -74ページ目

版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

「ゆっくりしていってね」ってどのくらいの長さだと思う? ブログネタ:「ゆっくりしていってね」ってどのくらいの長さだと思う? 参加中

私はそれ以上 派!



アメリカの漫画で肉と言えば骨付き肉である。


子供のころ肉屋に行っても骨付き肉は売って無かった。


一度で良いから食べたかった。


またその肉が何なのか、何処の部分なのか解らなかった。




六月のある日・・・


「おばちゃん、このから揚げ美味しいね」


見るからに賢そうな青年であった。


「あら、お兄さん、あんた舌が肥えてるね」


お袋が嬉しそうに返事をしている。私は首を傾げていた。何故ならお袋の作る唐揚やカツ丼は常識の3?いや5倍は味が濃い。従業員は優しさと言っているが疑問である。

(母のカツ丼参照)


「いやー、アメリカのターキーは皮が固くて好みじゃないね」青年が独り言を言っている。口の周りと両手は鶏の油でテカテカに光っている。体裁も感じず食べている所を見ると、美味いのか又は空腹なのか判断は出来ないが、しかし彼の嗜好は満たしているようだった。


「ねーお兄さん、ターキーて何だい?」殆ど為語である。


「あーターキーとは七面鳥の事ですよ、ほら!アメリカの漫画に良く出てくるじゃないですか、肉の両端から、こういう風に骨が出ているやつですよ」両手を使って説明している。


私も「アレがそうかー」などと聞いていた。


「ゆっくりしていってねー」お袋のこの言葉から、この青年は半年間ことぶき屋に住みこむことになる。


版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-ターキー

「いらっしゃいませー」太郎君は元気に応対をしていた。


「太郎君、だいぶ慣れてきたね」パートのおばちゃんに交ざってことぶき屋で働き始めた。


太郎君とは骨付き肉の青年である。別に無銭飲食で働かされているわけではない。自分の意思によるものだった。しかし切欠は褒められたものでは無かった。


太郎君が唐揚げを食べている所に山原屋の羽柴さんとたぬき屋の椎名さんがやってきた。この二人最近麻雀なるモノを覚えたそうだ。そこでメンバーを探しにことぶき屋に来たのだった。


「ことぶき屋、たまには付き合えよ」同級生のたぬき屋が親父を誘っている。しかし親父はギャンブルは好きではない。そこでお袋のの登場だが、それでも一人たらない。


「お客さん、麻雀できる?」・・・お袋、唐揚げ青年に聞いてしまった。


「えっ、ボクですか?」


太郎君はこの後「ええ、少しは・・・」この一言が人生を大きく変えてしまうのだった。そして現在、昼はことぶき屋を手伝い、夕刻からは麻雀の毎日だった。しかも太郎君は非常に強かった。覚えたての山の温泉チームでは太刀打ちできる相手ではなかった。それが帰してもらえない理由なのか、帰らない理由なのかは、解らなかったが・・・


そしてクリスマスの季節がやってきた・・・


山の温泉は忘年会の客で賑やっていた。ことぶき屋ではあいもも変わらず、四人してコタツを囲みあれやこれや、やっている。全く良く飽きないものである。この労力を他の事に費やせは出来ないものだろうか。


私は親父とお袋の話を聞いてしまった。


「ねーお父さん。もうそろそろ良いんじゃないの」母が口を開く。


「そうだな、もう良かっぺ」親父が返事をしている。何が良いのだろう?私は気になっていた。


そして12月25日


「いらっしゃいませー、あ!」太郎君の声が途切れた。


「総一郎・・」「総ちゃん・・」身なりの良い紳士とご婦人が共に声を掛けた。


「おとうさん、おかあさん」太郎君が硬直している。


パートのおばちゃんや私も固まってしまった。


「太郎君が総ちゃん?総一郎!!?えー!」いったい何がおっこったか理解できない、しかし親父が厨房から出てきて、挨拶をしている。しかも先様も丁寧に答えている。???


「元気だったんだね、もう気が済んだのかい」紳士が訪ねた。


「ハイ」太郎?いや総一郎君は短く返事をすると「おばさん、旦那さん、皆さんありがとうございました」と私たちに挨拶をした。事情を知らないお民やお春は「いいえ、それほどでも」などと言っている。

やがて太郎あらため総一郎君はことぶき屋を去っていくのだが、親父たちは深くは理由を語らなかった。


それから一年経ったある日総一郎君が遊びに来た。親父たちはそれはそれは喜んで肩を叩いたり、顔をなでたりと最上級のもてなしをしていた。そして私はあらためて事の真相を聞かされたのであった。



お袋曰く旅行に来て独り言をしながらから揚げを食べている青年に違和感を感じたそうだ。そして、今までの経験から家出と解ったそうだ。しかし未成年ではない様なのでとにかく声を掛けようと思た時、ちょうど羽柴さんと椎名さんがきた。それで「お客さん、麻雀できる?」と聞いてしまったそうである。


その後はご存じのとおりだが、総一郎君の本名と家の連絡先を知るまでに時間が掛ったそうである。その方法は教えてくれなかったが、どうせろくな方法ではない事は察しがつく。


そして総一郎君の家に連絡をすると直ぐに来ると言う、しかしお袋はもう少し時間を掛けた方が良いと納得させたそうだ。半年はかけ過ぎと思うが・・・


総一郎君は家に遺書を残して山の温泉に来たのだった。医者の国家試験に受からないとの理由で家を出てきた。総一郎君の家は代々病院を経営していた。相当のプレッシャーだったのだろう。私や剛次郎には想像もつかない理由だった。


「なー親父、お袋も親父も良く半年もかけて立ち直らせたね」私は親を見なおしていた。


「あったりめーよ、それが江戸っ子でぃ!」何時から江戸っ子になったのか・・・不思議である。




しかし結果的に一人の人間の命を救ったのだった。


人生には必ず分かれ道がある。


私のように音楽の道を断念して絵の道に進んだが、差ほどの違いは無いだろう。


しかし、生と死の分かれ道もあることは確かであり、知らずに通り過ぎているのだと思う。

そして・・・必ずそこには人との繋がりが有ることを忘れてはならない。


これからも良き人に巡り合い、

そして、良き人に出会ったと言われる人間になりたいものである・・・龍



絵・文 君島龍輝






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