『雲をつかむ死』名探偵ポワロ#32(1992年、イギリス)


パリで金貸しを営む老婦人がポワロの乗り合わせた飛行機の中で死に、傍らには南米の原住民が使う吹き矢が落ちていた
しかし、飛行機が苦手なポワロは、眠っていたせいでその殺人を見逃してしまった
自らの名誉を回復するため、ポワロは捜査を始める物語




ABC殺人事件に続いて長編ポワロです

南米原住民の毒矢による殺人という非常に古典的な犯行と、航空機の中という当時もっとも近代的な現場とを結びつけた突飛な事件

ヘイスティングスが登場しないで、ポワロとジャップ警部だけで捜査が進むんですね


ポワロたちの乗った旅客機には、ポワロたちのいたファーストクラスの客室のほかに、レディー・ホーバリのメイドがいたエコノミーの客室が前方にもう一つあることになっているけど、DC-3って、そんなに広いのか?

今では貴重なDC-3の飛行が見られるのは嬉しい
DC-3は美しい飛行機です



物語の鍵として、他の乗客が荷物置き場にカバンを預ける中で、ジャン・デュポンが「考古学中の貴重品が入っているから」と鞄を預けるのを断るシーンは、手荷物にある筒状の物体を見せてミスリードを誘うために加えて、ノーマンが大きな鞄を手元に置いおいてもおかしくないよう見せるためもあるのでしょうね


一見するとカフス氏や郵便配達員と同じく、スチュワード姿は盲点になりそうだけど、それは乗客からだけで、同僚からは盲点にならないのですねぇ
吹き矢筒を押し込むところなんか何の細工も慎重さもなく、普通にグイッと押し込んでいたけど、あんなんでいいのか?


飛行機乗ってる時に座席裏のポケットに後ろの人が乱暴に物入れたりすると、けっこう気付くと思うけど、あんな入れ方でポワロもホーバリ伯爵夫人も気づかないなんて…………
しかも先っぽ堂々と出てるし
(^o^;)
犯人も、すごい綱渡りな犯行なのに平然とのっしのっし歩いてましたね

マダム・ジゼルは毒を撃たれて軽い悲鳴を上げちゃってるし……

戦前のプロペラ機はそんなに防音性能高くなかっただろうから、掻き消されたのか?


犯人の変装は不自然に下手だったしなー


そう言えば、挑戦状を送られた挙句4人も殺されてしまった『ABC殺人事件』の次の話で、すぐ傍で殺人が行われたのに眠りこけてて気が付かない『雲をつかむ死』が来るなんて、ドラマのポワロは面目丸潰れ


最後、食べに行った“魂の食べ物”が気になります



「NON、NON、NON、NON。好きだったのではなく、愛していたのです。彼の瞳がそれを語っていました」