『容疑者Xの献身』(2008年、日本)

福山雅治さん、柴咲コウさん、北村一輝さん、松雪泰子さん、堤真一さん、ダンカンさん、長塚圭史さん、金澤美穂さん、渡辺いっけいさん、品川祐さん、真矢みきさん、リリー・フランキーさん、八木亜希子さん、石坂浩二さん出演の映画

天才数学者である石神と、物理学者・湯川&内海刑事コンビの壮絶な頭脳合戦の物語




堤真一さん演じる天才数学者石神と、松雪泰子さん演じる花岡母のせつない演技合戦
お2人の演技が鑑賞後時間を経ても印象に残っている

ミステリーでは当たり前かもしれないけど、全体の伏線だったり、繋がりがやっぱり気持ち良い

綺麗な言葉の使い方もすごく響く

役者がとても真剣な眼差し、動作、言葉遣いをしている


こういった切ない物語は、「そうせざるをえなかった」という結末に向かうまでの背景に説得力があるか否かが大切だと思うのよ
恋愛ものにしろ、犯罪ものにしろ、苦渋の選択をせざるをえない状況をいかに作り上げるかがキーになる


んで、この映画
石神の選択の背景には説得力があったのかなぁ……
正直なところ、私のよぉな凡人には理解しがたい行動
凡人ならば、殺人の事実を知った段階で自首をすすめて、情状酌量の可能性にかけると思う
けれども、石神は凡人ではなく天才
天才ゆえに、現状に悩み、虚しさに絶望し、些細な人の温かさに感動をおぼえたのかなぁ……

感情を一切殺して完全犯罪をプログラムする天才でありながら、ほんの小さな幸せをプレゼントしてくれた花岡親子に人生を捧げて献身する石神
石神は天才でありながら、不器用な人物
そして、その人物像を演じた堤真一さんはやっぱり天才



トリックを2重にしかけて、どう転んでも好きな人を守ろうと献身したわけだけれど、”献身”によってそれがモロくも崩れ去る
その行為に号泣する石神

要は数学者の脳内シミュレーションがヒントになっているみたいですね
隣の親子を完璧に守るというのが、今回、彼がめざした頂上
彼の頭の中には無数の「警察A」「証拠B」…をかけ合わせる演算が展開され、そしてその一つの可能性としての自分が犯人役になるという終着まで、一気に計算される

天才数学者にとってみれば、花岡母が最後、自分も償うと飛び出してきたのは、彼の頭の中で完成していた美しい数式にシミをつける行為

「どうしてぇ」の連呼は、まぁ「嬉しい」というのもあるでしょうが、それ以上にこの想定外に対する彼の混乱思考停止を示すものかなぁと……



でもさ
花岡母の犯行には情状酌量の余地があるけど、花岡母のアリバイの為だけに何の罪も無いホームレスの命を奪った石神の行為は、許されてはいけないと思うのですよ



ガリレオは自分では決断が下しきれず、母親に選択を委ねた
数学者の悲痛な声を聞いて、彼がドンドンとドアを叩いていたのは、自分が母親に話した行為が、友人のプライド(隣の母子を守り切ったという”完全犯罪”に対する誇り)を木っ端みじんに砕いたことに理解していたから、かな?という印象
それと同時に「それでも、彼女たち親子とのリアルでの幸せをどうか夢見てくれ」という密かな願いなのかな?



松雪泰子さん、いかにも幸薄そうな感じで素晴らしい演技
泣かせ力日本一の演技かも
草薙刑事が『幸薄そうな色っぽい美人』と表現するが、まさにドンピシャでした

福山雅治さん演じるガリレオ湯川教授ですが、映画では完全に脇で、存在感を2人に食われておりました

あと、柴咲コウさんが存在感ありますねぇ
殺伐としたサスペンスものの中にあって、空気を壊さない範囲で、雰囲気を出してました
彼女が歌う主題歌がこの作品にとても合っているなあと思ったら、ネットで調べたらもともとの設定が石神に対しての鎮魂歌なんですかね



エンドロールで遺体が発見されるシーンで、雪が舞っている隅田川を空から写すという終わり方も余韻が残って良い


人との出会いで運命や人生は変わるんだなぁと素直に考えさせられました