明けない夜はない・・・広汎性発達障害 -4ページ目

診断

学童保育の保育士さんに紹介してもらった施設でのテスト。
WISC-Ⅲ というもので、言語性・動作性・言語理解・

注意記憶・処理速度の6項目を検査し、

評価点からIQの指数がわかる。


4年生当時で、彼はほぼ平均に近いIQだった。
ただ、発達障害によくある項目別の評価のバラツキが著しい。


しかし「IQが平均で、一見して問題も無さそう」というのが、
この時の施設職員の意見であった。
日常の様子を話すと、育った環境からくる情緒障害では?
との話をされた。


何より1対1での検査で、職員は女性。
(この状態だと、1時間やそこらでは彼の本質はわからない。
いや、専門家であればわかるらしいけれど・・・。)


その後、この施設の女性は学校にも足を運んでくれ、
教頭先生、学年主任、担任にも話を聞いてくれたのだが、
その時、児童相談所に行くことを勧めてくれた。
しばらくして、担任と本人、父親と私の4人で児相に行った。
後に思ったのは、児相に行ったのは遠回りだった。
結局さしたる検査をする訳でもなく、話を聞いただけで、
「彼はとても愛情を欲している。

 愛情不足からくる情緒障害では?」
という話で終わってしまった。


確かに発達障害を持つ子供は、人一倍の愛情を必要とする。
目に見える愛情と体に感じる愛情がいつも必要だ。
いつも誰かにかまってもらい、見ていてもらえないと、
不安定になることは、よくわかる。
しかし、この時点で“愛情不足からの情緒障害”では、
全くもって釈然としないものが、父親にも私にもあった。


専門家からの適切なアドバイスも無いまま、日々を過ごす。
彼は相変わらずの毎日を送る。
ヒトやモノへの執着や依存が、荒れた感情となって外へでる。
パニック、他害、万引きなどが毎日立て続けに起こって、
私は途方にくれていた。


そんな時、知人から小児病院の受診を勧められた。
児童精神科で発達障害の子供も診ることができる医師がいる。
1時間以上もかかる場所にあるが、すぐに予約をして受診した。
彼は心理検査等を幾つか受け、私は医師に今迄のことを話す。
医師も彼と話をしていろいろと様子をみているようだった。


病院に入ってから、3時間以上経過していただろうか。
最後に彼を診察室から出して、医師は私に言った。
「典型的なAD/HDですね。注意欠陥多動性障害です。」
この時私は、それまでの経緯から本やインターネットで
情報を集めていたので「やっぱり・・・」という気持ちだった。
自閉性は無いのだろうか、という疑問はあったものの、
やっと多少の納得を感じたのだ。


そして、この日から彼は投薬を開始することとなった。

二次的症状 <情緒障害 行為障害>

最低限の社会のルール

これは、繰り返し繰り返し教えていかなければいけない


彼は、カードゲームが好きだ。

といっても、ゲームをするのが好きなのでは無い。

カードが好きなのだ。収集癖がある。

以前は、強いカードを持っていると友達が羨ましがり、

それが嬉しくて収集に必死になっているのかと思っていた。


2年前、祖母宅から4万円を盗んで、

当時流行っていたカードに全てを費やした。

毎日の様に祖母にも買ってもらっていたのに、

レアと呼ばれるカード集めに必死になりすぎたのか・・・。

部屋からでてきた大量のカードに愕然とした。


今も彼より少し低年齢の子供達で流行っているカードがある。

そのカードも何故か大量に持っているけれど、

祖母に買ってもらった物だろうと、私は何も言わずにいた。


彼は今、2000円程のお金を自分で持っている。

レアと呼ばれるカードを売って、手に入れたお金。


それとは全く関係の無いカードを、部屋で大量に見つけた。

流行っている訳でもなく、友達が集めているものでも無い。

一体、どうしたのかと、問うてみた。

けれど、言い訳というか、話が意味不明。


ゆっくりと、よくよく話を聞いてみれば、万引き・・・。

それも、1回では無い。


前にもあったことだから、十分に気にしているつもりでいた。

父親にもとても怒られたし、お金も持たせている。

まさか、二度とそんなことがあるはずが無いと思っていた。


お店に謝りに行く前に、理由を聞いてみた。


特に欲しくて仕方の無いカードでは、無かった。

誰かに見せて自慢できるものでも無い。

気分の高揚にまかせて・・・やってしまう行為。


祖母宅への道筋にある大きなお店。

祖母宅からの帰り道に必ず寄って・・・万引きする。

これが習慣となり、そうなったものは中々やめられない。


あえて、彼を連れて売り場のど真ん中で責任者に頭を下げた。

どんなことをしてでも、彼にも理解してほしい。

してはいけないことは、何があってもしてはいけない。


自分も自分以外の人間も、傷つけてはいけない。

生きていれば、知らずに傷つけてしまうことがある。

けれど、わかっていることならば、自分ができることならば、

してはいけないことをしないということは、

できるはずなのだ。


繰り返し繰り返し・・・。

挫けそうになっても、繰り返し・・・

こだわり・・・依存・・・執着?

最近の彼は、めっきり落ち着いた。
ほんとに、前とは比べものにならない・・・。
(比べても、仕方無いけど)


でも、病気のように治る(完治)ものでは無いから、
何事もおきないわけではない。


食べ物への異常なまでの執着・・・当面の課題だろうか?


兄弟は兄だけ、ご飯は普通の量を食べている。
奪い合って食べる、とか、早い者勝ち、とか、
そんなご飯の用意の仕方はしない。


お鍋の時は困る・・・。皆も一緒に食べているという概念が、
あるのかないのか。
噛まずにドカドカ食べ続け、皆が食べ終わっても食べている。
最後の最後、細かくなってしまって何なのかわからない

食材までも、しつこいまでに取り続ける。
確かに、食べ物を粗末にしないことは、いいこと。
でも、ご飯の時の彼の表情は・・・正直恐いのだ。


ソースは、お皿を舐めてまで口に入れる。
放っておけば、お刺身のお醤油さえ飲みかねない。
山椒の一振りまでも、彼にとっては調味料や薬味では無く

食べ物だ。


家族以外の人が食事を共にする時、それは更にひどくなる。
他人が何を食べているのか・・・目線で追い、
そうしながら次々に食べていく。
彼が好む食べ物のお皿からは、彼の目が離れることは無い。
他の人が、ゆっくりと楽しみながら食事をすることなど、
できはしない。
残ってしまったというもので無くても、彼が全部食べていく。


私の存在が、少しだけ彼のその行動を抑制する。
私の顔色を窺いながら食べている。
その様子に、私はとてもイライラし、悲しくなる。
自分がとてもひどいことをしているような気分になるから。

食べさせてもらってないような、
いつも我慢させられているような、
そんな彼の様子に、私は絶望感を持ち、
消えて無くなりたい衝動にかられる。


肥満を指摘され、定期的に病院に通い検査と指導をうける。
食べ過ぎはいけないと医師に言われ、食事を考える。
何故食べ過ぎてはいけないのかと、何度も何度も、
彼にわかりやすいように話をする。


食べることとゲーム・・・これが彼の生きる全て。


私は考えすぎているのか、無駄なことをしているのか。
彼にとって、とても辛く悲しく、余計なことをしているのか。


自らを、年齢に応じた抑制さえすることが難しい彼。


イシャデモナク、オヤデモナイワタシニ、

デキルコトナドナニヒトツナイ

不安

私は夏休みの間中ずっと一緒にいられるわけでは無かったし、

夜間は父親が帰ってくるまで祖母がみていなくてはいけない。

私は、学童保育に預けることを考えた。

思い当たる保育園には、知り合いの保育士がいたし、

小学校高学年の学童保育もある。

少し事情のある子供達も受入れてくれているところだし・・・そう思った。


連絡をし、彼の状態を話すと「先ずは見学においで」と言ってくれた。

家からもそう遠くは無かったのですぐに行ってみた。

たくさんの子供達がいて、それぞれが楽しそうに遊んでいる。

彼もまんざらでもなさそうにその様子を見ていた。

その中の一つの集団が、当時流行っていたカードゲームをしていた。

彼がとても好きなカードゲーム。執着といっていいほど好きなもの。

彼の目が輝き、その集団の仲間にいれてもらうことにした。


「3時間くらいして迎えにきたら? 大丈夫そうだし。」

保育士さんにそう言われ、心配ではあったけれどお願いしてみた。

3時間後に迎えに行った時は、まだ楽しそうに遊んでおりホッとした。

保育士さんは 「ちょっといざこざもあったけど、いけそうだよ。
しばらく学童にきてみる?」
そう言ってくれた。
そして予定や料金など、細かい説明をしてくれていた。


すると彼が「お茶!」と私に言った。

学童の子供達は、皆水筒を持ってきてる。

見学だけの予定だったので、彼には水筒が無い。

「もう帰るから少し待ってね。お家は近いから帰ればお茶があるよ。」

と私は言った。

「お茶! お茶! お茶!」言い続ける彼。

保育士さんが、

「そこのおやかんにお茶が入ってるから、飲んでいいよ。」と言う。

それでも、そのお茶を飲まずに「お茶!お茶!お茶!」と言い続ける彼。

そんなやりとりを数回繰り返した後、彼は暴れだした。


園にあるお知らせのチラシや園の子供達の作品を、

片っ端から破いていく。

椅子を投げ、ピアノを叩き、カーテンを引きちぎる。

なだめようとする保育士を殴り、私を殴る、蹴る。

一向に静まらない彼に保育士さんがこう言った。

「そんなことをする人は、ここから出て行ってもらいます。

 ここにあるものは皆のものだから、壊されると困ります。

 お友達が怪我をしたら大変だし、君が怪我をしても困るから・・・。

お母さんにも帰ってもらいますから、あなたは一人で帰りなさい。」


彼は園を飛び出した。あたりを見回してもどこにもいない。

私は父親に電話をし、状態を話した。

「そう言われても、仕事中だし・・・。」父親はそういった。

私だって、そんなことはわかっている。それまでだって、

こんなことがあっても 連絡などしたことは無かった。

でも、園のある場所は、父親の会社から徒歩5分のところだ。

「今すぐ来て。どんな状態なのか、自分の目で見て・・・。」

私はそう言った。

彼を探していると、会社の方角から歩いてくる父親が見えた。

「なんとかするから、もういいよ。仕事に戻って・・・。」

ここへやってきただけでも進歩だと思った私はそう言い、
父親は会社に戻って行った。


園に戻って彼を待ちながら、保育士さんから話を聞いた。

「ちょっと思ったんだけど、こういうことも視野に入れた方が

いいんじゃない?」

そういって保育士さんが手渡してくれたのは、

『アスペルガー症候群(障害)』について書かれてある情報誌の

コピーだった。

そして 「検査を受けるだけでもしてみたらどうかな? 

学童にくるのは、その後がいいと思うよ。検査機関にすぐに予約を

取ってあげる。」と言われた。

連絡をとってくれると、検査の日は1週間後に決まった。


しばらくして彼が戻り、何も言わずにクルマに乗せ、家に戻った。

家では祖母が待っていた。彼は何事もなかった様にはしゃいでいた。

保育士さんからもらったコピーを見せながら、祖母に話をした。

祖母は「そう言われてみると、そっくりそのままこの子だね・・・。」

そう言った。

疑問と戸惑い

とてつもなく我侭で、すぐに暴れだす彼。

継母となるかも知れない私への反抗であるならば、それはそれで

わかるけれど、決してそれでは無いなにか・・・。

今までは彼等の祖母が主に面倒を見てくれていたのですが、

祖母もすっかり疲れきっていました。


ぽつりぽつりと・・・今までの彼のことを話してくれる祖母。

入学時から離席がひどく、教室を抜け出したり暴れたりの日々。

家でもしょっちゅう暴れるので、学校の先生が5人がかりで

迎えに来て学校で落ち着かせる・・・など、驚きの話ばかり。


本当に、周囲からすればとても些細なことで暴れだし、

それが収まるにはとても時間を要す。

例えば、祖母の作ったラーメンに生卵をトッピングして、

その生卵が麺の下に潜った・・・ということだけで、

グズグズが始まったと思えば暴れだす・・・理解不能としか

言いようが無かった。

祖母は、なんとか彼の機嫌を損ねないよう、全てを彼の思うままに

してあげていた。機嫌を損ねると鬱陶しい、面倒くさいということと、

体力、気力ともに堪えられないのだった。

学校へ行って忘れ物があっても、帰れば全てを祖母のせいにする。

しつこく祖母を叱責し、責任を取れと言い続ける。

祖母は、彼の好きなものを買ってあげることで全てを解決していた。


私は、それは彼の為にならないと、何度も祖母に話をした。

我侭を我侭のまま通してしまうのは良くない、

彼をダメにしてしまうと思った。

小さい頃からの彼のことをしっかり聞き、学校の先生にも話を

聞きに行った。 保育所での話も聞いた。

どうしてこんな状態を放っておいたのかと、父親に聞いた。

父親は、こんな状態になっていることに気付いていなかった。

イヤ、気付かないようにしていたのかも知れない・・・。

祖母は孫かわいさ故に、怒られては可哀想だと、

いろいろな出来事などをほとんど父親には告げていなかった。