ゲームを作っている。
シナリオには戦争要素が組み込まれている。

その中にヒロインが主人公をかばい 逃がすシーンがある。
「逃げて」「生きて」
とりあえず仮置きでそんな感じの台詞を入れていたが
そろそろ向き合わなければならなくなった。

それがあまりにもサムくてダサいことに。

なぜなら 私は戦争を知らないからだ。
当然だ、経験したことがない。
だからこそ その頭から出る言葉にはどうしても空虚さが残ってしまう。

結局、人の心を動かすのは 経験を通った言葉なのだと思う。
魂から出た言葉と言い換えてもいいかもしれない。
どれだけそれらしく真似しても
経験の伴わない台詞は どこか薄っぺらいし
取り繕ったまがい物でしかない。

正直言って そういう言葉は嫌いだ。
くだらない説教と同じで 聞いていてサムいしダサい。

「感動してください」と押しつけている感じがある。
作っている側の都合や演出意図が透けて見える時ほど
萎える瞬間はない。

もちろん創作なのだから 全部が実体験である必要はない。
そんなことを言い始めれば 戦争作品どころか
剣と魔法のファンタジーすら成立しない。

問題なのは経験していないことではなく
経験していないクセに分かった顔をすることだと思った。

死を知らない人間が 死を語る。
戦争を知らない人間が 命の重みを叫ぶ。
そこにどうしても嘘クサさ感じてしまう。

だから私は言葉を使うのをやめることにした。

代わりに非言語的な伝え方を探そうと思う。
表情や間、仕草、演出に沈黙。
震える手とかうまく言葉が出てこない感じとか、
振り返りそうになって それでも前を向く動きとか。
そういうものに 私の伝えたいことを預けてみたい。

多分、本当に切羽詰まった状況では
人は綺麗な台詞なんて言えない。
頭の中もぐちゃぐちゃで、呼吸も乱れて感情も整理できない。
だからこそ 私は整いすぎた言葉を信用できない。

だったらせめて
「このキャラクターは今、本当に必死なんだろうな」
と思える瞬間を作りたい。

それが結果的に一番嘘の少ない表現になる気がしている。


‎2026‎年‎5‎月‎9‎日、‏‎3:16:29