「じゃあ薬を出してみようか」
「薬で良くなることもあるよ」
私の長い話を遮るように
先生が挟む言葉は薬のことだった
その時の私は
精神的な問題について
薬で治療する選択があることを
知らなかったので
精神に効く薬なんてあるわけない
なぜ薬を飲まなければいけない?
自分の体が変わってしまいそうで怖い
そんな感情を抱いた
薬の提案をされるたびに
薬はいらないですと断った
これも今になって理解したことだけれど
きっと先生は早く帰したかったんだよね
1人の患者に使える時間なんてわずかで
私の長い話をいくら聞いたところで
先生にはメリットはない
患者の状態を瞬時に判断して
的確な薬を処方すれば
それで良いんだと思う
その時の私はとにかく自分の状態を
細かく話せるだけ話して
どんな精神状態なのか
どれだけ辛いのか
分かってもらわないといけないと思って
話せることは全て
話さないといけないと思ったんだよね
同僚に相談しなかったって言ったけど
こんなことで悩んでますって
言ったことくらいはある
でもどこの教室だって
似たような問題を抱えていて
クレーマーだっている
そうだよね
そういうことあるよね
みんな経験する道だよ
って言われておわり
本当の辛さなんて分かってくれない
分かってくれようともしない
どれだけ精神にきているのか
誰も分からなかったでしょう?
よくある悩みだなって
真剣に向き合ってくれなかったでしょう?
そんな思いもあって
自分の精神状態を
より正確に診断してもらえるように
たくさん話さないといけないと
思ったんだよね
診察中に先生が早く帰したい様子だって
もし気づいてしまっていたら
もっと精神崩壊していたかもしれない
先生には申し訳ないけど
気づかなくて良かった