李重甲を巡る人間関係を描いてみました。


コラム

李重甲は、作中で異様なほど多くの矢印を集める人物です。

鉄山、少白、区肇新、舒云、夏荷。

それぞれの愛、執着、所有欲、救済願望、恋心が、すべて重甲へ向かっています。

以下、概要をまとめてみました。


鉄山:将軍



李家の敵である筈の自分を憎むどころか、真っ直ぐな忠心を向け慕ってきた重甲に強く惹かれる。

重甲に対し「你是我的人」と宣言し、駐局代表に任命。手元に置き重用する。

「李玉堂と区肇新を一網打尽にする」と言い放つ等、板挟み状態にある重甲の忠誠心を試すような行動が多い。

重甲の深い理解と赦しに触れるうちに義の関係が愛慕に変質し、45話で独占欲が暴走。

重甲を欲する気持ちが火種となり、蜂起扇動を起こす。

鎮圧を超えた虐殺を行い、革命党に大打撃を与え、更に最大の恋敵の区肇新を失脚させる。

念慈を娶る事により、重甲の義兄になり結ばれ、念願が叶う。

重甲とは燃え上がるような両思いで、血の誓いまで交わす。


少白:革命家


重甲を愛するが故に革命から遠ざける。

危険に晒さない為に敢えて情報を与えず、製造局取締役からも外すよう玉堂に進言。(その様子は玉堂曰く「你疯了」)

重甲を革命の道具・駒として使う事を拒否する。

反面、常に重甲の動向を気にし、その判断に気を揉む。

重甲には二度命を救われる。

信物交換と賢弟呼びが象徴的。

鉄山や区肇新の様な囲い込みはしないが、「革命思想」という強力な吸引力を持つ。

重甲とは一目で通じ合い、惹かれ合う。

互いを讃え尊敬し合う、理想的な両思い。


区肇新:科挙官僚、巡撫


 判断基準は全て重甲。

三年に渡り重甲を寵臣として自ら育て上げ、重甲もまた区肇新を愛慕し、結ばれる事を夢見る。

二人は「巡撫と大紅人の部下」として暗黙の恋人期間を過ごす。

ピストル事件において、重甲側が結婚を提案してきた事により、区肇新の執着は更に決定的なものとなる。

娘の舒云を重光の方に嫁がせる事で、父娘恋敵化というタブーを回避しつつ、重甲の姻戚になる事に成功。(しかしこの時、重甲は立ち聞きによる勘違いで密かに区肇新に失恋する)

李家救済、取締役補佐任命、阿四洗脳等のあらゆる手段で重甲を繋ぎ止め、囲い込み続ける。

失脚の際に鉄山と重甲の関係性に気付き、一度精神を崩す。

重甲とは、一筋縄ではいかない、深く官能的な両思い


舒云:区肇新の娘


恋心を自覚できないまま、混乱のうちに李家に留まり重甲を守る。

阿四に情が湧きつつも、無自覚に彼を巻き込み、重甲の盾にし続ける。

段々と自己欺瞞が限界に近づいてゆき、重甲の側にいられる「阿四の妻」の名分が逆に障害となった際には、錯乱から阿四毒殺未遂を起こす。

重甲には想い自体が伝わっておらず、片想い。

区肇新と少白に重甲を奪われ、重甲には区肇新と少白を奪われるーー愛する男性三人に、三人それぞれを奪われるという、最も過酷な恋を強いられた人物。


夏荷:李家の侍女


重甲が恋し、愛する唯一の「女性」。

重甲にとっての生命線であり、オアシスの様な存在。

重甲と夏荷の身分を超えた恋愛結婚は、封建的な家父長制と身分秩序からの脱却として非常に重要であり、革命思想の体現でもある。

重甲とは勿論両思い。

重甲の強い意志で正妻として迎えられる。



こうして列挙すると、李重甲は矢印が集中し過ぎていて、ともすると嫌味なキャラクターかもしれません。

だからこそミスリード演出をふんだんに盛り込み、一見すると報われない小悪党に誤認させる必要があったのだと感じています。


また、阿四は常に彼らの近くにいて、政治や革命には深く両足を踏み入れますが、この愛と執着のサークルには決して足を踏み入れません。


阿四自身が情に厚く魅力的な事もあり、あらぬ憶測を呼んだり、度々巻き込まれたりはしますが、自ら踏み込むような事は絶対にしないのです。


阿四はいわば神聖なる例外であり、清涼な観測者といえるでしょう。


当事者でもないが部外者でもない、しかし、この世界に多大な影響を与える存在。

そんな存在は作中において阿四だけです。

そこも彼の主人公性の一つといえます。