(1042)スカスカの体育館の窓ガラス
(1042)
ドスン、ドスン、ドスン!
「あのさぁ!夜中にロックとかうるさいって!」
「あ、す、すみません」
ガチャガチャ、僕があわててドアを開けると
「あは、驚いた?」
ロン毛の奥にライオン丸のトマトみたいな顔。
「頼むよぉ、もう。本気でビビッたんだからさ。酒臭いし」
「若竹で飲んでて、西武線の終電なくなっちゃって」
もう汚いハイヒール脱いで
もっと汚いクツシタでポスター踏んづけてるし。
「モノリスさん、オーディションもうすぐだし、
練習しとこうよ、夜中だし。
え~っと、そっちの地味でヘンな人も、ギターとか燃やしたりする?」
そうか、ライオン丸とコンパスは初対面だっけ。
あ、酒と一緒にヘンなクスリとかやってんじゃない?
「違う違う。こいつは法学部のコンパス。高校も同じだけどね」
ライオン丸が勝手にポスターをクルクル丸めて脇にどかして
コンパスと万年床のスキマに割り込むから
ゴットン。
コンパスの背中が食器棚にぶつかって
上からヤマハのFG-140が落っこちてきた。
「あ、文化祭の時のギター。
オレだって…バンドやったし。フォークとか」
「そうだ、高3の時、コンパスのことムリヤリ誘った」
「確かモノリス、最初は…
ベンチャーズをやるつもりで、エレキ買ってたよね」
「それがさ、秋になったら、PPMとか急に流行ってきてマズイよな」
「で、モノリスとコンパスさんで、風に吹かれて…とかハモったり?」
「あ、ライオン丸、ヒトのハイライト、勝手に吸うなって」
ライオン丸も、実はスリーフィンガーとかうるさい。下手だけど。
ほら、タバコの灰、ポスターに落ちてるって」
ライオン丸のツーフィンガーは、へべれけ。
「でもさ、オレの考えたバンドの名前だけは、ウケた。
ビーチ・ボーズ!」
コンパスは、時々センスがヘンで素敵だ。まぐれだけど。
(1043)
スカスカ体育館の窓ガラス
「コンパスさん。バンドやるとさ、多分、
脳の中が少し溶けてカーテンが開くんだよ」
脳の中が少し溶けてカーテンが開くんだよ」
四畳半いっぱいに広がったハイライトの雲のスキマに、
高校の文化祭のステージが浮かんでる。
高校の文化祭のステージが浮かんでる。
「え~っと、あと…若者達、We Shall Overcome。
全部失敗。」
深夜放送のラジオじゃ、ジミヘンのストラがうなってる。
「で、そこを何かヒカリみたいなのが通り抜けてさ」
ライオン丸も、ポスターカラーと修正液の混じった匂いで
少しトリップしてる。
「最後にアンコールやって、自主的にね。
コンパスが生ギターの裏をたたいた、太鼓みたいに」
僕は、描きかけのポスターを修正液で手直ししたり、
「オレ、ギター弾けなくてカッコつかなかったし。
タバコの灰を払ったり。
あ、ジミヘンのアメリカ国家だ。
「オレ、ギター弾けなくてカッコつかなかったし。
でも、気が付いたら、聴いてるみんなも合唱してた」
「そうだ、アカペラの大漁節!」
♪あれはエ~、エイトソ~リャ~、大漁だエ~
「通り抜けるのは、ヒカリとはかぎらないよ、コンパス。
サカナとかトリとか…だったり」
歓声なのかブーイングなのか知ったこっちゃないウズマキ。
僕の、そしてみんなの脳の中を、ナニカがバタバタ通り抜けて
体育館の天井下をグルグル飛び回っていた。多分。
体育館の天井下をグルグル飛び回っていた。多分。
大隈講堂にツイラクしてきた飛行船じゃない。
あんなにデッカクなかった。
もっとフニャフニャ柔らかで、脳の奥とか心臓の裏あたりをくすぐる。
そんな見たこともない生き物みたいな気がする。
「モノリスさ。最後に
ステージでギター振り回せば良かったなぁ」
「ねぇ、コンパス。 フォークギターでも…
体育館の窓ガラス、全部ワレたかなぁ?」
「モノリスさ。最後に
ステージでギター振り回せば良かったなぁ」
「ねぇ、コンパス。 フォークギターでも…
体育館の窓ガラス、全部ワレたかなぁ?」
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(1043)ダンゴムシ・バンドの夜
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*この第1章とパラレルに第5章を連載中
(5038)現実中毒(4)~銀河カクテルの麻酔よ
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