作者:コレット
訳者:工藤庸子
出版社:岩波文庫(横浜市立図書館)

薔薇色のレースに彩られた寝室の中、女はベッドに横たわり、姿見に映る美しい青年の姿をみつめている―。五十歳を迎えようとする元高級娼婦と、シェリ(いとしい人)と呼ばれる親子ほども年の違う若者との息詰まるような恋。(BOOKデータベースより)

レアはカーテンを上げていた手を下ろした。が、その瞬間に彼女は見てしまったのだ。シェリが頭を上げて、めっきり春めいた空と一面に花をつけたマロニエを見やり、まるでどこかから逃げ出してきた人間のように、歩きながら胸いっぱいに空気を吸い込んだことを。(文末より)

彼女の文学は、通俗的であるがゆえにいかがわしく、大衆的であるがゆえに不純であるとみなされてきた。しかも逆説的なことに、コレットの「不純さ」と「いかがわしさ」を受け入れることによって、フランス文学はブルジョア的倫理観というしがらみをようやく克服し、きわめて純粋な文学的選択を果たしたともいえるのである。(解説より)