作者:谷崎潤一郎
出版社:新潮文庫(横浜市立図書館)

生真面目なサラリー・マンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に仕立て上げ妻にする。成熟するにつれ妖艶さをますナオミの回りには、いつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。

この小説の結末は、主人公が完全にナオミに屈服するところで終わる。「ナオミは今年で二十三で私は三十六になります」という結びの文章のこころにくさを見よ。ばかばかしいと思ったら笑え、と作者は言う。がおそらく男性読者の笑いは中途でこわばるだろう。生涯かけて性の葛藤から逃れられない同胞への皮肉なウインク。